萩尾望都『バルバラ異界』〜SF漫画の最高峰『銀の三角』の本人による再構築?


バルバラ異界 (1) (flowers comics) バルバラ異界 (2) (flowers comics) バルバラ異界 (4) (flowers comics)

読むうちに、どうしてもSF漫画の金字塔『銀の三角』を思い出さずにはいられなかった。
ただ、説明をあえて排除し、詩情溢れる言葉と煌びやかな画で感覚と観念の一大迷宮を築いたのが『銀の三角』。
一方、『バルバラ異界』では、同様のテーマについて、多少説明が親切で、わかりやすくなっているような気配があるが、それはむしろマイナスだと思える。


また、あの『銀の三角』の冒頭を飾ったラグトーリンの歌ほど美しいものは、さすがに再び生み出すことは出来なかった。
その歌、中でも「夢も歌を覚えた」という一節だけでも、『銀の三角』の唯一無二の価値は揺るがない。


       神々よ
               今すこし

           こちらに目を
           そそいでおくれ


   あなたの金銀を
         打ちくだいてつくった世界は

            あなたの夢の
           一節かもしれぬが


   夢も歌も覚えた


  耳をそばだてておくれ

              夢のまひるに
            金銀の

           四角三角
            四角三角
         四角六角
              六角無限角
                恒久沙角

           深い
          記憶の彼方から来る
                符号


            あなたの無限に
           わたしをとらえておくれ

※追記
なお、3/10の池袋ジュンク堂でのトークセッション「萩尾望都×三浦雅士「出生の秘密をめぐって」の質問時間に、直接ご本人に『銀の三角』と『バルバラ異界』の関係を伺わせて頂いた所、「そういったことは意識していなかった」とのご返答を頂いた。
ただ、それでも私には、作者が意識していたにせよしていなかったにせよ、この作品は『銀の三角』という稀有な物語のリフレインだと思えてしまう。