アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【中編】島村卯月&渋谷凛特集

アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【前編】7話概説&本田未央特集
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20150304/


前編で出した目次、

1:「7話って、どういう話だったの?」という全体的な流れ。
2:本田未央島村卯月にも決して劣らない尊さについて。
3:島村卯月もまた「人間」らしい「人間」だろう。
4:渋谷凛も未央と一緒に謝らなければならなかった理由/凛の1話と7話。
5:7話はNG以外の11人にとっても再出発(特に前川みく双葉杏多田李衣菜に注目)。
6:7話の挿話内での演出及び過去話との対比演出のまとめ。
7:その他もろもろ。

の3と4、それぞれ島村卯月渋谷凛を中心にした話を書いていきます。



3:島村卯月もまた「人間」らしい「人間」だろう。


前編の「1:「7話って、どういう話だったの?」という全体的な流れ。」の中で既に大まかには触れている話ですが、改めて諸々補足を。


状況が(脚本・演出が)現出させた「大天使」島村卯月







「笑顔の偶像」の尊さ、遠さ、怖さ、危うさ




島村卯月の今の/辞めていった仲間たちへの思い





上記リンク先記事でも触れられている話だけど。



島村卯月の自室、大切なものを写した写真ばかりを貼ったそこに、かつての仲間たちの姿が今も在る。
アイドルになることを諦め去って行ってしまった今も、卯月にとって仲間というのはそれだけ大切な存在。
逆にいえば彼女たちが夢破れて辞めていったことは当時は勿論、今も卯月にとって重いことで在り続けているのだろうと思う。
なお、島村家の裕福さについては(前編でも触れた)5話のこのカットあたりからも十分に察することは出来もした。

また、島村家がただ娘にベタ甘激甘なだけでないだろうことが、

1話の描写からも伺える。
そして卯月もそれに反発せず、素直に「私には贅沢」と言える性格でもあり。
そのように育って来ているし、育てられてきているということでもあるのかと思う。
あと、一応この話も示しておこうかと思う。



「SpecialProgram」での卯月視点の回想から伺えること。


7話の翌週は「SpecialProgram」と題した特番。
P役の貫禄ありすぎる17歳(!)武内駿輔出演でも大いに話題になったわけだけど。

※下記リンク先まとめ「武内駿輔17歳」の項参照。
http://togetter.com/li/768711?page=41

事実上の総集編にもあたる卯月視点での過去話ダイジェスト「Uzuki's activity report」も島村卯月というキャラクターの在り方を随所で見事に示す構成・演出となっていたかと思う。




これはそのまま、辞めていった同期の仲間たちへの思いにも繋がる話かと思う。その気持ちもやはり、分かるということだから。
で、いずれも前編でも触れた再掲だけど。

そのすぐ後、帰り道での島村さんの不調。

これは"ただ単に風邪の症状が出ていてこの時から調子を崩していた"と解釈することも可能ではあるけれど。
ガラスの欠片を踏み壊す演出の意味から考えてもやはり、アイドルを(目指すことを)やめたくなってしまう気持ち、それで実際にやめていった仲間たちの姿と残された自分の思い等が(不安ばかり増幅させ、凛の問いかけにも答えられずに逃げていってしまったPの様子ともあわせ)思い出されてのことで。
風邪を引いてしまったのも、それが大きく影響していたのだろうかと思う。


卯月本人の捉え方は、やはり彼女視点の回想で示されていて。

ただ自覚がないというだけでなく。
「笑顔には自信があります」、一方で笑顔以外には自信がなく、それで「お姉さんなのに」足を引っ張ることを気にし続けていた卯月は「こんな大事な時に風邪を引いてしまっていた」ことをきっと、本気で強く申し訳なかったと思っているのだろう。
だから、

このメッセージも勿論未央を思いやってのものだけど、偽りのない卯月の本音(「もっとがんばって、未央ちゃんや凛ちゃんに迷惑(をかけないようにしたい)」)でもあるのだろうと思う。


