アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【前編】7話概説&本田未央特集

アイドルマスターシンデレラガールズ7話「I wonder where I find the light I shine...」(及び、必然的にここに至るまでの過去話を総括することになる)感想記事、その前編です。


作品全体における7話の位置づけ


前回の記事

○未央、凛、卯月で三者三様のアイドル像から観る『アイドルマスターシンデレラガールズ話』6話感想
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20150220

で構成・章題の形でもはっきり示しつつ書いたように。
6話は主に3話と明確に対となりつつ、過去話全体の流れが集約された「破局(3話で良くも悪くも掛かっていた「魔法」の終わり)」が描かれた回でした。


この7話で描かれたのは「破局」の修復であり、改めての再出発(「魔法」で飛ぶのではなく、しっかり地面を踏みしめて歩み出す第一歩)です。
特に1話を多くの対比を交えつつなぞり、過去話の諸々を踏まえつつ。
渋谷凛本田未央島村卯月、そしてP。それぞれのキャラクターの在り方と関係性とを、そしてシンデレラプロジェクト(以下、CP)14人とPとの改めての螺旋階段を一緒に登って行く第一歩、その再出発が描かれた挿話です。


1話からこの7話までが大きなひとまとまりで第一部。
ひとまずの完結編という趣があります。


担当スタッフを見ても。


1話。
脚本:高橋龍也(シリーズ構成)。
絵コンテ:高雄統子(監督)。
演出:原田孝宏(助監督)&矢嶋武。
作画監督松尾祐輔(キャラクターデザイン)。


7話。
脚本:高橋龍也
絵コンテ:高雄統子
演出:原田孝宏。
作画監督:嶋田和晃。


そうであるべきだし、そうでなくてはいけない布陣かと思えます。


この記事の目次


まずは、今回の感想記事で書いていく内容を項目に分けて目次として紹介してみます。

1:「7話って、どういう話だったの?」という全体的な流れ。
2:本田未央島村卯月にも決して劣らない尊さについて。
3:島村卯月もまた「人間」らしい「人間」だろう。
4:渋谷凛も未央と一緒に謝らなければならなかった理由/凛の1話と7話。
5:7話はNG以外の11人にとっても再出発(特に前川みく双葉杏多田李衣菜に注目)。
6:7話の挿話内での演出及び過去話との対比演出のまとめ。
7:その他もろもろ。


※2、3、4では前回記事に引き続き。

「この作品においては、いずれのキャラクターの長所も短所と表裏一体、その逆も真。
その上でアイドルたちもPもそれぞれ「一人の人間」として描かれることが志向されている」

という話を重ねて解説していくことになります。
何度でも強調したい、作品の核心かと思います。


また、はてなダイアリーの一記事内の限界容量の問題で、記事を分割します。
このページ内では「2:本田未央島村卯月にも決して劣らない尊さについて」の終わりまでを見ていくことになります。


1:「7話って、どういう話だったの?」という全体的な流れ。


7話はあまりにも見事に多くの要素が詰め込まれ、収束し、鮮やかに演出されているので最初にどう切り込むか悩まされます。
なので、まずは放送直後の個人的なまとめtweet連投に幾つか他の方の発言も引いて補足しつつ。
この後、最初の目次に示した各項目に触れていく中で随時補い、それを通じて7話を面白く観ていくイメージを大まかに示せたらと願います。


※このタイミングで見つけて、RT↑

とりあえずは、大体こんなところかと。
放送後間もなく〜数時間の間に続けて出していった感想なので粗も見落としも勿論ありますが、概ね間違っていないのではとも思えます。


この後、先掲の目次通りに順次より詳しく見て行く中で。
ここで提示した7話を観ていく上でのいわば骨格に、より豊かに肉付けをしていければと思います。


2:本田未央島村卯月にも決して劣らない尊さについて。


前回記事=6話感想の大きな目的の一つとして。
本田未央のあの空回りが、いかに彼女の長所と分かちがたく結びついていた、彼女ならではのものであったか。
本田未央というキャラクターを一人の「人間」のように捉えた場合、いかに納得の行く、仕方のない、むしろ応援せずにはいられなくなるものであったかを示すことがありました。
7話放送前に書き上げ公開した記事ですが、7話放送後に見ても、自画自賛ですが(細部には色々問題はあるかもしれませんが)大筋において適切な解説・解釈になっているかと思えます。


まずは、その補足をしていきます。
その上で、7話での本田未央の活躍と尊さが渋谷凛は勿論、島村卯月にも決して劣るものではないということを強く主張し、示していきたいと考えています。







