桜庭一樹『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』〜題名の比喩に全てが集約される作品


とにもかくにも、「砂糖菓子の弾丸」という比喩に集約された力が、忘れられない印象を残す。ただ、その象徴的な印象だけ残って、後は綺麗さっぱり消えてしまう気もするし、それでいい作品だとも思う。

また、手垢がついた初歩の初歩であるトリックや概念の数々が、正にそれだからこそ作品に似合うという構成の良さも目立つが、秋山瑞人イリヤの空、UFOの夏』ほど、えげつなく上手くはない。というか、実は技術などよりも、スタンスが根本的に違う。
……こういう作品は、《えげつなく》上手かった方がいいと思う。素直に巧みであってしまうと、すこし毒になり過ぎる。作品がそうして力を持つという、その力の在り方は、ちょっと性質が良くないと思えてしまう。


それと、このイラストは作品にあまりにそぐわない。絵柄云々以前に、この作品にイラストを添えるなら、決して登場人物そのものは描かず、彼らを象徴する物------2リットル入りのミネラルウォーターのペットボトル、5000円はするタオル、鉈、砂糖菓子------を描くべき。無論、レーベルの性質上、出来る相談ではないだろうけれど。

ただ、こう書くだけ書いた上で、とりあえず、『少女には向かない職業』の購入も決める。もう一作くらい-----たぶん、それ以上多くも少なくも無く------読んでみたい作家。