話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選【※スマホ閲覧用軽量版】

「お前の記事、

ファイルサイズ大きすぎだか読み込み多すぎだかで自分のスマートフォンからだとエラーでて読めないよ。2022年だか2023年だかにスマホから読めない記事とかやめろ」

 

ともっとも過ぎるご意見を頂いたので、スマホからも読める(と思う。少なくとも手元の端末だと……)軽量版としてこちらの記事にもまとめ直しました。すみません。

 

以下、改めて。

 

「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」への参加記事です。

現在は個人ニュースサイト「aniado」さんが集計されている企画で。
過去、2014年2017年2020年2021年と四回参加させて頂いています。

 

単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」ルール

・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

 

規定に従い以下、順不同です。

 

1:『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第5話 「まっしろリボン」
2:『まちカドまぞく 2丁目』第6話 「夕日の誓い!まぞくたちの進む道」
3:『ぼっち・ざ・ろっく!』第12話「君に朝が降る」
4:『明日ちゃんのセーラー服』第7話「聴かせてください」
5:『Extreme Hearts』第12話「SUNRISE」
6:『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期第6話「 "大好き"の選択を」
7:『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』5話「DIYって、どこかに・いばしょが・ようやく」
8:『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第12話  「黄金」

9:『86-エイティシックス-』22話「シン」
10:『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』4話「駆け出しの名探偵
〜ミロワールに想いを寄せて〜」

 

 

1:『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第5話 「まっしろリボン」

監督:佐伯昭志
アニメーション制作:シャフト
脚本:山﨑莉乃
絵コンテ:徳野雄士、佐伯昭志、春藤佳奈
演出:白石道太
作画監督:浅井昭人、渋谷勤、細田沙織
放送日:7月31日

折り紙にあしらわれた青い花と亡き妻/母が愛した青い桔梗、自分を偽るお姫様とクーポラのだまし絵、差し出された白いリボンを付けた姿を鏡で見て慌てるシルヴィと夜の窓に映るまだ拙い自分の踊りを見つめ練習に励むジョー……終始、象徴の使い方が巧く、そして締めの品が良さが素晴らしい。

この挿話を通じて描かれ抜く、言葉にされずとも伝わる思い。今は伝われずとも確かに示され、いつかきっと伝わるだろうという思い……この5話ほどの構成美を誇るオリジナルTVアニメの話数は極めて稀だと思えるし、『ルミナスウィッチーズ』という作品全体についても同様に思う。


放送前は個人的に関心が強くなく「『放課後のプレアデス』『アサルトリリィ』佐伯昭志監督の作品なら」という興味で観始めた所、1話からだんだんと好印象が強まり、そしてこの5話で惚れ込んでしまって。
急いで未見だった過去作『ストライクウィッチーズ』1期2期3期、『ストライクウィッチーズ劇場版』、『ブレイブウィッチーズ』等々を配信で観ていったら……7話で『ストライクウィッチーズ』6話で描かれたエピソードと14年越しに物語が繋がるという展開にも出会うことに。


※5話の諸々の描写について、また、以降の話数や過去作絡みの諸々等についての細かい話はこちらで↓

『ルミナスウィッチーズ』6話以降も素晴らしいエピソードが最後まで描かれ続けいったことで、最初は5話について組んだまとめだったものが、結局作品全体の感想まとめともなった。
個人的に、得難い、幸福な出会いだったと思う。

 

 

2:『まちカドまぞく 2丁目』第6話 「夕日の誓い!まぞくたちの進む道」

監督:桜井弘明
アニメーション制作:AQUA ARIS
脚本:大知慶一郎
絵コンテ:岡本英樹
演出:野上良之
作画監督:上田彩朔、浅尾宏成、中熊太一、谷川政輝、大木良一、大塚舞

総作画監督大塚舞
放送日:5月13日

これまでの話の総決算を、キャラクターと、その暮らす街角と空と、1期主題歌と連動させて描く。
極めてハイテンポな演出でずっと進んできた作品が、その笑顔を見ての涙だけはこんなにもじっくりと描く。

物語としてもアニメとしてのこれまでの描き方全体も、全てがこの2期6話終盤で迎えた(ひとまずの)クライマックスに収束し描かれる様が圧巻だった。

詳しくは以下のtweet引用の日付部分(2022年5月14日)のリンク先でツリー表示される一連の投稿でどうぞ。

 

なお『まちカドまぞく 2丁目』が好きな人は12/19日配信の

「「まちカドまぞく 2丁目」スタッフトークイベント~眷属たちの集い~」

ニコニコ動画のプレミアム会員向けタイムシフト視聴で観るのも(勿論、未見なら)お勧め。

以下の投稿から連投で、配信の感想メモも。気になる人はどうぞ。

 

3:『ぼっち・ざ・ろっく!』第12話「君に朝が降る」

監督:斎藤圭一郎
アニメーション制作:CloverWorks
脚本:吉田恵里香
絵コンテ:斎藤圭一郎
演出:斎藤圭一郎
作画監督:けろりら
放送日:12月25日

1つの話数の中でも全話を通じても精緻に構成され。
アイディアに溢れ凝りに凝った演出で、手描きにこだわるライブ作画で、素晴らしい楽曲の数々で……いつも最高に楽しませてくれた傑作。

 

その良さは1話から順に、原作とも細かく比較しつつじっくり観ていくと(例えば下記リンク先のまとめでも読んでいって貰えば……)絶対により良くわかるかとは思うのだけれど。

ともあれ、ここでは12話とそこに至る流れについて。

12話は最終回らしく、積み重ねられた様々な流れが結実した回であるといえるかと思う。

 

最もわかりやすいのは以下の投稿からの一連の流れかと思うので、少し解説してみると。

まず12話のライブで喜多ちゃんはこれまで自分を救い続けてきてくれた自分のヒーローのピンチを救うヒーローになってみせ。それができたから「皆に見せてよ。本当は…後藤さんは凄くかっこいいんだってところ!」と11話で言えなかった言葉を口にできたのだという流れがあり。

それは5話自販機前で「本当の夢」を語らず/語れず、8話ライブ後でひとりが「本物のヒーローに見えた」から、その光に救われて自分も夢を追い、また星の輝く夜空を仰ぎ見ることができるようになったから「本当の夢」を口にできた流れの反復であって。

 

そして作品全体、1話~12話を通じて出会いのその時からからずっと伊地知虹夏は後藤ひとりを光の中へと誘い連れ出してくれる存在で。
同時に虹夏にとってやはり出会いの時から「とんでもなくヤバい状況をいつも壊しくれたのが、ぼっちちゃん」、闇を払う光だったという構図があると思える。同様に喜多ちゃんは出会の時からひとりにとって周りに馴染み自然にチヤホヤされる眩しい存在な一方。喜多ちゃんにとっても出会から惹きつけられ、すぐ私のヒーローになってもいた。
ひとり⇔虹夏
ひとり⇔喜多
という二つの関係性をいつも太い軸に描かれてきた作品であったかと思える。

 

では山田リョウは?といえば。

ひとりはチヤホヤされる自分に。
虹夏は夢を叶えられる自分に。
喜多ちゃんは(虹夏の夢同様伏せられ続けていて、原作では3巻で明かされる話だけど)「特別」を持つ自分に。
三人とも、今の自分から変わりたいと切実に願い続けている中で。

でも、その一方でいくら願っても変えられない、そして変えるべきでないことがあるし、それでいいんだ、それがいいんだと語り、体現するのが山田リョウの立ち位置。

特に4話でリョウがひとりに教え諭した、

「個性捨てたら死んでるのと一緒だよ」。
「バラバラの個性が集まってひとつの音楽になって、それが結束バンドの色になるんだから」

はこの作品が家族とも友人とも恋人とも違う「バンド」という独特な関係性、在り方を描く作品と示す核心的な台詞だとも言える。

こうして山田リョウが示し支えるベース/基盤があってこそ。

ひとりは「私俯いてばかりだそれでいい猫背のまま虎になりたいから」と。
虹夏は「鳴り止まなくてなにが悪い青春でなにが悪い」と明るさでわがままに押し通し。
喜多ちゃんは「指先が硬くなるたびこの意志も固く」しつつ「星灯りのように光り出せわたしだけの音」と歩んでいくことができるのだと思う。

 

なお、そんな山田リョウが自分の大事なものを託し懸けていたバンドが解散して闇に沈んでいた時に救い出してくれた光は言わずもがな、伊地知虹夏で。
きっと、それからもずっと光であり続けてる。

 

そんなこんなでどこまでも賑やかに楽しく、しかし、がっしりとした関係性の太い軸を持って緻密に繊細に原作からの多数の翻案を交え描かれてきたアニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』、見事にその良さを結晶化させたような最終回12話だったと思う。

 

なお、12話の中だけでも

・1話との対比として、意図して構図を重ねて描かれている場面の数々

・ライブ場面の細かい演出の数々

等他にもいろいろな見所があるのでそこらへんについてはこちらから。

 

4:『明日ちゃんのセーラー服』第7話「聴かせてください」

監督:黒木美幸
アニメーション制作:CloverWorks
脚本:山崎莉乃
絵コンテ:Moaang
演出:Moaang
作画監督:川上大志
放送日:2月20日

この作品は1話から12話までどの話数でもこうした10選に含めるに相応しいだろう画、構図、物語、キャラクターの魅力に満ち満ちているだいぶ特異なアニメなのだけれど。

中でも7話は画と構図についてもトップクラスでありつつ、特に抜きん出た「音」の演出、そしてこの挿話で(蛇森生静と共に)クローズアップされる戸鹿野舞衣というキャラクターの発する圧倒的な引力のために特別な話数になっていると思える。

 

中でも圧巻だったのはこの場面。

このアニメの中でも、ベストといえる描写だったと思う。

 

※7話及び他の話数についての詳しい感想等はこちら↓


5:『Extreme Hearts』第12話「SUNRISE」

監督:西村純二
アニメーション制作:Seven Arcs
脚本:都築真紀
絵コンテ:岩畑剛一、西村純二
演出:細田雅弘、深瀬重
作画監督:橋本貴吉、関根千奈未、鞠野黄英、ジョンヒジン、平田賢一

総作画監督:新垣一成、奥田泰弘
放送日:9月25日

12話で最も素晴らしいのはまずなんといっても、それまで挫けず揺るがぬ意思を示し続けてきた主人公・葉山陽和が、シンデレラ・ストーリーを成就させての喜びと誇らしさでいっぱいのはずの晴れ舞台で唐突に泣き崩れ立ちすくんで。

そして周囲を見回し、立ち直り、感謝の言葉を大きく叫んでまた歌い踊り出す場面。

12話前半では陽和率いるRISEの他メンバーは、彼女の泣いた所も怒った所も見た事がない、見せてくれていない……それは多くを背負わせすぎてる為だ、もっと支えられたら、支えていかないと、そうできる私たちにならないと……と話す場面があって。

更にステージ前MCで陽和は優勝し今ここにいる事を夢のようだと、メンバーの支えと観る人達の応援に感謝したいと口にしていて。

その上で、かつてない大きな舞台で歌い踊り会場全ての喝采を仲間たちと受けた時、はじめてその巨大な「実感」が襲ったことを描いた場面なのだと思う。

これまでに重ね続けてきた努力、耐えに耐えてきた諸々、出会った多くの人から受け取った思いと支え、抱き続けてきた夢、現実になった想像……多くの思いが複雑に混じり合い単純な言葉で表現などできないしすべきでもない在りかたを、こうして示す。

 

その時、RISEのメンバーはまさに今、陽和を支える時だと自然に悟り、泣き続け立ちすくむ陽和が戻るまで場を守るし、観客も温かく待つ。

これまでに得てきたもの、これから引き受けて更に歩んでいくものが鮮やかに示され、更に大きな舞台がRISEを待つ。

ここまで物語もキャラクターも見事に描き続けられ、描写が積み上げられてきたからこその美しいクライマックスだった。

 

※単なる理屈や言葉では片付かない「実感」を描いた事例といえば、TVアニメでは例えば『宇宙よりも遠い場所』12話(全13話)の報瀬の号泣場面が挙げられるかと思う。

目にしたのは、その時からずっと歩み続けてきた自分の道程と。
そして、それを見ることが、(どんなにか見てやりたかっただろうに)見てやることができなかった人の姿だったのかと思う。
喪失の実感……と言葉にすればそういうことなのかとは思うけど、簡単に言葉で片付け得るものでも片付けるべきものでもないから、こうした表現となり、それが完璧なまでに相応しかった。

