『アルドノア・ゼロ』ライエ・アリアーシュ特集

前回「アルドノア・ゼロ8話「鳥を見た日」ザーツバルム出撃決断の理由は(特に映像面で検証)」に続き、アルドノア・ゼロ関連の記事です。
(次の記事「共に姫を第一に思い続けていたスレインとクルーテオは、なぜすれ違い続けてしまったのか?」も宜しければ、どうぞ)


ライエ・アリアーシュ(RAYET AREASH)。
8月24日生まれ、16歳。乙女座のA型。身長158cm(設定資料集より)。
そして、スペルを分解して組み合わせると、RAY(アルドノアの光)+EARTH(地球/大地)+SEA(海)となる少女。
次回予告の声は彼女のもの。


思ってることが割と表情に出て、他者の言動に対するリアクションも毎回はっきりしており。
フードとガラケーという小物の扱いにも内面が色々反映されている、台詞以外の感情表現もとても豊かなキャラクター。


そんな健気でかわいく素敵なライエ・アリアーシュさんに関連して、

[1]2話から(関連という意味では1話から)の描写を追っていってみたいと思います。
[2]次回予告の声をライエが担当していることについて、その意味を考えてみたいと思います。




次1話〜のライエ関連描写とその意味について


まず、2話での登場場面。
「長らく苦労をかけたな、ライエ」と満足げに告げる父に向かい、


「いいえ、お父様」

そして、貴人(トリルラン)を迎えるにあたっては、


"子供のお前はそこで離れていてくれ"という感じで、
父と仲間の大人たちから離れ、佇むことに。

異郷の地に隠れひそみ、周りは大人ばかり。「長らく苦労をかけた」の一端がここでも覗いてます。


以降、3話。


運転席から逃げ出した大人(軍曹)と入れ替わるようにカームに連れられ巡回車両へ。
トンネルへ逃れこみ、避難民の一員として座り込む。


幼い女の子の頭を優しくなでる母親を見ながらのこの表情。

言うまでもなく、彼らの日常を奪った陰謀の実行部隊は彼女の父。
彼女自身もそれに関わっていました。


手にしたガラケーの画面には、(苦労の連続であっただろうけれども)幸福だった過去を映す父と自分の写真。


フードで頭をすっぽり多い、家に帰れない子供のような表情で画面に見入っています。

ガラケーは伊奈帆たちが使っているスマホとの対比でもあり。
また、父たちが陰謀の道具としてミサイル発射などに用いたもの。
幸せだった過去の思い出(写真)を収めたそれは、過去の罪の象徴でもあります。
彼女には、甘く追憶にひたり、逃げ込むことは許されません。


「あいつは父を殺した」

出撃準備をする伊奈帆たちに歩み寄りながら。
画面はその表情でなく、ぐっと握った、固く閉じられたガラケーを強調する。

「わかってる」

いいつつ、フードをはぎとるように頭から外す。
そして、強くやや上向きな眼差しを向けつつ、
「まかせて」

逃避からの訣別の明確な表現。かっこいいです。


「セラム」(アセイラム)を助手席に乗せ、囮のトラックで出撃。
トリルランが運転席にその目標=ライエを確認、動き始めます。
そして、興味深いのは次のシーン。


手にしたガラケーの画面はただ暗い(あの写真はもうない)。
自分でなく、外に向けるように画面を見せている。
そして、決然とそれを閉じる。

ここで、伊奈帆たちとの連絡・連携はインカムで取っており、ガラケーは通信手段ではありません。
かなり強調された意味深なシーンですが、ライエはどういう心境だったのか、私には確信を持てる推測が出来ません。
ガラケーを亡き父と見立て、こちらを捜し求め続け、まず確実に見つけたであろう憎きニロケラスに向けるように
その画面を車外に向け、それを閉じたということなのかな、とぼんやり思います。
つまり、勝手にアテレコしてしまうと、
「お父さま、みていて。これからあいつを倒します」
ということだったりするのかな、と。


