北村薫関連

北村薫「花火」(『小説新潮』2015年1月号掲載)雑感

小説新潮 2015年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2014/12/22メディア: 雑誌この商品を含むブログ (2件) を見る 『小説新潮』2015年1月号掲載、北村薫「花火」は「円紫さんと《私》」シリーズの《私》が久々に……本当に久々に語ってくれた、「朝…

柳家三三で北村薫。〈円紫さんと私〉シリーズより『空飛ぶ馬』」(草月ホール:2011/12/17)

柳家小三治門下の若手人気落語家・柳家三三による、北村薫原作『空飛ぶ馬』表題作のやや変わった形での翻案劇。 今年三月に「砂糖合戦」、「空飛ぶ馬」と二度上演され人気を博していた(僕は残念ながらどうしても都合が合わず、その時は行けませんでした……)…

北村薫『飲めば都』。

酒を愛する人、あるいは本を愛する人、そして本を愛する人々を幾度もこれ以上無く見事に描きぬいてきた北村作品を愛する人は、きっとこの小説に惹かれずにはいられない。飲めば都作者: 北村薫出版社/メーカー: 新潮社発売日: 2011/05メディア: 単行本購入: 1…

新潮社『yom yom』vol.10(2009/3)北村薫「高み」ほか。

いい号です。 特に印象に残ったものは以下の通り。北村薫「高み」 川本三郎「君、ありし頃」 嵐山光三郎「文士の手土産----深沢七郎のキンピラゴボウ」 万城目学「悟浄出立」 丸谷才一「本の本を紹介する」 瀬名秀明「新刊をヨムヨム 対決!ボンド・フレミン…

『ひとがた流し』〜『秋の花』と響きあう物語------《一所懸命》はどこに残るか。

ひとがた流し作者: 北村薫出版社/メーカー: 朝日新聞社発売日: 2006/07メディア: 単行本 クリック: 17回この商品を含むブログ (104件) を見る物語も中盤の第三章「道路標識」以降、《一所懸命》という言葉が繰り返し出てきます。 ------尊敬する父、類の言葉…

北村薫『街の灯』〜時代という悍馬と人々の駆る馬たち。

街の灯 (本格ミステリ・マスターズ)作者: 北村薫出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2003/01メディア: 単行本 クリック: 8回この商品を含むブログ (45件) を見る ※特に後半、『街の灯』と『リセット』のネタバレにもなりそうな下りがあります。未読の方はご注…

関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』〜もう一人の《私》がいる。

「最後に、セロリを女性に譬えた忘れ難い例を引かせていただきましょう。堀口大學の言葉です。関容子さんの絶妙の筆によって再現されています。ある方について、関さんが、どんな女性だったかを問いました。詩人はこう答えました。 《------中の芯コばかりに…

寺山修司『誰か故郷を想はざる』〜《時代》が抱える病と《個人》について

これも例の3/18にあった北村薫の講演絡みで読んでみた本で、「九条今日子の回想録の前に、まずは本人のものを」ということ。 何よりもまず、一冊の本の中に溢れるように詰まった《自分の歴史を作り直す》屈折した情熱の強さに圧倒された。 巻頭を飾る「汽笛…

『寺山修司&谷川俊太郎ビデオレター』

------すごい。 《言葉》を最大の武器とする大詩人ふたりが、ビデオの映像と声と音によって、《言葉》を、その《意味》を、《存在》のすがたを鋭く問い掛けあっていく。 最初の一往復+谷川俊太郎の二度目のビデオまでは、抽象的で曖昧な呼びかけだったものが…

「東京かわら版」2006年4月号の新真打・柳家三三のコメント。

今月の「東京かわら版」の、今春真打に昇進した五人の噺家のコメントから、小三治門下の大期待株として知られる、柳家三三。 好きなのは<せつない噺>。例えば「つるつる」や「三年目」。失われた時間が描かれているものです。それって取り返しがつかない、…

南條竹則・編訳『イギリス恐怖小説傑作選』〜見事な訳、見事な作品選択。

なぜ「北村薫関連作品」のカテゴリになるかは、2006/3/19の「ミステリ読むこと書くこと〜講師:北村薫×杉江松恋」講演の記録を参照。 そして、この本に収録された作品は以下の通り。 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「林檎の谷」 H・R・ウェイクフィール…

『ファンタジーの宝石箱 第一集 人魚の鱗』

2006/3/19の日記で触れた、池袋コミュニティ・カレッジ講座「ミステリ読むこと書くこと〜講師:北村薫×杉江松恋」で話題になった本の一つ。 収録された作品のうち、印象に残った幾つかの作品について軽く感想を。 川上弘美「ミナミさん」 この人の小説につい…

「ミステリ読むこと書くこと〜講師:北村薫×杉江松恋」〜講演の感想

鳩山邸は『お嬢様は名探偵』の舞台 これは、「NHKのドラマのロケ地がここだった」ということに限定される発言なのか、原作が書かれた時に、最初から新妻邸の姿は鳩山邸をイメージしたものだったということなのか、不明確。どちらだろう? ●「谷川俊太郎と寺…

「ミステリ読むこと書くこと〜講師:北村薫×杉江松恋」〜講演の記録

※注意書き〜講演中に断片的にとったメモと記憶から書き起こしているので、 発言及び話の流れなどに少なからぬ誤りもあると思います。 ご指摘歓迎。 なお、講演の感想はこちら。冒頭、杉江松恋講師から、今回の自分の役割について説明。 北村薫先生のお話と聞…