作品の終盤においてこうした「実感」を描き切ることができる作品はそれだけで傑作の資格を得ているとすら言って良いのかもしれない。


そして『Extreme Hearts』12話においてもう一つ感嘆させられたのが、最後に立ちはだかったライバルMay-Bee(メイビー)がライブ場面で体現してみせたもの。

"負けてなお格上"という、貫禄と敗北でも決して折れず……勝って得るべきものを得ることはできずとも負けたことで何も失いなどしないし、負けたままでいるわけもないと、その魅力と意思と在り方を映像と歌で示し切った姿。

挫けることなきレイジングハート、そのセットアップ。"Stand Up and Fight"の魂。

上記の動画部分からでも明らかなように、曲名「HELLO HERO」の「HERO」とは他の誰かでなく「わたしの胸の中に 宿る勇気」(であると共に「誰しも胸の中に 宿るヒカリ」)。

フルバージョン(各種サブスクで配信。歌詞はこちら)では明快に

「わたしを救えるのは わたしなんだって

 明日にSay HELLO

 いつでも 胸を張っていたい」

とも歌い上げる。

その自力救済の志向は(「HELLO HERO」の作詞は別の人だけど)いかにも(『Extreme Hearts』の原案及び脚本を手掛けた)都筑真紀らしいとも思える。

都筑真紀さんは今は昔、エロゲー方面で『ONE』(1998)『KANON』(1999)『AIR』(2000)が大きな話題を呼んだりもする中でも……ヒロイン陣が主人公に"選ばれない"なら"選ばれない"で少なくないケースで自分のことは自分でなんとかして道を切り拓くし、各々のルートでも主人公は手助けでやっぱり基本は本人が自身と向き合うという『とらいあんぐるハート』(1発売=1998、2/1999、3/2000)のシナリオ・原画を務め。

その後『とらいあんぐるハート3』のスピンオフから人気アニメシリーズに発展した『魔法少女リリカルなのは』でも幼女(高町なのは9歳)や幼女(フェイト・テスタロッサ9歳)や幼女(八神はやて9歳)や幼女(高町ヴィヴィオ、転生後年齢推定4~5歳)が過酷な運命に時に挫けそうになり、差し伸べられる温かな手に支えられつつも、肝心要なところは自ら立ち上がり戦い自分は自分自身で救う姿が描かれ続けてきてもいた。

それで、そのあまりに幼女(または少女)に過酷な運命をぶつけていく在り方とそれへの幼女(または少女)たちの向き合い方についてはだいぶ昔にちょっとアレな形で触れたりもしたのだけれど。

そういった諸々を鑑みると。

「ああ、都筑真紀さんも己の魂はまず己自身で救う自力救済の輝きを鬼畜外道な幼女/少女虐待を交えずともこうしてここまで綺麗に力強く魅力的に描けるようになったんだなあ、素晴らしいなあ」

と思わずにはいられず、その意味でも大変感慨深い話数でもあった。

 

6:『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期第6話「 "大好き"の選択を」

監督:河村智之
アニメーション制作:サンライズ
脚本:田中仁
絵コンテ:ほりうちゆうや
演出:横手楓太
作画監督石井久美、市原圭子、粕川みゆき、亀田朋幸、後藤望、永山恵、林央剛、三沢聖矢、吉田雄一

ダンスパート絵コンテ:神谷宣幸、中山直哉

ダンスパート演出:戸澤俊太郎

ダンスパート作画監督:久松沙紀

総作画監督:横田拓己、冨岡寛、山本亮

放送日:5月7日

 

アニメ虹ヶ咲、特に二期のストーリーテリングは良くも悪くも

"過去がこう、今がこう、同好会の面々と関わっての足跡がこうであるからには、この人物がこの人物である以上そりゃあそうしますよね"

という徹底した詰ませ方、詰め寄り方が特徴と思う。
新しく加わったランジュ、栞子、ミアについては勿論、1期から続投の同好会の面々についても。


それは流れとして美しくもあれば作中人物としても、それを観る視聴者にしても納得の度合いが高いものになる一方、時にはやや"自分の意思で決断する"という趣きを損なっている印象もなくはない。
でも、例えばこの6話の優木せつ菜/中川 菜々(それに7話の三船栞子)くらい見事に決めてこられると感嘆が遥かに上回る。

それに至るお膳立ても含めて、実に見事な「選択」だと思わされる。

 

まずは以下の投稿からの連投で解説している話数をまたいだ、エールの繋がりと連なり。

 

そして、下した「選択」の上での、それを宣言する様が。

1期2期通じた作中のキャラクターが作中世界において他のキャラクターたちに見せる演出としても、作品が視聴者に見せる演出としても屈指、あるいはベストのものだったかと思う。

このくだりの画、構図、流れ、楠木ともりさんの演技等々すべてに渡る良さがこの虹ヶ咲2期6話を選出した大きな理由になっている。

 

それと「選択」の上での演出といえば、勿論ライブ場面についても。

虹ヶ咲2期6話、A・ZU・NA「Infinity!Our wings!!」の衣装はつまり、三人ともがそれぞれ異なる"美女でもあり野獣でもある"ということ。かわいく綺麗に、力強く自由に。無限の可能性!欲しいものは全部手に入れる!という宣言だろうと思える。

そして以下の投稿から例によって連投で解説している話として。

1期2期を通じ虹ヶ咲の特徴としてメンバーの在り方、同じ問いに対する答え・姿勢が全く異なっていて、それで良いとされることがあると思う。

例えば「「わがまま」でいいか」に対するものも面白い。

ざっくり、QU4RTZは自分がわがままになるのは嫌だったりなり切れない四人でA・ZU・NAはわがままな自分も認めていく三人な印象。

「本当に、いいんですか。私の本当のわがままを、大好きを貫いてもいいんですか?」(1期3話)
のせつ菜をはじめ「Infinity!Our wings!!」は歌詞といい映像といい、わがまま放題に全ての可能性を……こんなかわいい美女の顔しつつ、全部喰らう、血ぃ吸うたろか、という野獣宣言なわけで。

QU4RTZは2期3話でかすみについて「本当はすごくみんなのことを考えてくれるよね」彼方について「マイペースに見えて、本当はすごくお世話好きじゃないですか!」と語られて、エマの芯の強さは誰かをぽかぽかにするために発揮され、璃奈が周りを引っ張るのもよく状況を見てのものだったりするし。

例えば1期7話でも彼方が選ぶ道はわがままではない、とされていたりする。
「皆との同好会は、彼方ちゃんにとっても、大事な、失いたくない場所なんだよ。でも、遥ちゃんの幸せも守りたいの。そんなの、わがままだよね」
「そうかしら。それってわがままじゃなくて、自分に正直っていうんじゃない」 

そういう風に同じ問いに違う答えを出していいし、それがいい、という在り方であり、魅力なのだと思える。

 

※6話及び他話数のより詳しい感想はこちら。↓

 

7:『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』5話「DIYって、どこかに・いばしょが・ようやく」

監督:米田和弘
アニメーション制作:PINE JAM
脚本:筆安一幸
絵コンテ:伊礼えり
演出:伊礼えり
作画監督:新井博慧
放送日:11月3日

 

DIY関連のお仕事をされているというのはだいぶ前にご本人のtwitterで情報が出ていたので、以前から楽しみにしていた絵コンテ・演出=伊礼えりさんの回。

色々長くなるので細かな良さの紹介は幾つか挙げるに留めるけど、何よりまず「TVアニメ観るのって楽しくていいなあ」と改めて強く思わせてくれる傑作回だった。

少しだけ例示。

 

※5話及び他話数のより詳しい感想はこちら。↓

 

8:『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第12話  「黄金」

監督:小島正幸
アニメーション制作:キネマシトラス
脚本:倉田英之
絵コンテ:小島正幸
演出:小島正幸、垪和等
作画監督:伊藤晋之、大森理恵、川崎怜奈、小里明花、滝口浩喜、竹本未希、田中宏紀、谷紫織、寺尾憲治、福島勇三、橋妙子、山崎絵美
放送日:9月28日

「ファプタは…母のすべてを継いだ…と思っていた
だがヴエロエルコ お前がいた という記憶だけは
ファプタのどこにもなかった
ヴエコ
母は…たとえファプタであっても
お前だけは
お前だけは渡したくなかったのだ」

煎じ詰めればこの台詞、この場面を観たかった。

勿論言うまでもなく、そこまでが見事に描かれ抜いているからこそ輝いてもいた。

ファプタの久野美咲さんは勿論だけど、ヴエロエルコの寺崎裕香さんの演技がとにかく本当に素晴らしかった。

ありがとう、『メイドインアビス 烈日の黄金郷』。

 

またこのアニメが主役たちは勿論、描かれる世界や生き物たち、諸々の脇役たちも緻密に力強く描いていたことは、例えば成れ果てた後は一つ目の姿で描かれるパッコヤンさんを巡る描写からでも伺える。

パッコヤンさんについては他の人のだけれど、こちらのブログ記事をぜひどうぞ。

 

9:『86-エイティシックス-』22話「シン」

監督:石井俊匡
アニメーション制作:A-1 Pictures
脚本:大野敏哉
絵コンテ:石井俊匡

演出:石井俊匡
作画監督:成川多加志、真壁誠、伊藤美奈、波部崇、小川莉奈、稲田正輝、樋口香里、安田京弘
総作画監督川上哲也、杉生祐一
放送日:3月12日

概ね非常に陰鬱な空気の中、同じような展開が繰り返されもするライトノベルの原作1巻を1クールかけてじっくり描いていったアニメ1期は個人的にも全面的に好感が持てたとはいえず、twitterでのやはり個人的な観測範囲内での評判もそれほど芳しくはなかった。

しかし、そうした密度の高い描写は2期まで終えてみれば相応の、あるいは相応以上の意味と意義があるものだった……そう証明するような"花火"を通じて密接に繋がり合う『86』7話&22話の描かれだったと思える。

 

アニメにおいて、花火は非常にしばしば象徴的な形で用いられる。

その中でも、『86 エイティシックス』7話「忘れないでいてくれますか?」&22話「シン」の一組の挿話ほど花火を多義的なイメージの象徴として描いている例はなかなかにないかとも思う(まず、22話で爆散したモルフォの色鮮やかな火花は7話での革命祭の花火のリフレインだ)。

22話は7話の画、場面、台詞、仕草等をしばしば反復しつつ(後述するようにここぞというところで数回、7話のカットが引用されもする)、シンとレーナ、二人の主人公のキャラクターと足跡の核心を見事に描き出している。そのイメージの鍵に花火がある。

何よりまずこの7話&22話の圧倒的な素晴らしさを味わえたから、このアニメ版『86』を観ることができて良かったと思う。

上記についての諸々、詳細は以下のリンク先で↓。

 

10:『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』4話「駆け出しの名探偵
〜ミロワールに想いを寄せて〜」

監督: 金崎貴臣
アニメーション制作:CygamesPictures
脚本:金崎貴臣
絵コンテ:坂詰嵩仁
演出:坂詰嵩仁
作画監督:福元陽介、普津澤時ヱ門、坂詰嵩仁
放送日:2月1日

「今、TVアニメの一つの話数にこんな人たちをこれだけ集めてしまってもいいんだ。そんなことがあるんだ」

という素直な驚きを覚えた、いわゆるSAKUGA回。

ところで一説?によるとこの面子の幾らかは『ゲーマーズ!』OP(の終盤)と重なっていて、

プリコネ2期4話アクション場面最大の華も後半のゴーレム戦であったことからも"あの感じを更に進化させた形でもう一度!"という趣もあったのかもしれないし、別になかったのかもしれない。

なお、ガンガン激しく動きながらもどんな動きか観る側が結構しっかり追える、追いやすい見せ方になっていたり、話も面白いしキャルさんは最高にかわいいしで、作画の魅力以外にも質が高い素敵な挿話でもあった。

なお、アクション描写がしっかり追える感じのものである一方、日常パートで再視聴重ねる前提の詰め込みなり上乗せなりも時折していて、そこもちょっと面白かった。

 

■2022TVアニメOP/ED10選


■2022年TVアニメ10選に入れ切れなかった好きな話数・作品

1:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

2:『王様ランキング』21話&『チェンソーマン』8話

3:『ヤマノススメ Next Summit』7話(、5話)

4:『モブサイコⅢ100』8話(、6話、12話)

5:『BLEACH 千年血戦篇』6話

6:『かぐや様は告らせたい』3期5話、3期12話

7:『ヒーラー・ガール』3話

8:『サマータイムレンダ』15話

9:『パリピ孔明』6話

10:『よふかしのうた』11話-13話

11~:『スローループ』『ラブライブ!スーパースター!!』2期『Engage Kiss』『錆喰いビスコ』『ヴァニタスの手記』2期『であいもん』『ダンス・ダンス・ダンスール』『その着せ替え人形は恋をする』『異世界おじさん』『怪人開発部の黒井津さん』『アークナイツ [黎明前奏]』『転生したら剣でした』『阿波連さんははかれない』『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』他

 

ここで挙げた作品についても色々書いたけど、こちらでは軽量化のため割愛として、詳しくはこちらの元記事で……

 

 

 

今年の劇場アニメ&web配信限定で面白かったアニメ&OVA

※下記、赤字で記した作品についてはリンク先記事に感想も。

 

○劇場(アニメ)
THE FIRST SLAM DUNK
すずめの戸締まり
GレコⅣ
犬王
ぼくらのよあけ

かぐや様は告らせたい ファーストキッスは終わらない

マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!
GレコⅤ
からかい上手の高木さん
鹿の王
ククルス・ドアンの島
私に天使が舞い降りた!