「ずっと待ち続けていた」島村さんを「プロデューサーさんが、見つけてくれた」ように。
島村さんの笑顔に撃ち抜かれ、心の枷が緩み(手綱を手放して)駆け出して寄って来た(愛犬ハナコに象徴される)凛の心を拾い上げ、その上で決断を凛自身に委ねたように。
重ねての失敗を経て、Pはここでようやく未央の心……盛んに咲いていた花(3話の大成功)を儚く散らし地に落ちてしまっていた彼女を拾い上げようとしている。
1話で島村卯月渋谷凛に対して丁寧に行ったPの「拾い上げ」がこの7話に来てようやく、本田未央に対しても行われたということになる。


そして、7話を何番目かくらいに代表する名場面と思えるのが次のやりとり。

ここでも未央は「皆に、迷惑かけて」と言い。
そこにあえてPは「あなたを」ではなく「あなたたちを」と返す。


本田未央は、たくさんの人を笑顔にしたいアイドルで。
仲間たちの中でも、リーダーとして皆を引っ張り自分たちも笑顔にしていきたいアイドルで。
だからこそ、本田未央はこんな時でも「皆に、迷惑」が心に痛い。


それに対しPは例えば「そんなに気負わず、まずは謝って、むしろ助けてもらうくらいでもいいのではないでしょうか」などとは決して言わない。あえて「あなたたちを」と言った。未央にリーダーとして戻ってきて欲しいと呼び掛けた。
"あなたが準備の時から仲間たちを引っ張り続け、舞台に立ったデビューライブは成功だった。これからも、あなたはリーダーとしてやっていける。やっていくべきなのだ"とPは告げていて。
"7話での最初の訪問の過ちを繰り返してしまっている"などということでは断じてなく。これこそは、かくあるべき正しい呼びかけだろう。


そして、それに対する未央のこの表情の移り変わりが示すものがたまらなく尊い
一度顔を上げ、しかし、たまらず伏せてしまい……そして決意をもって、再び顔を上げてみせる。
1話の島村卯月が、地面に落ちた桜の一花=自分自身にしてみせたように。
1話の渋谷凛が、夜、卯月にも選んだ白いアネモネ(「花言葉は期待、希望とか……そんな感じ」)を自分へのものとしても見つめつつ、「夢中になれる何か」へ向けて踏み込むと自ら決めたように。
7話の本田未央はここで、自分自身を「拾い上げて」いる。
シンデレラたちはただ魔法使いに魔法を掛けられ「拾われる」だけでなく。
彼女たちが輝くには自分と向き合い、自分で自分自身を「拾い上げ」なくてはいけない。


人の心が、周囲の思いが、自分のやってしまったことが人一倍良く分かる彼女だからこそ。周りを楽しませ、笑顔にしたくてたまらない彼女だからこそ。
今回の失態はたまらなく苦しく、辛い。
それでも、本田未央はこうして顔を上げて見せる。
これがキャラクターの、人間の尊さでなくてなんだろう?


そして本田未央は、自分がどんなに言えた義理ではないかよく分かった上で。
罪悪感にも羞恥心にも恐怖にも打ち勝って、凛に向かってしっかりと思いをぶつけてみせる。
この時の表情の描写の複雑さ、丁寧さ、繊細さは(6話の「いいえ。この結果は当然のものです」を受けての絶望の表情との対比としても)圧巻。

そして、それが真正面から「嫌なんだよ」と断られて。
どんなにか、たまらない思いだったか、察するに余りある。
凛に歩み寄り、決意と誠意をもって手を差し伸べるPに任せきり、その背中の影に隠れてじっと見ていることしか出来ない……それが普通というか、むしろそうでないとおかしい状況かと思う。でも。そこで二人に駆け寄り。本当はもう一度信じたくて、その手を取りたくてたまらないけど恐れや罪悪感、羞恥、意地などで最後の距離を埋められない凛と、踏み込むと決めてさえ差し出した手をそれ以上伸ばしはせず相手に任せるPの手とを繋いでみせた、それが出来るのが本田未央という十五歳の少女であり、掛け替えのない輝きを持つアイドルなのだと思う。


過去7話を通じ、こここそが最高の名場面だと思う。
これ以上に困難で尊いことを成し遂げたキャラクターは、この作品の中でまだ、他に誰もいない。


また、再掲になるけど凛と連れ立ってのこの謝罪。

ここでも繊細に描かれた本田未央の表情から彼女の心境を考えてみると、何度観てもなんだかたまらない気持ちになる。


6話7話を繰り返し観てその内容について考えれば考える程、本田未央というキャラクターをどんどん好きにならずにはいられなかった。
あえて言うならば、この記事を読む人にも、是非ともより好きになって貰いたいキャラクターだと思う。


(記事の容量の関係で)続きはこちらに。

アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【中編】島村卯月渋谷凛特集
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20150305
アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【後編】CP14人+Pの再出発としての7話
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20150306