煙幕弾のランチャーを明らかに扱い方が分かっていない手つきで触るセラムに目をやり、目線を正面に戻してのこの表情。

カームが「中二病かよ」と思わず口にしたくらいの大仰な宣言をしてこの出撃に加わった、
いかにも育ちのよさそうな旅人だか留学生の姿。なんせ、お付の少女まで伴っていた。
伊奈帆たちのように学校で公式に訓練したのですらなく。
隠れ潜むスパイ生活の中で車やカタフラクトの操縦や軍事知識を苦労を重ねて身につけただろうライエの目に、セラムお嬢様はどう映ったのかな、と。


しかし、そのお嬢様はライエの説明ですぐ扱いを覚え、躊躇わずそれを撃ち。


なぜか、火星の攻撃機について妙に詳しく解説を始めたりして。
説明しつつ、その手は着実に次弾の装填をよどみなく進めていもして。
ライエはこんな表情をしつつ、
"ただのお嬢様ではないみたい(この人もいろいろ事情があるのかも)"とでも思ったのかもしれません。
(なお、これを聞く伊奈帆の表情も面白いところ)。


橋の上を逃げるトラック。追うニロケラス。


重ねての攻撃にフロントガラスが割れ、運転困難に。
逃げ切れない。
ライエ「逃げて、あいつは私を……」

この場面、

姫(の替え玉)の暗殺時の描写

の反復なのでは、

とも思うわけですが。
ここでセラムに「逃げて」と告げるところに、ライエの本来の善良さがのぞき。
「いいえ」
ときっぱりと断り、トラックから毅然と歩み出る変装した姫の姿は、転倒したリムジンから正装で這い出た替え玉の姿と対照的でもあります。


正体を現し圧倒的な力を誇るニロケラスに「下がりなさい、無礼者」と言い放つ姫。
混乱し、威圧もされ、動転して動けないトリルラン。
見下ろすニロケラス、見上げる生身の人間という構図はライエの父と同志たちと重なり、
その差をライエは目の当たりにさせられたということにもなります。

詰め寄るライエ。
「あなた、一体」

少し驚き、しかしすぐに微笑みを返すアセイラム姫。

これは、この後もフードを手放せず、時にその中に顔を隠すライエに対し、
必要とあればためらわずその正体と素顔を堂々と晒してみせたアセイラム姫という対比でもあります。


以降、4話。
皇女生存の経緯を説明された伊奈帆はアセイラム、ライエと今後について相談します。
ユキ姉たちにも明かして然るべき機関に連絡を取ろうと語る伊奈帆の言葉に、


「いけません」とエデルリッゾが叫ぶ。
「地球人の中にヴァースのスパイがまぎれこんでいます。
 おそらく暗殺者の仲間です!
 姫様はそのスパイに命を狙われたのです!」
その時のライエの表情がこれ。

更に姫様は
「私たちの問題に巻き込んでしまい、申し訳ありません。
 どうか、このことはご内密に」
と続けていて。これを聞かされたライエの心中やいかに、と。
アセイラム姫が掲げた理想を利用し野望に巻き込んだ陰謀の
姫は彼女と伊奈帆にその身を明かしたのに、未だ誰にも正体を告げられないライエです。


その後、伊奈帆とライエ、二人のやりとり。
「さっきの話、どうするの?黙ってるつもり?」
俯きながら、伊奈帆は返答する。
「いつ敵が来るかわからない極限状態で、人間が理性的でいられるとは限らない。
もし火星人とわかったら、あの人がどうなるかわからない」
※ちなみにこの伊奈帆の台詞は意図せずして、
「火星人」を名乗る人々がなぜああも妙ちきりんな選民意識を抱くようになったのか"
という話も示唆しているのではないかと思えます。
□参考↓
https://twitter.com/sagara1/status/504110857773535232
「優しいのね。敵の心配をするの?」


「敵は、あの人じゃない。敵はあの人を暗殺しようとした奴らだ」
「ん…」

「この話が本当なら、あの人、「セラム」さんを無事に連合本部に届ける必要がある」
そして、伊奈帆はライエを見つめつつ、
「君は……」
「ライエ」


「名前。ライエ・アリアーシュ」

「そう。ライエさんは」
「保障はしないわ」「危ないと思ったら、全部ばらす」

「火星人は」

台詞と共にフードを深くかぶりながら
「みんな敵よ」


以降、5話。
アルギュレを撃破した伊奈帆のもとに、
カーム・韻子たちが「伊奈帆を迎えにいこう」と叫んだときには