かがみの孤城
グッバイ、ドン・グリーズ!
ゆるキャン△
君を愛したひとりの僕へ
僕が愛したすべての君へ
オッドタクシー イン・ザ・ウッズ

 

○配信(アニメ)
漁港の肉子ちゃん
地球外少年少女
ARIA The CREPUSCOLO
ストライクウィッチーズ 劇場版
GレコⅠ
GレコⅡ
GレコⅢ
コードギアス 反逆のルルーシュI 興道
コードギアス 反逆のルルーシュII 叛道
コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道
コードギアス 復活のルルーシュ
雨を告げる漂流団地
バブル
海辺のエトランゼ
思い、思われ、ふり、ふられ

 

OVA/ネット配信/ドラマ等
サイバーパンク: エッジランナーズ
ウェンズデー
戦闘妖精雪風
スプリガン
ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン
スーパー・クルックス
Tekken: Bloodline
TIGER & BUNNY: TIGER & BUNNY 2:
BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー
戦闘妖精少女 たすけて!メイヴちゃん

 

以上です。

あけましておめでとうございます。

本年も宜しくお願いします。

 

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選

スマホからの閲覧などで記事がうまく読み込めない場合、こちら↓をどうぞ。

 

「話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」への参加記事です。

現在は個人ニュースサイト「aniado」さんが集計されている企画で。
過去、2014年2017年2020年2021年と四回参加させて頂いています。

 

単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選」ルール

・2022年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

 

規定に従い以下、順不同です。

 

1:『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第5話 「まっしろリボン」
2:『まちカドまぞく 2丁目』第6話 「夕日の誓い!まぞくたちの進む道」
3:『ぼっち・ざ・ろっく!』第12話「君に朝が降る」
4:『明日ちゃんのセーラー服』第7話「聴かせてください」
5:『Extreme Hearts』第12話「SUNRISE」
6:『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期第6話「 "大好き"の選択を」
7:『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』5話「DIYって、どこかに・いばしょが・ようやく」
8:『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第12話  「黄金」

9:『86-エイティシックス-』22話「シン」
10:『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』4話「駆け出しの名探偵
〜ミロワールに想いを寄せて〜」

 

 

1:『連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ』第5話 「まっしろリボン」

監督:佐伯昭志
アニメーション制作:シャフト
脚本:山﨑莉乃
絵コンテ:徳野雄士、佐伯昭志、春藤佳奈
演出:白石道太
作画監督:浅井昭人、渋谷勤、細田沙織
放送日:7月31日

折り紙にあしらわれた青い花と亡き妻/母が愛した青い桔梗、自分を偽るお姫様とクーポラのだまし絵、差し出された白いリボンを付けた姿を鏡で見て慌てるシルヴィと夜の窓に映るまだ拙い自分の踊りを見つめ練習に励むジョー……終始、象徴の使い方が巧く、そして締めの品が良さが素晴らしい。

この挿話を通じて描かれ抜く、言葉にされずとも伝わる思い。今は伝われずとも確かに示され、いつかきっと伝わるだろうという思い……この5話ほどの構成美を誇るオリジナルTVアニメの話数は極めて稀だと思えるし、『ルミナスウィッチーズ』という作品全体についても同様に思う。


放送前は個人的に関心が強くなく「『放課後のプレアデス』『アサルトリリィ』佐伯昭志監督の作品なら」という興味で観始めた所、1話からだんだんと好印象が強まり、そしてこの5話で惚れ込んでしまって。
急いで未見だった過去作『ストライクウィッチーズ』1期2期3期、『ストライクウィッチーズ劇場版』、『ブレイブウィッチーズ』等々を配信で観ていったら……7話で『ストライクウィッチーズ』6話で描かれたエピソードと14年越しに物語が繋がるという展開にも出会うことに。


※5話の諸々の描写について、また、以降の話数や過去作絡みの諸々等についての細かい話はこちらで↓

『ルミナスウィッチーズ』6話以降も素晴らしいエピソードが最後まで描かれ続けいったことで、最初は5話について組んだまとめだったものが、結局作品全体の感想まとめともなった。
個人的に、得難い、幸福な出会いだったと思う。

 

 

2:『まちカドまぞく 2丁目』第6話 「夕日の誓い!まぞくたちの進む道」

監督:桜井弘明
アニメーション制作:AQUA ARIS
脚本:大知慶一郎
絵コンテ:岡本英樹
演出:野上良之
作画監督:上田彩朔、浅尾宏成、中熊太一、谷川政輝、大木良一、大塚舞

総作画監督大塚舞
放送日:5月13日

これまでの話の総決算を、キャラクターと、その暮らす街角と空と、1期主題歌と連動させて描く。
極めてハイテンポな演出でずっと進んできた作品が、その笑顔を見ての涙だけはこんなにもじっくりと描く。

物語としてもアニメとしてのこれまでの描き方全体も、全てがこの2期6話終盤で迎えた(ひとまずの)クライマックスに収束し描かれる様が圧巻だった。

 

なお『まちカドまぞく 2丁目』が好きな人は12/19日配信の

「「まちカドまぞく 2丁目」スタッフトークイベント~眷属たちの集い~」

ニコニコ動画のプレミアム会員向けタイムシフト視聴で観るのも(勿論、未見なら)お勧め。

以下の投稿から連投で、配信の感想メモも。気になる人はどうぞ。

 

3:『ぼっち・ざ・ろっく!』第12話「君に朝が降る」

監督:斎藤圭一郎
アニメーション制作:CloverWorks
脚本:吉田恵里香
絵コンテ:斎藤圭一郎
演出:斎藤圭一郎
作画監督:けろりら
放送日:12月25日

1つの話数の中でも全話を通じても精緻に構成され。
アイディアに溢れ凝りに凝った演出で、手描きにこだわるライブ作画で、素晴らしい楽曲の数々で……いつも最高に楽しませてくれた傑作。

 

その良さは1話から順に、原作とも細かく比較しつつじっくり観ていくと(例えば下記リンク先のまとめでも読んでいって貰えば……)絶対により良くわかるかとは思うのだけれど。

ともあれ、ここでは12話とそこに至る流れについて。

12話は最終回らしく、積み重ねられた様々な流れが結実した回であるといえるかと思う。

 

 

 

 

 

 

4:『明日ちゃんのセーラー服』第7話「聴かせてください」

監督:黒木美幸
アニメーション制作:CloverWorks
脚本:山崎莉乃
絵コンテ:Moaang
演出:Moaang
作画監督:川上大志
放送日:2月20日

この作品は1話から12話までどの話数でもこうした10選に含めるに相応しいだろう画、構図、物語、キャラクターの魅力に満ち満ちているだいぶ特異なアニメなのだけれど。

中でも7話は画と構図についてもトップクラスでありつつ、特に抜きん出た「音」の演出、そしてこの挿話で(蛇森生静と共に)クローズアップされる戸鹿野舞衣というキャラクターの発する圧倒的な引力のために特別な話数になっていると思える。

 

※7話及び他の話数についての詳しい感想等はこちら↓


5:『Extreme Hearts』第12話「SUNRISE」

監督:西村純二
アニメーション制作:Seven Arcs
脚本:都築真紀
絵コンテ:岩畑剛一、西村純二
演出:細田雅弘、深瀬重
作画監督:橋本貴吉、関根千奈未、鞠野黄英、ジョンヒジン、平田賢一

総作画監督:新垣一成、奥田泰弘
放送日:9月25日

12話で最も素晴らしいのはまずなんといっても、それまで挫けず揺るがぬ意思を示し続けてきた主人公・葉山陽和が、シンデレラ・ストーリーを成就させての喜びと誇らしさでいっぱいのはずの晴れ舞台で唐突に泣き崩れ立ちすくんで。

そして周囲を見回し、立ち直り、感謝の言葉を大きく叫んでまた歌い踊り出す場面。

12話前半では陽和率いるRISEの他メンバーは、彼女の泣いた所も怒った所も見た事がない、見せてくれていない……それは多くを背負わせすぎてる為だ、もっと支えられたら、支えていかないと、そうできる私たちにならないと……と話す場面があって。

更にステージ前MCで陽和は優勝し今ここにいる事を夢のようだと、メンバーの支えと観る人達の応援に感謝したいと口にしていて。

その上で、かつてない大きな舞台で歌い踊り会場全ての喝采を仲間たちと受けた時、はじめてその巨大な「実感」が襲ったことを描いた場面なのだと思う。

これまでに重ね続けてきた努力、耐えに耐えてきた諸々、出会った多くの人から受け取った思いと支え、抱き続けてきた夢、現実になった想像……多くの思いが複雑に混じり合い単純な言葉で表現などできないしすべきでもない在りかたを、こうして示す。

 

その時、RISEのメンバーはまさに今、陽和を支える時だと自然に悟り、泣き続け立ちすくむ陽和が戻るまで場を守るし、観客も温かく待つ。

これまでに得てきたもの、これから引き受けて更に歩んでいくものが鮮やかに示され、更に大きな舞台がRISEを待つ。

ここまで物語もキャラクターも見事に描き続けられ、描写が積み上げられてきたからこその美しいクライマックスだった。

 

※単なる理屈や言葉では片付かない「実感」を描いた事例といえば、TVアニメでは例えば『宇宙よりも遠い場所』12話(全13話)の報瀬の号泣場面が挙げられるかと思う。

目にしたのは、その時からずっと歩み続けてきた自分の道程と。
そして、それを見ることが、(どんなにか見てやりたかっただろうに)見てやることができなかった人の姿だったのかと思う。
喪失の実感……と言葉にすればそういうことなのかとは思うけど、簡単に言葉で片付け得るものでも片付けるべきものでもないから、こうした表現となり、それが完璧なまでに相応しかった。

作品の終盤においてこうした「実感」を描き切ることができる作品はそれだけで傑作の資格を得ているとすら言って良いのかもしれない。


そして『Extreme Hearts』12話においてもう一つ感嘆させられたのが、最後に立ちはだかったライバルMay-Bee(メイビー)がライブ場面で体現してみせたもの。

"負けてなお格上"という、貫禄と敗北でも決して折れず……勝って得るべきものを得ることはできずとも負けたことで何も失いなどしないし、負けたままでいるわけもないと、その魅力と意思と在り方を映像と歌で示し切った姿。

挫けることなきレイジングハート、そのセットアップ。"Stand Up and Fight"の魂。

上記の動画部分からでも明らかなように、曲名「HELLO HERO」の「HERO」とは他の誰かでなく「わたしの胸の中に 宿る勇気」(であると共に「誰しも胸の中に 宿るヒカリ」)。

