椎名高志『絶対可憐チルドレン』〜あの椎名高志が完全復活。

椎名高志絶対可憐チルドレン』(1)〜(3)読了。

まず、主要人物の名前が面白すぎる…。
主役になる強力な10歳のエスパー少女三人の名前が、それぞれ「明石薫」「野上葵」「三宮紫穂」で、それを指揮する20歳の天才学者が「皆本光一」。エスパーの特務機関のボスが「桐壺帝三」で、その秘書が「柏木朧」。んでもって、三巻で出てくる敵役は「兵部京介」!中でも「三宮紫穂」という名前の合成過程は少し興味深いぞ……?ゲストキャラで、16歳のエスパー「梅枝ナオミ」と36歳のナイスミドル(いつの時代の表現だ)「谷崎一郎」のコンビなんてのも出てくる。

ともあれ、そんなネーミングの面白さよりも何よりも、あのギャグ漫画の記念碑的傑作『GS美神』『(有)椎名百貨店』の作者が数年のスランプを経て完全復活したのは間違いないようだ。

この人の作品に一貫してある、決して人をひどく嘲笑わない明るい笑い、あけすけなようで決して下品にならない健全さ、シリアスで押し切らずユーモアを織り交ぜずにはいられない(この言葉が適切かどうかはわからないが)《恥》の感覚、前面には出ないがほとんど全面に渡って埋め込まれているという(冒頭に書いたネーミングの件なんて正に典型)硬軟取り混ぜたペダンティズムとパロディ精神-------昔から、どれもこれも好きでたまらなかった。
しばらく不調が続いているのを見ているのは少し辛く、しばらくその新作を途切れ途切れにしか読んでいなかったが、またこんなカムバックを見せてくれたのは本当に嬉しい。今後が楽しみな作品。

なお、名前の元ネタ等をまとめているページがあったのでご紹介。

Wikipedia日本語版:絶対可憐チルドレン

正直いって、気付けなかった要素も多い。そうか、バビル二世か・・・。
ただ、なぜあそこでナボコフでも他の誰でもなく大谷崎の登場となるのかといえば、「谷崎源氏」のためだ、という情報も加えた方が良さそうだとも思った。マトモな眼とアタマを持っていればいうまでもなくわかることだろうが、そこまで考えて出していることからも伺われるように、作る側は明らかに谷崎潤一郎が偉大であることを自明の前提としてパロディ化している。もしも、あの話を「文豪といっても単なる変態野郎だとからかっている」などというヤツがいたら、それはただ単に、そんな風に読む側が下劣なだけだ。