プライドと偏見〜最高!完璧!満点!!

感想も何もない、もう、この映画の全てが好きだ。もう、完璧!満点!

ポランスキーオリバー・ツイスト』だと、いろいろ注釈がついてしまうんだけど、これは何の留保もなし!!

例えば『オリバー・ツイスト』が、「あー、それはもう、オリバー役の子供は評判どおりかわいいよ。それにドジャー役の子役も巧い上に実にもう生意気そうなのが良くて、むしろこっちの方がより注目かもよ? そしてロンドンの霧!暗い話になれば雨!緊張が高まれば雷!ああ、真夜中のロンドン橋! とにもかくにも、陰影、明暗の効果でレッツゴー。そうそう、扉があれば、やっぱりその隙間から血が流れてこなくちゃダメだよね。おぉ、こいつぁなんともポランスキーだ!! いいんじゃない?本当に実にもう、端でも真ん中でも、どこを切っても実にポランスキーで。いや、皮肉でなく、本当にこれはこれで結構いい映画なんだって」という具合にどことなくやさぐれた感想になってしまうのと大きく違って、これはもう、何の留保もなく、とにもかくにも最高だ!

何よりカメラワークが素晴らしい。

まず、他の何よりもそのカメラワーク。時にベタ過ぎるようなやり口も含めて、好きで好きでたまらない。エリザベスが伯父夫婦とともにダーシーの屋敷を訪れた場面での真上から撮り流す構図なんて、それだけで嬉しくなってしまう。最初の舞踏会の観客の目を揺らしに揺らす長回し、その中でひょいと現れてホイと人込みに紛れていくダーシー、という映像なんかももう、愉しくて愉しくて……。

キーラ・ナイトレイって本当にいいよね。

あのポスター。あの長い長い首筋。序盤の顔をくしゃくしゃにする笑い。アップでの眼の力。相当部分"素"なんじゃないの、という気の強さ。画面の中心にいないときにむしろ強調される存在感。ダーシーの屋敷で美術品を見て回るシーンの感情表現の瑞々しさ。ドナルド・サザーランド演じる父への甘え振り…。
演技の巧拙云々より、ともかくスクリーンに描かれた世界にぴったりと合う。笑うとけっこう顔が崩れてしまうけどそこに品のある愛嬌があるところとか、コスチューム映画が実に良く似合うところから、ヘレナ・ボナム・カーター(トレバー・ナンが監督した大傑作『十二夜』のオリヴィアなんて最高!シザーリオの文句の相手としてこれだけ相応しいオリヴィアはいなかっただろう。最近だと『チャーリーとチョコレート工場』での母親役もよかった。出て来ると殆ど無条件に贔屓したくなる女優------例えばそれが、ティム・バートン版『猿の惑星』であっても。。。)が連想されたりした。つまり、とにもかくにも好きだっ!ってことだ。貧弱?アゴ?胸が小さい?むしろ、それがいいんじゃないか……。

マシュー・マクファディン演じるダーシーだって悪くない。

常識を思いっきり蹴っ飛ばしてズカズカと二本の足で歩いて男の家までやって来たエリザベス------その場面のカメラワークもいい!------を迎えての二度目の対面、その時の眼の表情なんて、実に分かり易くて、でもそれがいいじゃないか。何というか、ピーター・ジャクソン版『キング・コング』のエイドリアン・ブロディが演じた優男(美女が見ていないところで健気に頑張って頑張って頑張り続ける姿には、つい思わず応援してしまいたくなった)にも通じるものがある。ただ、「これじゃこの人って、高慢というよりも、不器用なだけじゃないか」という気はしたが。それにあんまり皮肉屋というわけでもなさそうでもある。だが、むしろ、そこがいい……(またか)。

ブレンダ・ブレッシンのベネット夫人、トム・ホランダーのMr.コリンズは実に立派というほかない名演。

野暮・俗悪・無神経の三点セットで完全武装したタマラナイ人物像を演じつつ、観客を決して不快にさせず、余りにえげつなく笑いをねだることなく楽しませる軽妙さというのは、相当の腕がある役者でないと出せない実に英国的な味わいだ(昨日試写会でみた『プロデューサーズ』のどこまでもアメリカ的な笑いと見事に対照的で、比べてみるとそれぞれがより一層愉しくなってしまう)。

御大・ジュディ・デンチ

伝統に凝り固まったお貴族様の老婦人を演じたジュディ・デンチ。その圧倒的な存在感と巧さが云々、というのは「イチローが今年もヒットを量産」というのと同じくらい余りにも当たり前のことで、いちいち何か書くまでもない。

作品の最後も締めるドナルド・サザーランド演ずる一家父親も勿論良かった。

これも、随分皮肉好きの部分は削られているけれど。

組み合わせの妙

そして、これらの配役の組み合わせが各々の演技以上に絶妙で、自己主張し過ぎない音楽とも相俟って、とにかく引っ掛かりなくスクリーン上の世界に引き込んでくれる、嬉しい効果を発揮している。


結局、最初から最後までただただベタ褒めで終わってしまったが、だって本当にいい映画なんだから仕方がない。
これはもう、公開中にもう一度観に行くしかない!!


ついでに、amazonでサントラ注文して、英語版公式サイトで壁紙落として、さて、と・・・。