フルバージョン(各種サブスクで配信。歌詞はこちら)では明快に

「わたしを救えるのは わたしなんだって

 明日にSay HELLO

 いつでも 胸を張っていたい」

とも歌い上げる。

その自力救済の志向は(「HELLO HERO」の作詞は別の人だけど)いかにも(『Extreme Hearts』の原案及び脚本を手掛けた)都筑真紀らしいとも思える。

都筑真紀さんは今は昔、エロゲー方面で『ONE』(1998)『KANON』(1999)『AIR』(2000)が大きな話題を呼んだりもする中でも……ヒロイン陣が主人公に"選ばれない"なら"選ばれない"で少なくないケースで自分のことは自分でなんとかして道を切り拓くし、各々のルートでも主人公は手助けでやっぱり基本は本人が自身と向き合うという『とらいあんぐるハート』(1発売=1998、2/1999、3/2000)のシナリオ・原画を務め。

その後『とらいあんぐるハート3』のスピンオフから人気アニメシリーズに発展した『魔法少女リリカルなのは』でも幼女(高町なのは9歳)や幼女(フェイト・テスタロッサ9歳)や幼女(八神はやて9歳)や幼女(高町ヴィヴィオ、転生後年齢推定4~5歳)が過酷な運命に時に挫けそうになり、差し伸べられる温かな手に支えられつつも、肝心要なところは自ら立ち上がり戦い自分は自分自身で救う姿が描かれ続けてきてもいた。

それで、そのあまりに幼女(または少女)に過酷な運命をぶつけていく在り方とそれへの幼女(または少女)たちの向き合い方についてはだいぶ昔にちょっとアレな形で触れたりもしたのだけれど。

そういった諸々を鑑みると。

「ああ、都筑真紀さんも己の魂はまず己自身で救う自力救済の輝きを鬼畜外道な幼女/少女虐待を交えずともこうしてここまで綺麗に力強く魅力的に描けるようになったんだなあ、素晴らしいなあ」

と思わずにはいられず、その意味でも大変感慨深い話数でもあった。

 

6:『虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期第6話「 "大好き"の選択を」

監督:河村智之
アニメーション制作:サンライズ
脚本:田中仁
絵コンテ:ほりうちゆうや
演出:横手楓太
作画監督石井久美、市原圭子、粕川みゆき、亀田朋幸、後藤望、永山恵、林央剛、三沢聖矢、吉田雄一

ダンスパート絵コンテ:神谷宣幸、中山直哉

ダンスパート演出:戸澤俊太郎

ダンスパート作画監督:久松沙紀

総作画監督:横田拓己、冨岡寛、山本亮

放送日:5月7日

 

アニメ虹ヶ咲、特に二期のストーリーテリングは良くも悪くも

"過去がこう、今がこう、同好会の面々と関わっての足跡がこうであるからには、この人物がこの人物である以上そりゃあそうしますよね"

という徹底した詰ませ方、詰め寄り方が特徴と思う。
新しく加わったランジュ、栞子、ミアについては勿論、1期から続投の同好会の面々についても。


それは流れとして美しくもあれば作中人物としても、それを観る視聴者にしても納得の度合いが高いものになる一方、時にはやや"自分の意思で決断する"という趣きを損なっている印象もなくはない。
でも、例えばこの6話の優木せつ菜/中川 菜々(それに7話の三船栞子)くらい見事に決めてこられると感嘆が遥かに上回る。

それに至るお膳立ても含めて、実に見事な「選択」だと思わされる。

 

 

そして、下した「選択」の上での、それを宣言する様が。

1期2期通じた作中のキャラクターが作中世界において他のキャラクターたちに見せる演出としても、作品が視聴者に見せる演出としても屈指、あるいはベストのものだったかと思う。

このくだりの画、構図、流れ、楠木ともりさんの演技等々すべてに渡る良さがこの虹ヶ咲2期6話を選出した大きな理由になっている。

 

それと「選択」の上での演出といえば、勿論ライブ場面についても。

 

※6話及び他話数のより詳しい感想はこちら。↓

 

7:『Do It Yourself!! -どぅー・いっと・ゆあせるふ-』5話「DIYって、どこかに・いばしょが・ようやく」

監督:米田和弘
アニメーション制作:PINE JAM
脚本:筆安一幸
絵コンテ:伊礼えり
演出:伊礼えり
作画監督:新井博慧
放送日:11月3日

 

DIY関連のお仕事をされているというのはだいぶ前にご本人のtwitterで情報が出ていたので、以前から楽しみにしていた絵コンテ・演出=伊礼えりさんの回。

色々長くなるので細かな良さの紹介は幾つか挙げるに留めるけど、何よりまず「TVアニメ観るのって楽しくていいなあ」と改めて強く思わせてくれる傑作回だった。

 

※5話及び他話数のより詳しい感想はこちら。↓

 

8:『メイドインアビス 烈日の黄金郷』第12話  「黄金」

監督:小島正幸
アニメーション制作:キネマシトラス
脚本:倉田英之
絵コンテ:小島正幸
演出:小島正幸、垪和等
作画監督:伊藤晋之、大森理恵、川崎怜奈、小里明花、滝口浩喜、竹本未希、田中宏紀、谷紫織、寺尾憲治、福島勇三、橋妙子、山崎絵美
放送日:9月28日

「ファプタは…母のすべてを継いだ…と思っていた
だがヴエロエルコ お前がいた という記憶だけは
ファプタのどこにもなかった
ヴエコ
母は…たとえファプタであっても
お前だけは
お前だけは渡したくなかったのだ」

煎じ詰めればこの台詞、この場面を観たかった。

勿論言うまでもなく、そこまでが見事に描かれ抜いているからこそ輝いてもいた。

ファプタの久野美咲さんは勿論だけど、ヴエロエルコの寺崎裕香さんの演技がとにかく本当に素晴らしかった。

ありがとう、『メイドインアビス 烈日の黄金郷』。

 

またこのアニメが主役たちは勿論、描かれる世界や生き物たち、諸々の脇役たちも緻密に力強く描いていたことは、例えば成れ果てた後は一つ目の姿で描かれるパッコヤンさんを巡る描写からでも伺える。

パッコヤンさんについては他の人のだけれど、こちらのブログ記事をぜひどうぞ。

 

9:『86-エイティシックス-』22話「シン」

監督:石井俊匡
アニメーション制作:A-1 Pictures
脚本:大野敏哉
絵コンテ:石井俊匡

演出:石井俊匡
作画監督:成川多加志、真壁誠、伊藤美奈、波部崇、小川莉奈、稲田正輝、樋口香里、安田京弘
総作画監督川上哲也、杉生祐一
放送日:3月12日

概ね非常に陰鬱な空気の中、同じような展開が繰り返されもするライトノベルの原作1巻を1クールかけてじっくり描いていったアニメ1期は個人的にも全面的に好感が持てたとはいえず、twitterでのやはり個人的な観測範囲内での評判もそれほど芳しくはなかった。

しかし、そうした密度の高い描写は2期まで終えてみれば相応の、あるいは相応以上の意味と意義があるものだった……そう証明するような"花火"を通じて密接に繋がり合う『86』7話&22話の描かれだったと思える。

 

アニメにおいて、花火は非常にしばしば象徴的な形で用いられる。

その中でも、『86 エイティシックス』7話「忘れないでいてくれますか?」&22話「シン」の一組の挿話ほど花火を多義的なイメージの象徴として描いている例はなかなかにないかとも思う(まず、22話で爆散したモルフォの色鮮やかな火花は7話での革命祭の花火のリフレインだ)。

22話は7話の画、場面、台詞、仕草等をしばしば反復しつつ(後述するようにここぞというところで数回、7話のカットが引用されもする)、シンとレーナ、二人の主人公のキャラクターと足跡の核心を見事に描き出している。そのイメージの鍵に花火がある。

何よりまずこの7話&22話の圧倒的な素晴らしさを味わえたから、このアニメ版『86』を観ることができて良かったと思う。

上記についての諸々、詳細は以下のリンク先で↓。

 

10:『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』4話「駆け出しの名探偵
〜ミロワールに想いを寄せて〜」

監督: 金崎貴臣
アニメーション制作:CygamesPictures
脚本:金崎貴臣
絵コンテ:坂詰嵩仁
演出:坂詰嵩仁
作画監督:福元陽介、普津澤時ヱ門、坂詰嵩仁
放送日:2月1日

「今、TVアニメの一つの話数にこんな人たちをこれだけ集めてしまってもいいんだ。そんなことがあるんだ」

という素直な驚きを覚えた、いわゆるSAKUGA回。

ところで一説?によるとこの面子の幾らかは『ゲーマーズ!』OP(の終盤)と重なっていて、

プリコネ2期4話アクション場面最大の華も後半のゴーレム戦であったことからも"あの感じを更に進化させた形でもう一度!"という趣もあったのかもしれないし、別になかったのかもしれない。

なお、ガンガン激しく動きながらもどんな動きか観る側が結構しっかり追える、追いやすい見せ方になっていたり、話も面白いしキャルさんは最高にかわいいしで、作画の魅力以外にも質が高い素敵な挿話でもあった。

なお、アクション描写がしっかり追える感じのものである一方、日常パートで再視聴重ねる前提の詰め込みなり上乗せなりも時折していて、そこもちょっと面白かった。

 

■2022TVアニメOP/ED10選


■2022年TVアニメ10選に入れ切れなかった好きな話数・作品

1:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

2:『王様ランキング』21話&『チェンソーマン』8話

3:『ヤマノススメ Next Summit』7話(、5話)

4:『モブサイコⅢ100』8話(、6話、12話)

5:『BLEACH 千年血戦篇』6話

6:『かぐや様は告らせたい』3期5話、3期12話

7:『ヒーラー・ガール』3話

8:『サマータイムレンダ』15話

9:『パリピ孔明』6話

10:『よふかしのうた』11話-13話

11~:『スローループ』『ラブライブ!スーパースター!!』2期『Engage Kiss』『錆喰いビスコ』『ヴァニタスの手記』2期『であいもん』『ダンス・ダンス・ダンスール』『その着せ替え人形は恋をする』『異世界おじさん』『怪人開発部の黒井津さん』『アークナイツ [黎明前奏]』『転生したら剣でした』『阿波連さんははかれない』『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』他

 

1:『機動戦士ガンダム 水星の魔女』

第一に『水星の魔女』は毎週放映を楽しみにしていた点でも今年のTVアニメ中で上位一桁に間違いなく入り、そして毎週期待に応えしばしば上回る面白さを見せつけてくれたし。感想を書いた量、投じた時間ではあるいは今年一番の作品だったかと思う。

ただどれか一つの話数を今年指折りのものとして挙げる……となると選択が難しい。

仮に何かしら一つの話数を「これだ」と決めて振り返ってみれば、いかにその話数が面白かったか卓抜だったかはきっとどんどん書いていけるに違いないのだけど、そういうわけにもいかない。

時にはそういう作品もあったりする。


2:『王様ランキング』21話&『チェンソーマン』8話

つまり御所園翔太さんの回。

御所園さんの絵コンテ(・演出)回にはユニークかつ圧倒的な構図の面白さがある。

なぜどちらか、特に『王様ランキング』21話が10選から漏れる羽目になったのか自分でも割と謎なのだけれど、入れたいのは山々であっても選んだ作品のどれかを外そうと思うと、どれも外せない。

どうも話数だけでなく、作品全体への思い入れも大きいらしい(自分のことだけど、なんだか「らしい」というくらいの表現になってしまう)。

 

『王様ランキング』はシンプルなデザインだからこその力強い表現を志向したアニメ版の映像の在り方に大いに惹かれ続けながらも。

キャラクターやストーリーには(面白く好ましい点も多々あると感じつつも、諸々引っかかることも少なくないことから)距離をおいてしまうところがあり。

 

チェンソーマン』は原作のファンで、アニメ版は豪華絢爛なスタッフを揃えた実写志向の挑戦的でリッチな作りを興味深く毎週観て、常に前のめりで意欲的なチャレンジをすごいなと感じつつ。

うまくいっていると思える部分への感嘆と共に、それはどうかと思える部分も数多くあって複雑な思いを抱えていたりする。

 

3:『ヤマノススメ Next Summit』7話(、5話)

 

 

 

4:『モブサイコⅢ100』8話(、6話、12話)

 

5:『BLEACH 千年血戦篇』6話

 

6:『かぐや様は告らせたい』3期5話、3期12話

 

 