『会議は踊る』〜「ただ一度だけ」

北村薫『リセット』において、この映画とそのテーマ曲『ただ一度だけ』は------『スキップ』におけるバルザック『谷間の百合』、『ターン』におけるカミーユ・クローデルの生涯と同様に-----主人公の境遇とその想いに深く繋がった作品である。従って、私にと…

北村薫を《読む》ことについて〜二月大歌舞伎の感想の流れから

……ちなみに、私が最も愛する作家・北村薫の作品世界は、正に受け継ぎ、広げていける形で、《そうして《大きなもの》を前にした《個人》がどのようにそれに挑み、何を為すことができるのか》を示してくれるものでもあると思う。大体、歌舞伎を観るようになっ…

和田誠『にっぽんほら話』〜和田誠&25人の名イラストレーター。豪華極まる短篇集

和田誠の25の掌篇に横尾忠則、真鍋博をはじめとする名イラストレーター25人がそれぞれ挿絵を付けた豪華極まる短篇集『にっぽんほら話』---それが380円!講談社文庫---を本棚から取り出して読む。他の多くの本同様、北村薫の推薦によってしばらく前にまとめて…

瀬戸川猛資『シネマ古今集』『シネマ免許皆伝』、瀬戸川猛資・川本三郎・和田誠『今日も映画日和』。

これらをまとめて、3日程前からざっと読む。一応読了。郵送レンタルDVDの予約リスト大拡大。かなり絞っても73件か……。

ラーメンズ第15回公演「アリス」〜ラーメンズが、凄い。

ラーメンズが、凄い。 北村薫の「そこまで言うのか」という手放しの絶賛に肩をドンと押されるようにして、初めてライブで観たけれど、その賛辞は単なる贔屓なんかじゃなかった。 こんなに笑った二時間は、記憶にもなく、有り得もしない。 あれだけ単純な舞台…

キャラメルボックス公演・北村薫原作『スキップ』。

12/11(土)14:00の公演(1階19列7番)で最初に見て、もう数回観たくなり、14日(火)19:00(1階23列23番)、16日(木)19:30(1階7列12番)と観ました。 三回分の感想について、16日の観劇後に出した感想アンケートを一部修正したものを、ここにアップしています…

オペラ『マクベス』(ヴェルディ)野田秀樹演出

2004年5月初めに、野田秀樹演出・オペラ『マクベス』を観た。 すると、「砂糖合戦」で《私》が、イタリア統一の空気と重なり「結びのところが一層華やか」と語ったそのフィナーレにおいて、《称えられるのは王となるマルカムではなく、マクダフである》こと…

小川未明『心の芽』

自信はあまりないのだけれど、「空飛ぶ馬」の童話談義で触れられたのは、この作品ではないかと思われる。 そして、その話の展開は、《私》が覚えていたものとはかなり異なる。 確かに少年は一生、不具のまま生きることになるが、その後の展開は……。 フロベー…

フロベール『ブヴァールとペキュシェ』『紋切型辞典』

後に《私》自身がそう語るが、この本を読んでいるということは、「砂糖合戦」の時点で少なくとも『ボヴァリー夫人』は読んでいて、そこで次を読む強い興味も持ったいたということ。 そうした少女が「ピノキオさん」を観ているわけだ。 なお、『ブヴァールと…

サッカレー『虚栄の市』

この小説から、一節が引かれるとするならば、次のくだりになるだろう。 「あなたは勝とうと思って賭けるわけじゃありませんでしょう? わたしだってそんなつもりじゃありません。わたしが賭けるのは忘れるため、でも、忘れることなんてできませんわ。昔のこ…

日本探偵小説全集5『浜尾四郎集』

『殺された天一坊』は珠玉の傑作。 その作品と『殺人鬼』は、一冊の本にどうしても併せて収録したかったのだろう。 後期クイーン問題との関係について、一度考えてみるのも面白いだろうと思う。 『街の灯』の桐原道子。「彼が殺したか」の登場人物と同じ名前…

リラダン『ヴェラ』『ポートランド伯』

その代表作の一つ『未来のイヴ』を併せて読むと、よりわかりやすい。 《求めて手に入らぬもの》がある。 そして、仮にそれを得ることになったならば、それは手中にした途端、それは跡形もなく消え去るか、求めていたものとは違うものとなる。《そうなるべき…

武田泰淳『才子佳人』『十三妹』

併せて読むと、《私》があの引用で何を言いたかったかが伝わってくる。 自らがそういう存在であると知ること、ある時わかってしまうこと。 《知》の哀しみ。

デヴィッド・ロッジ『交換教授』

まず何より、読んで底抜けに面白い本。 『文学部唯野教授』を思い起こさせる。 そして、解説にあるように、原題は『Changing Places』。 《私》が「あの人」と隣合わせでペルリオーズの『レクイエム』を聴くことになった経緯、そしてそのことで《私》が感じ…

F・デュレンマット『ロムルス大帝』

カミュ『カリギュラ』を思い起こさせる。 《私》がオペラ『マクベス』の感想として語った、《個人》VS《世界》という構図との関わりについて、いずれ考えてみたい。 『空飛ぶ馬』が世に出たのが、1990年。 「アド・リブ」の主人が役者だったのは、「二十年も…

『廬生夢魂其前日』『十四傾城腹之内』

二つセットで、『黄表紙廿五種』を事実上指定。編者が巻末で「我が出版界空前のことであり、また到底マネの出来ぬ一種の組版芸術だと自信する」と誇る通り、「ともかく理屈抜きで面白かった」というためには、この本で読むことが必要。例えば、同じ黄表紙作…