高橋葉介『夢幻紳士 怪奇篇』①②〜第一巻のみどころピックアップ

高橋葉介の作品が、どれを読んでも面白くてたまらない。


活動期間が長いベテランの方なので、書店でもネット書店でも在庫無しの本が多いが、一部は有料電子コミックとして読むこと等もできる。
実際に電子コミック版に手を出してみると、この人の作品に多い黒ベタが大変印象的なコマなどは、また違った趣があって愉しい。


例えば、

『夢幻紳士 怪奇編 1巻 ヨウスケの奇妙な世界(2)』
http://comics.yahoo.co.jp/10days/takahasi02/mugennsi02/shoshi/shoshi_0001.html
を以下のページ&コマに注目したりしながら読んでみて貰えると嬉しい。
一度読めば、その魅力に参ってしまう人も多いはず。
お値段は294円。最初の9ページまでは無料の立ち読みも可能……って、別に私はYahoo!コミックの回し者でもなんでもないんだけれども。


あるいは、無料の立ち読みで読める範囲ならば、

『夢幻紳士 怪奇編 2巻 ヨウスケの奇妙な世界(3) 』
http://comics.yahoo.co.jp/10days/takahasi02/mugennsi02/shoshi/shoshi_0002.html
「第十一夜・昇降機」開幕の見開き(p8-9)がスゴイ。
これを見てしまうと、続きを読まずにはいられない。
事実、続きもいい。p11の夢幻の顔の処理、p12-13の見開きのインパクト!!それに話としても、ラストの画も、見事すぎるくらいに見事……。ただ、短篇集全体としてよりお勧めなのは、断然1巻のほう。


<1巻/見所ピックアップ>

第二夜「老夫婦」

p40-41の流れ。夜も更けた頃、外に向けて煌々と照るバーの明かりから、その隅に電燈一つに照らされて暗くわだかまる主人公の姿へ。

第三夜「吸血鬼」

p84-85のやりとりの妙。

第五夜「幽霊夫人」

p112、p114の表情変化。
そして、p124中段左、p125最下段の構図。左のベッドを正面斜め上方から見下ろす画の面白みも勿論のこと、主(あるじ)不在の右のベッドの端も、当然描かれるべきものとして在る。

第六夜「首屋敷」

表紙画(p135) 。読者が焦点を各所各所に合わせていってみると、髪のうねるように立体感を持って迫ってくる。
p145、p148のおかしみは、この作者の大きな持ち味の一つであるらしい。ほかの作品-----『夢幻紳士 冒険活劇篇』や『学校怪談』などではこの要素がもっと目立ち、数も多い。

第八夜「木精」

p175の二コマ目が、p174からp175一コマ目の流れからの残像を、読者に自然かつ鮮烈に思い描かせて見事。この一冊の中で最高の一コマ。
なお、こうした甘い叙情の作品は、一つのシリーズにごく僅かしか含ませないようだけれど、あるいはそれだからこそ、どれも瞠目の出来栄え。
例えば、今月発売され、書店でよく平積みされている『学校怪談②』収録の「ダンス」。傑作揃い同シリーズ収録作の中でも白眉といえる名品だと思う。

第九夜「サトリ」

表紙画(p195)、そしてp207最後のコマ。これも、そこまでの流れを受け切って切り返す卓抜な画。
ただ、この話で残念なのは、(以下、ネタバレのため白文字で記述)重吉の行動がp215の最下段の眼、p211最後のコマの夢幻の髪の色から明らかな通り(p204でサトリが能力を発揮している時と同じ描写)、催眠によるものであること。この結末だからこそ、すこし寂しい。

第十夜「夢夜」

表紙画。
p227一コマ⇒二コマの流れ。