7:『ヒーラー・ガール』3話

奇抜な設定を打ち出しつつ、本編はごくごく真面目に……そして"TVアニメとして革新的なミュージカル描写をやり続ける。各話、歌唱場面としても趣の違う良さを打ち出し続ける"というはっきりとした野心を表明もし、映像として見せつけていった在り方。

1話から連続で繰り出される一人作画回、そして全話の絵コンテを入江泰浩監督が担当し常に見事に三次元的な広がりとその中を動くキャラクターという、構図の良さを保ちきった質の高さが全般に非常に好印象の作品だった。

 

8:『サマータイムレンダ』15話

 

9:『パリピ孔明』6話

挿話として面白かったし、作品全体として「P.A.WORKS、これからはこういう路線も手掛けていくのかな。そうだとしたらかなり素晴らしい第一歩を新たな人気も獲得しつつ踏み出せていて、良い感じだな」という点でも興味深いTVアニメだった。

 

10:『よふかしのうた』11~13話

 

11~:『スローループ』『ラブライブ!スーパースター!!』2期『Engage Kiss』『錆喰いビスコ』『ヴァニタスの手記』2期『であいもん』『ダンス・ダンス・ダンスール』『その着せ替え人形は恋をする』『異世界おじさん』『怪人開発部の黒井津さん』『アークナイツ [黎明前奏]』『転生したら剣でした』『阿波連さんははかれない』『ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』他

2022年も前項までで挙げた他にも、こうしてざっと並べるだけでも他にも面白いTVアニメが幾つもあって。

 

例えば『スローループ』は地味ながらも堅実に原作漫画と向き合って描かれた佳作として、原作とアニメの描写を比較しつつ毎週とても楽しみに観ていた。

 

ラブライブ!スーパースター!!』2期は最終話の前までは時折引っかかるところはありつつ、なんだかんだ楽しく観ていた。

3期(以降)の制作公表も前提だったろうとはいえ、一応の結末を迎える2期最終話で澁谷かのんの留学話をほぼ茶番とも思える(詳細は宙吊りとなっているけど)扱いにしたのはなぜだろう。疑問でならない。

 

『Engage Kiss』は序盤は自分を含むきっと多くの人に「ああ、アクション作画とかが売りの、話はしょうもないやつかな」と思い込ませながら、徐々に記憶と契約を巡る見事な構成と仕掛けを見せつけていき。

全体を観ればボンクラで始まりそしてボンクラで終わるために必要な手続きをしっかり組み上げて踏んでいったという、ふざけるためにすごく真面目な良い作品だった。

 

『錆喰いビスコは原作1巻を1クールかけてじっくり描く中でのビスコとミロ、主役コンビが世界を駆け抜ける圧倒的な魅力に惹かれ、

原作小説既刊8巻も手に取り、読み進めることになった(面白かった。下記ツイートから原作小説感想連投)。

 

ヴァニタスの手記』2期は画もアクションも構図も、必要な時に必要なだけ美しく華麗で、また、力強くもあった。

例えば19話。

岡村天斎さんが1期2期を通じて6話分絵コンテを担当、勿論アクション面でもその力を見せつけつつ。11話&20話でヴァニタス&ジャンヌのデート回をめちゃくちゃかわいく楽しく描いてみせたのも見どころだった。

また8、15、19、22話で絵コンテを担当した大ベテラン、望月智充さん絵コンテ回のキャラクターたちが激しく動く前の空間の提示の仕方がいつも際立って美しくもあった。

※上記tweetの中で「シリアス」を「シリアル」と誤タイプしている……。

 

老舗の和菓子屋を舞台に京都の四季に折々の和菓子を添え、移ろう季節と変わりゆく人の心、繋がれていく縁、繋ぎ直されてゆく縁をゆったり描いた愛すべき佳作『であいもん』。ここでも望月智充さん絵コンテ回で描き出される空間はとても綺麗だった。

 

ダンス・ダンス・ダンスール』の魅力はまずなんといっても圧巻のバレエ描写。

勿論、原作由来のドラマ部分も良い味が出ていた。

それとバレエを踊る、その踊りを見つめる視線を媒介に主観視点から主観視点へとゴリゴリ繋いでいくOP映像も圧巻であると共にまさにこの作品に相応しいものでもあった。

 

 

『その着せ替え人形は恋をする』は原作からして派手な衣装、装飾で飾られつつ、自分の好きなもの、他人の好きに向き合うというまっすぐな上にもまっすぐな主題を貫く話であるところ。

アニメ版も非常に充実した映像で楽しげに賑やかに彩られつつ、あくまでまっすぐな「好き」に向き合う物語が綴られていた。

時折「喜多川海夢は「オタクに優しいギャル」」だなどと言われているのも目にしたけれど。

あえていうならば喜多川海夢は「オタクに優しいギャル」でなくこちらがオタクの方で、五条若菜は「理解のある彼くん」でなく幼い頃に決めた生き方を理解されないトラウマを抱える彼の「理解のある彼女さん」が喜多川海夢だろう。

ただ、こうして定型をひねった(逆にした)類型を提示しておいて、早速それを自己否定する話をすることになり、なんなのだけど。
喜多川海夢は「理解のある彼女さん」でなく喜多川海夢で、五条若菜は「オタクに優しい彼くん」でなく五条若菜で。そう言えるに十分な在り方を描かれているかと思う。

キャラクターが類型的でしかないのか、観る側がそういう枠にはめてしか観れていないだけなのか、というのは気にするべき問いのようにも思う。

「〇〇に都合が良過ぎるキャラクター」という話もそう見るよりも。多種多様な人間がいる中、各々が自然に振舞うことがお互いにとってだけは限りなく都合が良いというか、他の誰にもおよそ期待できない文字通り「有り難い」ものである、そういう組み合わせの奇跡がオタクだとか陰キャだとかギャルだとか理解ある優しい彼くんとか、まあなんでもいいけど……喜多川海夢や五条若菜がそうであるように通り一遍の類型なんかに簡単に収まらない、自分にもどうにもし難いどうしたってこうある自分、みたいなのを持っているというか手放しようがない人にとってはある種の夢とか希望とか祈りとかに成り得たりもするのかな、それはごく素直に素晴らしいイメージではと。
そこまでのユニークさみたいなのとは良くも悪くも縁遠い身としては思えもする。

好きな話数、場面は数多いけど一つ挙げるなら、例えば11話のここ。

絵コンテ・演出の山本ゆうすけさんは(同じくCloverWorks制作でアニメーションプロデューサーを梅原翔太さんが務める)『ぼっち・ざ・ろっく!』では副監督として全体を支えつつ、3話絵コンテ・演出も手掛けている。

 

異世界おじさん』は画、構図、劇伴、演技を中心に手堅く常に良い感じの愉しい作品。

そして悠木碧さん演じるメイベルがすさまじく良いキャラクターで、かわいい。

 

『怪人開発部の黒井津さん』は土曜深夜、『その着せかえ人形は恋をする』『明日ちゃんのセーラー服』と続いていた誰の目にも明らかな質の高い映像とフェチと諸々の性癖に溢れかえったCloverWorksアワーの後、深夜3時前に毎週配給されてきてくれていた一服の清涼剤(?)。

 

『アークナイツ [黎明前奏]』はあまりにも厳しい世界で理想の灯火を掲げ歩むアーミヤさんと、支えあい共に歩むドクターの姿がゲームをやっていない自分から見ても非常に魅力的だった。

全8話を概ね陰鬱でつらく悲しいことばかりの空気で満たしつつ"しかし、だからこそその中で理想と希望を掲げ歩む魂が輝くのだ"と言わんばかりに描きぬいた気合と迫力が見事だったと思う。

アニメ続編制作も最終話放送直後に発表。楽しみに待ちたい。

 

『転生したら剣でした』は毎週確実に愉しませてくれた、安心感のある良い作品。

主人公の進化を目指す黒猫族のフランさんがひたすらにかわいく、戦闘場面のアクションも(中でも攻撃を回避し反撃する動きと流れが特に)毎回愉しい。

なろう系小説らしく(?)色々チート気味、成長もイケイケドンドンで進むのだけど。フランさんの性格が極めて強気で前のめり、貪欲で誇り高く、責任感も強い良い子で、進化を成し得ておらず差別されている種族の宿願を自ら抱え込んだりと積極的に危機に踏み込んでいくのでダレずに楽しく観ていけるのが原作からの特徴でもある。

また現代人がファンタジーない世界に意思ある魔剣として転生し、いろいろあってフランに拾われ彼女の成長を支えて生きることに決めた「師匠」の目線でフランを見つめるという視聴者の視点もはっきりと定めやすい、もてなしに満ちた佳作だったと思う。

 

『阿波連さんははかれない』は11話まで主人公二人を見守ってきた視聴者に対して、そうしてきて良かったと心から思わせてくれる素晴らしい最終回を見せてくれた佳作だった。

 

ベルセルク 黄金時代篇 MEMORIAL EDITION』はグリフィスとガッツの関係性について、原作を読んだときとはだいぶ違う印象に思えてきて(改めて原作を読み返してみても、やはりこのアニメ版とは大きく違う印象になる。こちらでも明記しておくけど、原作でのグリフィスのガッツへ向ける思いについては下記リンク先で書いている話とは(今も)だいぶ異なる)、そんなところも面白かった。


 

■2:今年の劇場アニメ&web配信限定で面白かったアニメ&OVA

※下記、赤字で記した作品についてはリンク先記事に感想も。

 

○劇場(アニメ)
THE FIRST SLAM DUNK
すずめの戸締まり
GレコⅣ
犬王
ぼくらのよあけ

かぐや様は告らせたい ファーストキッスは終わらない

マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!
GレコⅤ
からかい上手の高木さん
鹿の王
ククルス・ドアンの島
私に天使が舞い降りた!

かがみの孤城
グッバイ、ドン・グリーズ!
ゆるキャン△
君を愛したひとりの僕へ
僕が愛したすべての君へ
オッドタクシー イン・ザ・ウッズ

 

○配信(アニメ)
漁港の肉子ちゃん
地球外少年少女
ARIA The CREPUSCOLO
ストライクウィッチーズ 劇場版
GレコⅠ
GレコⅡ
GレコⅢ
コードギアス 反逆のルルーシュI 興道
コードギアス 反逆のルルーシュII 叛道
コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道
コードギアス 復活のルルーシュ
雨を告げる漂流団地
バブル
海辺のエトランゼ
思い、思われ、ふり、ふられ

 

○今年これから観る予定(12/22時点)
アバター:ウェイ・オブ・ウォーター


OVA/ネット配信/ドラマ等
サイバーパンク: エッジランナーズ
ウェンズデー
戦闘妖精雪風
スプリガン
ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン
スーパー・クルックス
Tekken: Bloodline
TIGER & BUNNY: TIGER & BUNNY 2:
BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー
戦闘妖精少女 たすけて!メイヴちゃん

 

 

 

2022TVアニメOP/ED10選

2022TVアニメOP/ED10選

※楽曲だけでなく映像込みで。

1:「想いのち晴れ」/『ヤマノススメ Next Summit』OP
2:「扉を開けてベルを鳴らそう」/『ヤマノススメ Next Summit』ED
3:「ときめきランデヴー」/『まちカドまぞく2丁目』OP
4:「宵加減テトラゴン」/『まちカドまぞく2丁目』ED
5:「青春コンプレックス/『ぼっち・ざ・ろっく!』OP
6:「Distortion!!」「カラカラ」「なにが悪い」/『ぼっち・ざ・ろっく!』ED
7:「祝福」/『機動戦士ガンダム 水星の魔女』OP
8:「KICK BACK」/『チェンソーマン』OP
9:「はじまりのセツナ」/『明日ちゃんのセーラー服』OP
10:「わたしとみんなのうた」/『ルミナスウィッチーズ』ED

【参照用】2022年OP/ED公式映像リンク集

■1月~

■4月~

■7月~

■10月~

 

1:「想いのち晴れ」/『ヤマノススメ Next Summit』OP

2:「扉を開けてベルを鳴らそう」/『ヤマノススメ Next Summit』ED

まず絵コンテ・演出=伊礼えりさんの『ヤマノススメ Next Summit』OPが今年一番であることは揺るがないし。

同じく『ヤマノススメ Next Summit』のED、毎回内容が変わる一人作画・吉成鋼劇場が別格であることもまた確かだと思う。

 

