『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』〜その大仕掛けを理解できるか否か。


スパイク・ジョーンズ監督、チャーリー・カウフマン脚本のコンビによるこの二作品は、共に大きな仕掛けのある映画で、それが理解できるか出来ないかで楽しめる割合が全く違ってしまうと思う。

マルコヴィッチの穴』〜予想を裏切られる驚きと快感!

マルコヴィッチの穴』は勿論、インパクトのある導入と悪夢的な映像の魅力も大きいけれど、序盤にシナリオの流れを、「ああ、落語の(以下、一応ネタバレのために反転指定)「あたま山」と同じパターンでオチか」という予想(外国にだって似たような超論理が展開される話のパターンはあるだろう。仮になくても同じような予想はするだろうとも思う)を裏切り、そのオチをあっさり中盤で導入してしまうことに驚かされた。まだ更にアイディアに続きがある! ということが凄い。
マルコヴィッチ本人があの行動をあのタイミングで決断したとき、思わず「えっ!」と言ってしまった。そういう予想をしつつ観ていたかどうかで、面白さが大きく変わるだろうと思う。

アダプテーション』〜世界の反転に気付けるか?

次に、『アダプテーション』。
まず、「スランプに苦しむ、ヒット作『マルコヴィッチの穴』の脚本家が何とか次回作に取り組もうとする、だが…」という売り文句と導入が実にユニークなわけだが、この映画、下手をすると、本当に「実際の脚本家の私小説じみた話」だと思ったまま観終わってしまう人がいないだろうか?
無論、そんなわけはなく、ある時点から、ストーリーがそれまでの世界に対する反世界として展開し始めるのがミソ。そこに皮肉で軽妙な味がある。
ちなみに、この年のアカデミー賞脚本賞ノミネートはこの映画に関して相当洒落た真似をしでかしてくれたが、どうせなら受賞させればもっと面白かっただろうに、と思う。それだけの価値はある脚本だったのでは?