2005年休刊の『ヤングユー』という雑誌について想像してみる〜谷地恵美子『オモチャたちの午後』〜『明日の王様』への感想などから


なお、上記の感想で「作者・編集者の」としたのは、『オモチャたちの午後』を読んで、上記の欠点を諫めないようであれば編集者としてどうかと思うし、実際、同じような指摘をしただろうと思うからだ。
この作品の掲載誌『ヤングユー』は2005年に休刊になってしまったということだが、谷地恵美子の他にも逢坂みえこ『ベル・エポック』、羽海野チカハチミツとクローバー』、榛野なな恵Papa told me』といった、いずれも優れた作家の、それぞれ代表作といえる作品を連載させていたという。そんなことは作家だけでなく、編集も相当優秀でなければ出来なかったことに違いない。そう考えたとき、あれだけの作品を揃えても、休刊にせざるを得なかった編集部は、さぞかし無念だったろうと思う(でも、そう書く自分自身、一度も買わなかったなぁ…漫画も小説も、滅多に雑誌では買わないので……)。

……ただ、改めて振り返ると、確かにどれも「連載」として読むよりも「単行本」でまとめて読みたくなる種類の作品だなぁ、とも思いもする。また、すぐに爆発的に売れる、というより長いスパンで徐々に評価が高まりそうな作品が実に多い。さっき例に挙げた作品など、全てそうだろう。
しかし、あれだけの作品が生まれてくるのを前にして、「もっとすぐに売れる作品を!」などとは言えるものではない。言わざるを得なくとも、本当には言えるわけがない。「現実に優れた作品を生み出しつつ、生み出す環境をビジネス的にも維持していく」ということの困難と辛苦は察するに余りある。しかし、だからこそ、『明日の王様』のような作品が生まれた時、作者のみならず担当編集者やデスクなど、作品を共に生み出した人々の喜びもまた、無責任に批評する部外者の想像など、到底及ぶところではないのだろう。
そう考えたとき------これこそ無責任な感想の極みだが------その苦難や痛恨の思いさえ、たまらなく羨ましいと思う。