3:「ときめきランデヴー」/『まちカドまぞく2丁目』OP
4:「宵加減テトラゴン」/『まちカドまぞく2丁目』ED

『まちカドまぞく2丁目』OP/ED。

OPは冒頭があまりにも好きだし、EDは1期同様、原作者による歌詞と作品の相乗効果がすさまじい。

スタッフトークで明かされた"なぜ(1期から)ED曲作詞は原作者担当になったか"という経緯はなかなかに耳を疑うものでありつつ、面白かった。

 

5:「青春コンプレックス/『ぼっち・ざ・ろっく!』OP
6:「Distortion!!」「カラカラ」「なにが悪い」/『ぼっち・ざ・ろっく!』ED

『ぼっち・ざ・ろっく!』OP/ED曲(の数々)は作品のOP/ED曲としてもキャラクター(たち)に沿った曲としてもとにかく非常に好きな上に、単純に楽曲としての良さでは他と比べても群を抜いていて。今年聴いた回数ではアニソンの中でダントツになっている。

 

7:「祝福」/『機動戦士ガンダム 水星の魔女』OP

『水星の魔女』OP「祝福」は作品のテーマ(と思われる、特に親(を代表とする大人、世界、他者)から押しつけられた呪縛からの脱却、解放)を、どの話数の作品感想でも常に意識させられる鮮やかさで提示してみせていると思う。

なお、OP映像終わり近く。

学園コロニーの外観は色合い及び形状からして、おそらく鳥籠あるいは孵卵器として見立てられる上で、今はまだ微睡んでいて、これから起きて殻を破り生きようとする二人の雛鳥といったイメージなのだろうと思う(ここでのスレッタとミオリネのようなポーズは俗に「百合太極図」と呼ばれたりすることもあるようだ)。

「「卵の殻を破らねば、雛鳥は生まれずに死んでいく。雛は我らだ、卵は世界だ。世界の殻を破らねば、我らは生まれずに死んでいく。世界の殻を破壊せよ、世界を革命するために」

(『少女革命ウテナ』)

 

8:「KICK BACK」/『チェンソーマン』OP

チェンソーマン』OP曲として「KICK BACK」を作り出してくる米津玄師は本当にすごい人だな、と。

なお、このOP映像及び1話については(他の人の感想の紹介となるけど)こちらのブログが詳しいかと思う。

※関連


9:「はじまりのセツナ」/『明日ちゃんのセーラー服』OP

『明日ちゃんのセーラー服』OP「はじまりのセツナ」は大きな期待(と不安)、そして憧れと共に蝋梅学園中等部に入学してきた明日小路が全身に好奇心と好意を満たして1年3組の皆に接し見つめ。その姿に否応なく関心を惹かれ皆も明日小路を見つめ……。

アイドルに憧れる少女・明日小路は彼女こそがクラスのアイドルのようだったし、彼女を見つめ見つめ返されている内にクラスの皆もまた、輝かしく青春を謳歌するアイドルたちのようになっていく様を見事に歌と映像で描き出していた。

 

10:「わたしとみんなのうた」/『ルミナスウィッチーズ』ED

『ルミナスウィッチーズ』ED「わたしとみんなのうた」は各話のメインキャラクターの特別イラストが冒頭で描かれ歌唱も担当する趣向が毎回面白くもあった上で。

11話サブタイトルが「わたしとみんなのうた」。

ここにおいてジニーことヴァージニア・ロバートソンにとっての「わたし」と「みんな」、そして「わたしとみんな」の意味の変化を前面に打ち出し、ずっとEDに流れていた曲に特別な意味を上乗せしてきたのが見事だった。

『ルミナスウィッチーズ』は話数単位10選で最初に挙げた5話をはじめ、全編にわたり物語の、それを描く上での構成の美しさを見せつけに見せつけ続けてくれた傑作であるところ、ED曲の扱いにおいてもその技の冴えは際立っている。

 

 

ただ2022年のOP/ED曲及びOP/ED映像には先に上げた10曲以外に出来としてすごいと思えたり、10選に入れられないのがどうにも惜しい好きなものがまだまだ多くて。

それぞれへの感想は割愛するけど、名前だけでも挙げていってみる。

・「WONDERFUL WORLD」/『ルミナスウィッチーズ』OP
・「Colorful Dreams! Colorful Smiles!」/『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』2期OP
・「ハートはお手上げ」/『かぐや様は告らせたい』3期ED
・「My Nonfiction」『かぐや様は告らせたい』3期5話ED
・「鳴り響く限り」/『ダンス・ダンス・ダンスール』OP
・「青100色」/『古見さんは、コミュ症です。』2期OP
・「小喋日和」/『古見さんは、コミュ症です。』2期ED
・「かたち」/『メイドインアビス 烈日の黄金郷』OP
・「Baton」/『明日ちゃんのセーラー服』ED
・「風にまかせて」/『明日ちゃんのセーラー服』4話特殊ED「明日ちゃんのなわとび」
・「罪と罰とアングラ」/『風都探偵』ED

「燦々デイズ」/『その着せ替え人形は恋をする』OP
・「Lost Princess」/『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』OP
・「旅立ちの季節」/『プリンセスコネクト!Re:Dive Season 2』ED
・「堕天」/『よふかしのうた』OP
・「チキチキバンバン」/『パリピ孔明』OP
・「WE WILL!!」/『ラブライブ!スーパースター!!』2期ED

 

 

2022年に観た映画(実写/アニメ)、配信限定作品、ドラマ等まとめ

■2022年に観た映画(実写/アニメ)、配信限定作品、ドラマ等まとめ

 

〇劇場(実写)

RRR
さかなのこ
トップガン マーヴェリック
スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
NOPE/ノープ

アバター:ウェイ・オブ・ウォーター(12/28に観たのでここに追加)
ある男
ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス
ブラックパンサー/ワガンタ・フォーエバ
犯罪都市 THE ROUNDUP
ザリガニの鳴くところ

マッドゴッド
シン・ウルトラマン
ザ・メニュー
ハケンアニメ! 
ブレット・トレイン

 

〇配信(実写)
薔薇の名前
犯罪都市
悪人伝
ブラックパンサー
るろうに剣心 The Beginning』
るろうに剣心 The Final』

 

沖田修一監督作品
南極料理人
キツツキと雨
子供はわかってあげない
横道世之介
滝を見にいく
おらおらでひとりいぐも
モヒカン故郷に帰る

 

○劇場(アニメ)
THE FIRST SLAM DUNK
すずめの戸締まり
GレコⅣ
犬王
ぼくらのよあけ

かぐや様は告らせたい ファーストキッスは終わらない

マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!
GレコⅤ
からかい上手の高木さん
鹿の王
ククルス・ドアンの島
私に天使が舞い降りた!

かがみの孤城
グッバイ、ドン・グリーズ!
ゆるキャン△
君を愛したひとりの僕へ
僕が愛したすべての君へ
オッドタクシー イン・ザ・ウッズ

 

○配信(アニメ)
漁港の肉子ちゃん
地球外少年少女
ARIA The CREPUSCOLO
ストライクウィッチーズ 劇場版
GレコⅠ
GレコⅡ
GレコⅢ
コードギアス 反逆のルルーシュI 興道
コードギアス 反逆のルルーシュII 叛道
コードギアス 反逆のルルーシュIII 皇道
コードギアス 復活のルルーシュ
雨を告げる漂流団地
バブル
海辺のエトランゼ
思い、思われ、ふり、ふられ


OVA/ネット配信/ドラマ等
サイバーパンク: エッジランナーズ
ウェンズデー
戦闘妖精雪風

チルダ・ザ・ミュージカル(12/31追記)
スプリガン
ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン
スーパー・クルックス
Tekken: Bloodline
TIGER & BUNNY: TIGER & BUNNY 2:
BASTARD!! ー暗黒の破壊神ー
戦闘妖精少女 たすけて!メイヴちゃん

 

■感想

○『RRR』

最高に愉しいインドの大作映画。

 

○『さかなのこ』

凄まじい怪作であり、同時に何よりまず初めから終わりまでめちゃくちゃ面白くてめちゃくちゃ巧い映画です。

一心に「好き」を貫くこと(とそれを支えること)の凄み、眩しさ、魔力のような引力、怖さ、暴力性を描き抜く緻密に振るわれる腕力は圧巻。

興味を引かれて観に行くことになった成り行きと感想を、続けて観ていくことになった沖田作品についての話も交えてまとめています。

○『南極料理人

『さかなのこ』で興味を惹かれ観た沖田修一監督作品中のベスト1。

 

トップガン マーヴェリック

書いた感想はこんなだけど2022年に観た映画を好きな順に上から4つ並べるなら

RRR
THE FIRST SLAM DUNK
さかなのこ
トップガン・マーヴェリック

となる。そんな滅法愉しい傑作。

 

○『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(12/28追記)

グランドシネマサンシャイン池袋IMAXレーザーGT3D字幕版で観てきた(これは特に、どこの映画館でどのような環境で観たかが大きく体験を左右する作品だと思う)。

水、海と空の生き物、メカ等々の圧倒的に素晴らしい映像表現。これがせめてもう少しマシなドラマと結びついていてくれれば……と思わずにはいられない3時間強だったけど、それでもとにかく映像が良すぎたので、うん。

 

映像の良さはもう、とにかく映画館、それも設備の良い映画館で観よう!百聞は一見にしかずだね、という。色々と凄かった。

 

一方、ドラマとしては家族と帰属するグループ/アイデンティティーを巡るもので、例えば父親で長としてはジェイク、海の部族の長、そして大佐が各々に山ほどの欠点を抱えつつも奮闘する様が描かれたし、子どもたちは親との関係だけでなく己が何者で何に帰属する存在であるかを問わざるをえない立場に追い込まれたり、自ら探っていったりする。
で、それは普遍的なものであると共に現代の人々、特にアメリカ人にとってうんぬんかんぬん、という多分そんな話なんだろうなとは思うのだけど……なんというか、ドラマは全般にダルい。

 

ただ、その中で大佐とスパイダーのドラマはちょっと例外的に面白くはあった。
パンドラ生活を満喫してしまう大佐、それを唆したり、いろいろな思いを抱えつつ見守るスパイダーも、終盤にスパイダーが直面する葛藤と決断も。

 

ジェイク一家はなによりまずジェイクが、勿論あえて不完全で欠点だらけに描かれているんだろうとは思えつつ、それでもなんかもう、出てくる度にイラつく。
パンドラのナウシカになったキリさんはナウシカだなあ……まあ、そういうのもそれはそれでいいのでは、シガニー・ウィーバー一人二役良かったね、とか思いながら眺めてた。

 

○『ある男』

沖田修一監督『南極料理人』では、堺雅人が微笑みの裏でえげつなく人間性を削られ続ける。

石川慶監督『ある男』では、妻夫木聡が多くを語らず主に表情及び全身で怒り苦しみ煩悶する様をたっぷり味わえる。

どちらもとても素敵な映画。

 

ブラックパンサーブラックパンサー/ワガンタ・フォーエバ

 

○『犯罪都市 THE ROUNDUP』

「ドンソクさんが人を殴ることで真実に迫っていく暴力わらしべ長者の理想形」(by加藤よしき)と評された爽快な映画とそのシリーズ前作について等。

 

○ザリガニの鳴くところ

 

○マッドゴッド

 

○シン・ウルトラマン

 

○ザ・メニュー

 

ハケンアニメ

 

るろうに剣心 The Beginning、るろうに剣心 The Final

 

○THE FIRST SLAM DUNK

 

○『すずめの戸締まり』

まっすぐで、まっとうで、とても良い映画と思う。

 

○劇場版『Gのレコンギスタ IV』「激闘に叫ぶ愛」&劇場版『Gのレコンギスタ V』「死線を越えて

 

○犬王

 

○『ぼくらのよあけ』

ジュブナイルでありファーストコンタクトものであり、そして何よりコミュニケーションの物語で。映画版は何よりまずそこをしっかりおさえ魅力的に描いていたという点でとても良い作品だと思う。


