谷地恵美子『明日の王様』〜「でも このサルは 脚本を書くサルです」


「はじめは、話題のサルでもいいです。

 でも

 このサルは 脚本を書くサルです。」

数日前、なんとは無しに買った一巻が面白かったので、残りを買った。
今日、それが届き、続きを読むうち、次第に引き込まれた。

そして------四巻の半ばのこの台詞で、完全に参ってしまった。そして、そこまで走ってきた物語は、そこを境に飛翔する。そして、物語が終わるまで、墜ちることがなかった。そここそが、明確な分岐点だと思う。その一コマを読んで、およそそんな場面ではないのに、泣きたくなった。

……数年前から、本を読むとき------小説でも、漫画でも------印象深いページはその深度に応じて、ページの角を折る。後で読み返すとき、その数や折り方が、その時の印象をよく伝えてくれる(本の美観は随分損ねてしまうし、そんな状態になった本を見ると嫌がる人も少なくないかとも思うけれど)。5巻、6巻は、めちゃくちゃになってしまった。本の背と反対側が、倍以上の厚みの差がある。自分でも、ちょっと呆れてしまった。そんなことが示すように、あの場面の後にこそ、物語は大きく広がっていく。しかし、読後、何より強く思い返されるのはやはりあの一コマだった。私にとって、『明日の王様』はそんな作品だ。



以下、雑文。