例えばPを驚愕させ、そして背中を押した「大天使」な姿もある意味、島村卯月なりの不安と恐れの裏表という側面もあるのだと思う。
あえて踏み込んで憶測するなら。

私なんかが私よりずっと凄いし凄いところを見せ続けてきた「未央ちゃんや凛ちゃん」の心配ばかりしながら、風邪を引いて倒れてしまっていていいのだろうか?
私の方こそ、きっと戻ってくる二人の足を引っ張らないように、もっと頑張らないと。そうでないと「置いて行かれ」てしまう。
笑顔と努力しか取り得のない私は、余計なことを考えすぎてそれを失ってはどうにもならない。
だから信じて、私は私のやるべきことをやらないといけない。

つまり「大天使」の内面もまた、「人間」らしい、島村卯月らしい悩みに満ちていたのではないかと。
個人的には、強くそう思えます。
そして、島村卯月という少女はこう考えて努力し続け、あの笑顔を見せ続けることが出来るし出来たからこそ、1話でPが現れるのを「ずっと待って」いることが出来たのだろうとも思えます。


で、改めてこの場面なんですが。


彼女にすればなによりまず本当に嬉しくてたまらず、その裏には"島村卯月なりに、島村卯月だからこそ怖くて仕方なかった"ということもあったのではと思う。
島村卯月はきっと、渋谷凛本田未央よりもより強く切実に「「置いて行かれ」たくない」と願う少女なのではと思う。


4:渋谷凛も未央と一緒に謝らなければならなかった理由/凛の1話と7話。


これも同様に前編の「1:「7話って、どういう話だったの?」という全体的な流れ。」の中で既に大まかには触れている話ですが、やはり改めて諸々補足を。


凛は「もうこのままは嫌」でたまらなかった


まず、この場面。
改めて考えるならば、直前の周囲の台詞。

多田李衣菜「昨日デビューしたばっかりなのに」
前川みく「……そんなの、プロ失格にゃ」「みくたちより先にデビューしたのに…」

もポイントなのだろうと思う。
後に激白する、

に繋がる話だろうな、と。


よくわからないまま「光の海」に飛び込んで、よく分からないまま心の中からそれが消えてしまって。
よくわからないまま未央は苦しんでいて、そんな彼女(と自分たちは)よくわからないまま「昨日デビューしたばっかりなのに」「プロ失格」と言われてしまう。
渋谷凛はとにかくもう、たまらなく「もうこのままは嫌」だったのだろうと思う。
だからこそ、その翌日に卯月の姿までも見えなくなってしまった時、とても耐え切れなくなりもしたからPに直談判しに行って。
だからこそ、そこで彼女に向き合えないPの態度に失望して、凛もボイコットに入ってしまう。


「卯月を待ちながら」


そして、その翌日の凛の姿。



凛の心情表現と過去話との対比


7話において渋谷凛の心情は過去話との対比もふんだんに交え、実に細やかかつ濃厚に描かれていっています。
以下、いくつか例示を。









○1段目。
1話で時計は23時35分。7話は18時05分。
○1段目-4段目。
差し込むのは月の光(1話)と、沈みゆく太陽の光(7話)。
○3段目。
上着(ここでは心の鎧のメタファーでもある)はハンガーに吊るされ、シャツ一枚で寝転び思いに耽る1話と、上着も脱がないまま無気力に横たわる7話。
○4段目。
1話で凛の視線は卯月にも薦めた一輪の白いアネモネを見つめる。花言葉は「期待、希望」。
7話、(おそらく未開封の?)自分たちNGと大切な仲間であるラブライカのCDが視野の中心に横たわり。
その脇にある花は他の方によれば、

「アニメ シンデレラガールズ7話に登場した花あれこれ」(たぶんab.のブロマガという名の何か)
http://ch.nicovideo.jp/shrimp_abP/blomaga/ar735362
「花の形、葉の形からエゾギクと思いました。
 エゾギクの花言葉は「変化」「追憶」「同感」なのですが、青色のエゾギクは「信頼」「あなたを信じているけど心配」だそうです」