かぐや様は告らせたい ファーストキッスは終わらない

観たいものを観たい映像で観ることができた。何よりまず、そのことが嬉しい。

後にTV放送も予定するものを劇場で先行特別上映という形式からも、画面の印象としては概ねTVアニメから地続きである印象。それに該当する原作の範囲の性格からも、言ってしまえば(例えば3期なら最終回及び特殊EDもあった5話ラップ回あたりと比べても)地味で静かな作品となっていた。
でも、その静かさ慎(つつ)ましさこそは、ここで描かれる物語に非常に正しく沿ったものであったかと思う。
原作15巻収録(150話「普通のロマンティック」及び)今回の題名にもなっている151話「ファーストキッスは終わらない」は個人的に原作で最も好きな二つの挿話のうちの一つ。それが、これ以上は望み難い良さで映像化されていてくれたと思う。


一観客のわがままな希望としては、劇場公開でもTV放送でもOVAでもなんでも形式は問わないので、この制作陣で原作150-151話に並ぶ個人的に思うもう一つのベスト、19巻収録186-187話(雑誌連載表記176-177話)をどうにか映像化してくれたらと願うばかり。

 

細かく言うならば、良かった部分ばかりが無数にあるけども。
とりあえず、原作151話ラストにあたる……それを結ぶ場面、そしてひとつ約束を取りつける場面のかぐや様の姿がなんとも美しかった。
つい何度も観てしまうTVアニメ2期5話「柏木渚は慰めたい」はじめ、個人的にかぐや様が柏木さんに恋愛相談するエピソードの数々を偏愛しているのだけれども、今回もその系譜に連なる挿話(原作では144話「かぐや様は許したい(氷)」)が(今回のエピソード群の中では)ひときわ愉しく描かれ嬉しい。なお、今回上映された話の締めは勿論、作中でも描かれたようにまず作品の最初の最初一巻冒頭を改めて受けてのものだけれど、2期5話「柏木渚は慰めたい」ともある意味連動?するものでもあって、事前に改めて振り返ってみていくとすこし、楽しいかもしれない。


それと、うん、欲を言えばスポットでの挿入でなくしっかり1エピソードとしてぜひ観たかった「かぐや様は告らせたい『インド編』」。なんだかいかにも円盤特典特別映像とかになりそうでもあるけど。

 

マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!

 

○劇場版からかい上手の高木さん

 

○鹿の王

 

ククルス・ドアンの島

 

○私に天使が舞い降りた!プレシャス・フレンズ

 

かがみの孤城

まず、劇場版の素敵な画のアニメ映画だった。

事ある毎に変わるキャラクターの服装(ファッション全然分からないのでおよそ自信持っては言えないだけど、映像となったこの作品においてはここの差異からも、観ていて何かを察し得るのではと思う)、出会いの階段場面の座り方をはじめ、姿勢や体格というか身体の線や印象の描き分け。クライマックスのその部屋で駆け寄り手を伸ばす場面の作画。とても良かった。


ただ、劇伴が頻繁に主張しすぎる映画だった。

たとえば例外的にそうしていたと思えた保健室のように、もっと画と(きちんと編まれた)展開と演技に任せる、観客の受け止め方、理解力、想像力に任せる演出があり得たと思う。というかごく個人的にそうしてくれた方が好ましかった。

 

あと、これは余談なのだけれど。
劇中で主人公・こころがクラスメートたちから受けた仕打ちは卑劣で陰湿で、酷いもので。フリースクールの担当者が、そして親が、全面的に彼女の味方をすることも、そう描くこともきっと、正しい。半端な態度は端的に害になる。
ただ、例えばウレシノの叫びを踏まえると、この作者/作品はあるいは分かって描いているのかとも思いはするのだけれど(この作品しか読んだことのない作家であることもあり、正直、そこは自分にはよくわからない)。

 

"こいつらは今だけに生きてる。視野が狭い。馬鹿だ。成績だって悪い。これからもどうせ変わらない。十年先も二十年先も。ろくでもない未来が待ってる"

 

そうした蔑みはたとえ本人が意識の表面で把握していなかったって、きっと相手に伝わるものと思う。ほぼ例外なく、子どもでも大人でも、人間はそういうことには非常に敏感な生き物ではと思う。
だから、もしも仮に、数を頼みにしたり陰湿な企みでぶつかるのでなく、一対一で正面から「お前、私(たち)のこと馬鹿にしてるだろう。分かるよ。それが気に食わない」とはっきり認めて食って掛かってくれるような相手がいたとしたら、それはきっとある意味でとても良いやつだし、ある意味で少しばかり鼻にかけた「賢さ」なんかより相手の方がよほど知恵深いとも言えるのではとも思う。


かがみの孤城』という作品でそういう視点が「必要」かと言えば微妙かな、別に「必要」ではないかな、とは思うのだけれど……なんというか作品に留まらないある種の人間観とか人生観のようなものとして、子どもでなくある程度以上の年齢なら(あるいはもし可能ならば勿論子どものうちからでも)、そういうこともちゃんと分かったほうが良いのではないかと思えたりもする。

 

○漁港の肉子ちゃん

「普通」に描いていったらあのラストの(幾つもの呪いも解く)祝福、飲み込めないというか。いっそ許せないと思う人すら少なくないかと思う。でも、この作品なら描き、届けることができる。そういう最高の喜劇なのだと思う。


○地球外少年少女

 

コードギアス関連

 

サイバーパンク: エッジランナーズ

"ここ"には私の居場所なんてあるわけないと思えばこそ月=ここではないどこかを夢見た「Fly Me to the Moon」の擬人化なヒロインと、その居場所になりながら、少女が語ったかつての夢を自分の夢としてしまい駆け抜けた少年の物語。鮮やかだった。


○ウェンズデー

 

戦闘妖精雪風OVA

原作とは別物の、零と雪風とブッカーの激重三角関係&SFアクションアニメとして傑作。ある種奇跡的では。

 

○マチルダ・ザ・ミュージカル

端的に言えば『チャーリーとチョコレート工場』が好きな人にはまず間違いなくお勧め。

Netflix12/25公開のこの作品、めちゃくちゃ面白い。

ロアルド・ダール原作、クソすぎる育児放棄両親の下に生まれた「やられっ放しはダメ」が信条のしぶと過ぎる天才少女が、エマ・トンプソン演じる元五輪ハンマー投げ金メダリストで生徒をウジ虫共と呼ぶ管理教育の鬼と激しくバトル。

まずは下のリンク先の予告編

終わり近くにもある、38分あたりの「ハンマー投げ」の場面までぜひ観て欲しい。
そのくだりだけでも抜粋である予告編の更に数倍面白い。
活き活きしたナレーション、弾道を見守りつつの室伏ばりの咆哮(までは上げないけど)、生死確認後の顛末……作品を彩る奇矯さ、ブラックユーモア、生命力、だいたいの魅力が例えばそこで見事に提示されてる。

 

スプリガン

 

○ヴァンパイア・イン・ザ・ガーデン

 

2022年に読んだ小説・エッセイ等&感想まとめ

■はじめに

ここでは2022年に読んだ主だった小説(・エッセイ等)の一覧を挙げた後、感想を書いた作品については個別にそれも紹介していく。

 

その中でもまず、長谷敏司プロトコル・オブ・ヒューマニティ』は自他ともに認める作者の最高傑作ということで間違いないと思う。刊行を喜びたい。
個人的にも『円環少女』や『BEATLESS』をはじめとする小説に対してずっとそうであり続けて来た/行くように長い付き合いになる作品と思う。

 

『本と鍵の季節』(図書委員シリーズ)の続編、米澤穂信『栞と嘘の季節』は「図書委員シリーズ」とも称されている(らしい)通り、登場人物たちの心情及び作品の在り方、読み方に、作中で触れられている本(や映画等々)も大きく関わる……いわばその一冊の中からだけでは解きえない、しかし、極めて魅力的な謎として提示されているものと強く思えた。
なので「そういう読み方」の一例を示せたらと思い、そうした感想を書いてみた。

 

北村薫先生の新刊『水 本の小説』の刊行も嬉しい。
なお、この本についてそうであるように(詳しい)感想の有無や分量等は好みや評価の高低等と必ずしも一致しない。
例えば春暮康一『法治の獣』についてはファースト・コンタクトものとして打ち出したアイディアや軸の鮮烈さ、描写の見事さ等において圧巻で。この一冊で『AI法廷のハッカー弁護士』の竹田人造と共に、ここ最近新しく知った国内SF作家で最も好きでもあるし注目したい人になった。
オンライン開催された『京都SFフェスティバル2022』での対談企画も面白く聴いた。

 

バリエーション豊かな作品をバランス豊かに送り出す韓国の作家、チャン・ガンミョンの『極めて私的な超能力』をはじめとする諸作品に出会えたことも嬉しい。

 

ここ数年、SFアンソロジーでもSF作家・作品の紹介でも、当人の小説でも伴名練の文章に触れ続けているわけだけれど。
なんというか、例えばミステリのジャンルにおいて若い頃の北村薫先生はこんな感じでもあったのだろうかと思わされたりもする。圧倒的、と思う。

 

■2022年に読んだ小説・エッセイ等一覧

※とりあえず、覚えていたり記録を呼び出せる限り並べてみた。

 

北村薫『水 本の小説』
長谷敏司プロトコル・オブ・ヒューマニティ』
米澤穂信『栞と嘘の季節』
ミシェル・フーコー(田村俶・訳)『監獄の誕生』
スティーヴン・ミルハウザー柴田元幸・訳)「夜の姉妹団」(『ナイフ投げ師』収録)
アンディ・ウィアー(小野田和子・訳)『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上・下
チャン・ガンミョン(吉良佳奈江・訳)『極めて私的な超能力』
チャン・ガンミョン(吉良佳奈江・訳)『鳥は飛ぶのが楽しいか』
チャン・ガンミョン(小西直子・訳)『我らが願いは戦争』
チャン・ガンミョン(吉良佳奈江・訳)『韓国が嫌いで』
石川宗生/宮内悠介/斜線堂有紀/小川一水/伴名練『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー
宮内悠介/藤井太洋/小川哲/深緑野分/森晶麿/石川宗『Voyage 想像見聞録』
牧野圭祐『月とライカと吸血姫』本編全7巻&外伝1巻
新海誠『すずめの戸締まり』
アーカディ・マーティーン(内田昌之・訳)『帝国という名の記憶』上・下
アーカディ・マーティーン(内田昌之・訳)『平和という名の廃墟』上・下
神林長平『アグレッサーズ 戦闘妖精・雪風
冲方丁『マルドゥック・アノニマス』7巻
竹田人造『AI法廷のハッカー弁護士』
竹田人造『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』
春暮康一『法治の獣』
安野貴博『サーキット・スイッチャー』
人間六度『スター・シェイカー』

柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』
相沢沙呼『invert II 覗き窓の死角』
円城塔ゴジラ SP <シンギュラポイント>』
円城塔『怪談』
上田早夕里『獣たちの海』
宮澤伊織『神々の歩法』
宮澤伊織『裏世界ピクニック』7巻

白鳥士郎りゅうおうのおしごと!』16-17巻
アンドレアス・エシュバッハ(赤坂桃子・訳)『NSA』上・下
アンドレイ・サプコフスキ(川野靖子・訳)『ウィッチャー短篇集1 最後の願い』
柞刈湯葉『まず牛を球とします。』
伴名練・編『新しい世界を生きるための14のSF』

Genesis 創元日本SFアンソロジーⅤ この光が落ちないように』
日本SF作家クラブ編『2084年のSF』

樋口恭介・編『異常論文』
小川一水『ツインスター・サイクロン・ランナウェイ』2巻

斜線堂有紀『廃遊園地の殺人』

宇野 朴人『七つの魔剣が支配する』10巻
佐藤真登『処刑少女の生きる道』1-7巻
瘤久保慎司『錆喰いビスコ』1-8巻
珪素『異修羅』1-3巻
菊石まれほ『ユア・フォルマIV 電索官エチカとペテルブルクの悪夢』
編乃肌『百物語先生ノ夢怪談 ~不眠症語り部と天狗の神隠し~』
大澤めぐみ『6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。』

