『小説新潮』7月号北村薫先生その他による米澤穂信『折れた竜骨』関連の山本周五郎賞選評を読む。


●『小説新潮』7月号での山本周五郎賞の『折れた竜骨』関連の選評と併せ読むと更に面白いよ。

小説新潮 2011年 07月号 [雑誌]

小説新潮 2011年 07月号 [雑誌]


RT honobu_yonezawa: 現在発売中の「オール讀物」7月号に日本推理作家協会賞の選評が、「小説新潮」7月号に山本周五郎賞の選評が載っています。読み比べると面白いです。
posted at 15:05:45
小説新潮』の山本周五郎賞選評を読む。あえて米澤穂信『折れた竜骨』についてだけ少し語る。といっても実は……(続く)
posted at 19:39:03
「『折れた竜骨』について、思想が欲しいという意見があったが、この物語に関しては《本格ミステリであること》が思想なのだ。そこにこの衣を着せ、各選考委員に好感を抱かせた手腕は並のものではない」との北村薫先生の言に尽きてしまう。いつもながらその見事さに惚れ込まずにはいられない。
posted at 19:39:12
およそ「本格ミステリが理解できている」などと言える訳もない自分の目からみても、他選考委員の方のその方面の無理解はやや寂しい。「山本周五郎賞の選考」だからそれでいいといえばそうなのだけれども。あえて海外ミステリの翻訳調で書かれている意義なども、まず以て理解の外なのだろうな……。
posted at 19:39:29
ただし。「推理作家協会賞」の選考で上田早夕里『華竜の宮』が候補に挙がったのがむしろ異例の勲章なのであって。受賞しなかったことはむしろ作品の評価として正当であり星雲賞日本SF大賞での評価こそ期待されるというのが当然であるように。
posted at 19:39:52
山本周五郎賞」選考における『折れた竜骨』も同じこと。「「SF」と「ミステリ」」「「すぐれた物語性を有する小説・文芸書」と「本格ミステリ」」というギャップの違いこそあれ。候補になった時点で図抜けた勲章なのであり、受賞しなかったことはむしろ正当だろう。
posted at 19:40:18
北村薫先生の評は素晴らしい餞だけれど、それも「たまたま本格ミステリを読める選考委員がいた」というごく例外的な事情によるもの。こと山本周五郎賞の選考委員としては北村薫先生に求められているのは本格ミステリの擁護ではなく。見事にその線に沿って評を下されている。見識というものだろう。
posted at 19:40:56
さて、つい帰宅前に読んで書いてしまったけど。そろそろ帰ろう。
posted at 19:41:34
帰宅。なんだかやや必要性を感じてしまったので、役者不足を痛感しつつも補足する。米澤穂信『折れた竜骨』について「この物語に関しては《本格ミステリであること》が思想」とはどういうことか。
posted at 20:10:10
全ては「謎が魅力的であること」「それが論理的に解決されること」そしてこの場合は「その解決が絶対のものであること」も「本格ミステリ」としての大いなる魅力だろう。
posted at 20:10:23
『折れた竜骨』がもしファンタジーなのであれば。「その華であるところの魅力的な人物たちの戦いは戦いそのものが魅力となるべき」なのであって。あそこまで露骨に全てが論理的な謎解きに奉仕する在り方は明確な「これは本格ミステリなのだ」という主張に他ならないと考える。
posted at 20:10:49
篠田節子の選評に言うところの「壮大な物語」は「本格ミステリ」においては全て解決に繋がる論理、そして「その解決が絶対のものであること」に奉仕する。それは是非とも言わずにはいられないところと思う。別方面から言うならば、『折れた竜骨』は歴史小説ではない。
posted at 20:11:23
「探偵にとって「謎を解き明かすこと」に負けず劣らず、時にはそれ以上に遥かに「どう解き明かすか」が重要なのだ」という命題は本格ミステリにとって極めて馴染み深いもの。なぜ、探偵と助手はあの解決を選んだか。なぜ、あれが唯一の解決でなければならなかったのか。
posted at 20:12:01
その問題のために、多くの設定は奉仕している。その潔さこそが北村薫先生の常々おっしゃる「本格ミステリ」の魂ではないだろうか。「何ともちまちました展開と解決に収縮」(篠田)。その読み、大いに結構。別に「本格ミステリ」に愛着を持たない人がそう読むのは一向に構わない。
posted at 20:12:14
消去法!消去法!まさにその論理を敷衍すれば米澤穂信『折れた竜骨』が一般小説でもファンタジーでも歴史小説でもないことは自明だった筈なのに。あれはなによりもまず「本格ミステリ」なのであって、その要素を抜きにして語っても仕方がないだろう。
posted at 20:18:30
とはいえ繰り返すように「山本周五郎賞の」選評でそれは大きな問題とはいえないのだろうけれど。なので、北村薫先生以外の選考委員をあまりその点で批判し過ぎてしまうのまた、明確に筋違いなのだろう。自戒したい。
posted at 20:19:17