とのことです。

○1段目。
1話、自分の心の「期待、希望」を見つめるように、凛の目は瞬(またた)きもしない。
7話、涙を堪えるように凛の目は潤み、震えている。
○2段目。
心象風景の明確で残酷な対比。
1話、桜の花舞う夢のように美しい風景の中、花を舞い踊らせる風に吹かれながら明るい日差しの中、体いっぱいに期待と好意をみなぎらせて見つめ、渋谷凛を誘う島村卯月と、その斜め後ろ、影の中で静かにじっと佇み彼女が踏み出すのを待ち望んでいるプロデューサーの姿を彼女は脳裏に思い浮かべる。
7話、彼女の目に映るのは(恐らく未開封の)横たわる二枚のCD、彼女と仲間の涙のように降りしきる雨、閉ざされた窓。
7話題名「I wonder where I find the light I shine...」は未央、凛、卯月、そしてP、それにCPの面々。それぞれに異なる意味を持つものかと思えるところ。
第一義にはSpecialProgramの卯月視点の回想で語られたように、

「私達の心にあった光の海は、どこか遠くへ消えてしまったようでした」

が卯月、未央、凛の三人についてはそれぞれ彼女たちにとっての7話題名の意味を示すものかと思えるわけですが。
こと渋谷凛については、この1話と7話の違いも同じくらいの重みをもって「I wonder where I find the light I shine...」という悲嘆と重なるものなのかもしれないと思えます。

2段目左の光景はまさに期待と信頼、「信じてもいいと思った」原風景、「the light I shine」を探し求める縁(よすが)だったかと思えるので。
○3段目。
これ、本当は動きまで示す必要がありましたね。
1話では凛のむきだしの右手は胸元へ伸び、決意を込めるかのようにぐっとシャツを掴みます。
7話では袖に包まれたままの右手を上着を着たままの胸元にそっと添えていたのが、力なく滑り落ちます。
特に解説は必要のない対比かと。

※2015/3/18追記。


※4/3追記
「(ここのBGMはなんという曲名なんだろう?)

判明しました。


凛の項の締めとして、再々掲になる未央と並んでの卯月への、CPの皆への謝罪について解説を試みてみます。。

ここで、凛には、未央とはまた別の思いがあるわけです。
自分をアイドルの道に誘い、常に笑顔を絶やさず、全面的に未央も自分もPも信じ続けてくれていた卯月をこそ信じるべきだったのに、信じきれなかったり、プロデューサーだけに寄りかかったりしてしまった申し訳なさ、合わせる顔のなさ。
未央の「アイドル、一緒に続けさせて欲しい!」に応じた以上、「プロ失格」の態度を凛もまた、CPの皆にも詫びなければいけません。
6話感想で凛のお辞儀については注目すべきということを書きましたが、ここでは勿論、それぞれ異なる「ごめんなさい!」ではありつつ。
未央と凛のお辞儀はタイミングも角度も見事に、そうあるべくしてあるべきように揃っています。
また、なぜ謝られるのかそもそもわからないとばかりに(実際彼女の内心としてはきっと、そう)涙を湛えて駆け寄り抱きついてきた島村卯月に対し、未央が感極まり目をつむり涙ぐむ一方、同じく心打たれながらもまず未央に目をやり、続いて(ああ……卯月ってホント、こういう子なんだ……)という雰囲気で改めて卯月を柔らかく見つめる渋谷凛の姿、その描き方もあまりにも素晴らしいと思えます。


自分だって渦巻く思いに胸いっぱいのこんな時ですら、(視線の動きで示されたように)傍らの未央をまず思いやれるのが渋谷凛という少女の彼女ならではの美点で。
そして、目の前の卯月をしっかり見つめ、その思いと在り方を理解し、近づいていこうともしている様子もまた、渋谷凛渋谷凛らしさが遺憾なく示されている描写かと思えます。

アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【前編】7話概説&本田未央特集
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20150304
アイドルマスターシンデレラガールズ7話感想【後編】CP14人+Pの再出発としての7話
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20150306