若林踏・編『新世代ミステリ作家探訪』
芥川也寸志『ぷれりゅうど』

さかなクンさかなクンの一魚一会』
吉田修一横道世之介
『年鑑代表シナリオ集 '13』
西村淳『面白南極料理人
西村淳『面白南極料理人 笑う食卓』
西村淳『面白南極料理人 名人誕生』
西村淳『面白南極料理人 お料理なんでも相談室』
宮嶋茂樹不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス』
古川日出男平家物語 犬王の巻』 
平野啓一郎『ある男』
辻村深月かがみの孤城』上・下
藤津亮太『アニメの輪郭――主題・作家・手法をめぐって』
佐伯昭志ストライクウィッチーズMemorial Episodeいっしょだよ』

 

 

■感想

長谷敏司プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

現時点の印象として著者の言葉通りその最高傑作であり、自然、自分にとってのSF小説のオールタイムベスト最上位の一角を占める作品と思う。

※随時更新・追加↓

 

米澤穂信『栞と嘘の季節』

「この一冊で読み終えられない作品」だと思う。

幾人もの人物の造形の核心(と思えるもの)や作中の状況や描かれるテーマが、本や映画に託され提示されているのは明らかと思えるから。

ミシェル・フーコー(田村俶・訳)『監獄の誕生』、スティーヴン・ミルハウザー柴田元幸・訳)「夜の姉妹団」(『ナイフ投げ師』収録)は栞と嘘~関連で読んだ本


■チャン・ガンミョン(吉良佳奈江・訳)『極めて私的な超能力』
■チャン・ガンミョン(吉良佳奈江・訳)『鳥は飛ぶのが楽しいか』
■チャン・ガンミョン(小西直子・訳)『我らが願いは戦争』
■チャン・ガンミョン(吉良佳奈江・訳)『韓国が嫌いで』

多彩で、優れたバランス感覚を持つ作家と思う。


■石川宗生/宮内悠介/斜線堂有紀/小川一水/伴名練『ifの世界線 改変歴史SFアンソロジー

収録五編全てが非常に面白い。
中でも特に斜線堂有紀「一一六二年のlovin' life」伴名練「二〇〇〇一周目のジャンヌ」は物凄いと思う。


牧野圭祐『月とライカと吸血姫』本編全7巻&外伝1巻

改変(過去)世界宇宙開発SFの傑作と思う。

第53回星雲賞日本長編部門を受賞。

 

新海誠『すずめの戸締まり』

※映画感想の中で原作小説についても。


さかなクンさかなクンの一魚一会』
吉田修一横道世之介
■『年鑑代表シナリオ集 '13』(『横道世之介』収録)
■西村淳『面白南極料理人
■西村淳『面白南極料理人 笑う食卓』
■西村淳『面白南極料理人 名人誕生』
■西村淳『面白南極料理人 お料理なんでも相談室』
宮嶋茂樹不肖・宮嶋南極観測隊ニ同行ス』

※上記作品群は沖田修一監督の映画『さかなのこ』『横道世之介』そして『南極料理人』関連で読んだ本。映画感想に絡めて言及も。


平野啓一郎『ある男』

※石川慶監督、映画『ある男』を観る前に参考として上記の原作小説を読んだ。

 

■アンディ・ウィアー(小野田和子・訳)『プロジェクト・ヘイル・メアリー』上・下

 

■アーカディ・マーティーン(内田昌之・訳)『帝国という名の記憶』上・下

 

■アーカディ・マーティーン(内田昌之・訳)『平和という名の廃墟』上・下

 

■竹田人造『AI法廷のハッカー弁護士』

■竹田人造『人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』

 

■宮澤伊織『神々の歩法』

 

柴田勝家『走馬灯のセトリは考えておいて』

まず、表題作が素晴らしい。

最後の一文(及びその前の段落)が、特に良い。

文庫版のvtuber届木ウカによる解説(全体に、素晴らしい解説と思う)にあるように

「他五篇で取り扱ったテーマの総括」

であると思えるし。
それこそデビュー作『ニルヤの島』から『クロニスタ 戦争人類学者』、心霊科学捜査官シリーズ、『ヒト夜の永い夢』『アメリカン・ブッダ』といった作品群には共通する手つきなり姿勢なりがあると捉えた上で「走馬灯のセトリは考えておいて」の結びを読む時、改めて良いなとも思える。

 

偽物、怪しげなもの、誤ったもの、いかがわしいもの、実態以上に過剰に扱われがちなもの、しばしば誇張されがちなもの、極端なもの……それでいながら強い思い信仰や盲信、熱狂、執念執着を寄せられるもの。
柴田勝家作品はいつもそういったものを好んで扱いつつ、斜めから突き放したり揶揄する姿勢でなく、まず中に入り込んだ上で。時にフィールドワークを行う学者のように、そうでないときは例えばその中で生きる一員のように接し、描いていっているように思える。
これもまた『走馬灯のセトリは考えておいて』届木ウカ解説の引用になるけど

「柴田先生は「偶像を信仰する客席側の人間」、いわゆる「ファン側」の人間でありつつも、「信仰の構造を把握した上でその構造ごと愛でる」さまを描いて」

いることが特色であり、基本的な姿勢と思える。
そして更には「愛でる」だけでなく、ひたすら「正しさ」を積み重ねていくだけでは描けない、あるいはそれとは異なるやり方で描ける価値(あるいは価値あるもの)、現実の諸問題を描き出す手法を採っているのかと思えている。

 

おそらく、まず「「偽物、怪しげなもの~」を信じ込んでしまっている愚か者のあいつら/賢く理性的で正しく科学的な私/私たち」という二分法を採っていない。
これもおそらく大前提にある認識として……少しばかり距離をおいてみるなら、どうせ私/私たちにしたところで、別の(例えばずっと後の時代からの、あるいは例えばより高次の知性からの)視点から観るならば。「偽物、怪しげなもの~」を(そう意識するにせよしないにせよ)信じ込んでいるし、信じた上でないと生きていけないし、きっと現にそうして生きているわけで。
わかりやすい(?)例なら自由意志とか生きる意味とか、そういうの。そこまで根本的でなくても、なんでもいいけれど……例えば、市民社会における「市民」という概念とかそういうのを挙げてもいいかもしれない。

 

先程言及したようにまず第一作『ニルヤの島』からして(そして『ヒト夜の永い夢』の粘菌コンピュータや『アメリカン・ブッダ』のあれやこれやも)わざわざ念入りに偽物、怪しげなもの~を集めに集めた作品と言えると思う。

 特に作中で重要な役割を果たしているのが「ミーム」という概念で、感想として「こんなにミームを信奉しきった小説、ある意味凄い」といったものも見かけたこともあったりするのだけれど。
作者のプロフィールとして民俗学(、文化人類学)方面を専門的に学んだことが挙げられ、『ニルヤの島』をはじめその作品の多くにもそのことが大いに反映されているようにも見える中、いわゆるミームというものは学術的にちゃんとした研究に値するだけのしっかりとした定義なり諸々の裏付けなりがあるか?について激しい議論がある中、一際激しい全否定にも近い(というかしばしば全否定そのもの)批判は文化人類学方面から寄せられているという話があり、『ダーウィン文化論―科学としてのミーム』あたりを読むとそのあたり"たいへん興味深く"もある。

 というか、たしか新宿Livewireでのトークイベント終了後の懇親会(ここでのイベントでは一般参加可能なこれが大体セットで、イベント申込時に参加不参加を選べる)だったかで「(読んでみて、一部で言われているように「ミームを信奉している」とはとても思えなかったんですが、そこら辺、どうなんでしょう?」と直接伺ってみたところ、諸々の返答と共に勧めて頂いたのが『ダーヴィン文化論』だったりした(たしか2015/3/20のこれ

 だったと思う。『ダーヴィン文化論』の感想記事ブログにアップしているのも2015/3/24だし)。

 

ともあれ。そういったデビュー作からの作風とそこからの足跡を思うと、これも繰り返しになるけど『走馬灯のセトリは考えておいて』表題作、特にその締めくくりは一層、色々と味わい深いものになるとも思う。


また、今は例えば「オンライン福男」のような軽やかなおかしみに大きく振った作品も、「クランツマンの秘仏」(や『アメリカン・ブッダ』収録「「雲南省スー族におけるVR技術の使用例」)のようなやや固めに、そして(ご当人にとって思いがけない流れでも「クランツマンの秘仏」から『異常論文』が始まった云々といった話もあるような)形式で遊ぶような作品も自在に描き送り出せるようだったり、

「走馬灯のセトリを考えて」にしてもその読みやすさエンタメ性を『ニルヤの島』と比べたりすると、刮目すべき変化かとも思えたりもする。

 

 

白鳥士郎りゅうおうのおしごと!』17巻

すっかりサイエンスでスペキュレーティブなフィクションになっていて、しかも面白い……いつからこうなったんだろう。なにやらヒューマニティ・ウィズ・将棋というか対局の様子や棋譜プロトコル・オブ・ヒューマニティだという趣すら。
後書きに曰く、

棋士という職業はAIに「仕事を奪われる」と脅かされた最初の職業です。しかし今は逆に「AIを仕事に活かした最初の職業」になりました。その過程は壮絶なものでしたが、勝負という行為を通じて真剣に向き合ったからこそ意味があるのだと思います。大きな変化が訪れた今という時代に将棋を題材にした物語が書ける幸せを噛みしめた17巻です」

「最初の」あたりの当否は措くとして力強いし、作品に似合いもする言葉だとも思えた。

 

■斜線堂有紀『廃遊園地の殺人』

 

瘤久保慎司『錆喰いビスコ』1-8巻

 

■宇野 朴人『七つの魔剣が支配する』10巻

 

■『Genesis 創元日本SFアンソロジーⅤ この光が落ちないように』

なんとなく全般に、まだ掴めていなかったり元より異質だったりする「感覚」を語りの中で、体験の中で掴む、落とし込んでいく、見出すといった作品が並んでいた印象。
宮澤伊織「ときどきチャンネル#3 【家の外なくしてみた】」の軽やかな語りが特に好き。
表題作となった菊石まれほ「この光が落ちないように」はこの作者さん、作者紹介にもあるし自分で読んだ時の感想もそうだったように『鋼鉄都市』を強く連想させた『ユア・フォルマ』

のようにミステリ仕立てで異質な存在同士が事件をめぐり謎を探り、愛憎を懐き、時に対立し時に繋がる話を描くの得意なんだな、良いなと思った。そういえば、と今月初め刊行の『ユア・フォルマ』5巻読み忘れてたことにも気づいた。年明けに読みます……。

創元SF短篇受賞作として収録の笹原千波「風になるにはまだ」。異なる存在の感覚を繋いでの接触を描きつつ、双方の同意の元、相互に意識して攻撃的・侵襲的でなく、繊細に穏やかに相互に伝え探り、その上での諸々を描く在り方とその手つきとが好ましく、面白いと思った。

 

日本SF作家クラブ編『2084年のSF』

春暮康一「混沌を掻き回す」、マクロとミクロ、科学と神話が交差する描写が良かった。あとは安野貴博「フリーフォール」が楽しい。
坂永雄一「移動遊園地の幽霊たち」も『何かが道をやってくる』が好きなこともあり、いいなと思った。
竹田人造「見守りカメラ is watching you」は「あれ、これどこかで読んだことあるぞ。でも全編書き下ろしとあるし……」と少し悩んだけど、twitterで検索してこの本の無料公開企画で読んだことを思い出した。なるほど。

 

■雑感

関心のあるジャンルの主だった話題作をもう少し追ったり、「この作家の単著はとりあえず全部読んでおきたい」という方面も諸々漏れが出てしまっているので、今後もう少し、できる限りなんとかしていきたい。


一方で、映像化関連や、ジャンルの話題作や過去に読んできた作家や作品の流れの上にあるもので読む作品がほとんど占められてしまっていることも幅の狭さ、偏りとして問題かと思う。

本屋でふと目に止まって気になった本など、幅なり多様性?なりとしても手を加えていきたいなとも思う。

 

なお、以上の話は別に「「良い読書」(?)をしなければ」というわけでもなく(特にそんなことをすべき義理はない)。

こうして一年を振り返って全体の様子を眺めてみると、より面白く本を読んでいくには、より楽しむには明らかに意識的に考えたほうが良いことがある……と思えたというだけの話ではあったりする。

 

石川慶監督、映画『ある男』(『Arc アーク』『蜜蜂と遠雷』)他、感想メモ

 

映画『ある男』及び石川慶監督の過去作『Arc アーク』『蜜蜂と遠雷』、あと妻夫木聡出演『来る』についての感想等です。

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