『ナルニア国物語』〜肝心な部分を落とし続けている映画。脚本も悪い。


脚本がいちいちうるさ過ぎて、その鬱陶しさのせいで面白みが損なわれている。
予告篇だけ観ておくだけの方が良かったかもしれない。


原作は小学生の頃に読んだか読まないか曖昧なくらいでよく知らないので、それとの比較は出来ないが、幕開けから長く続く兄弟四人の現実世界での背景描写といい、次男の性格の念入りな理由付けといい、ご丁寧なことだと思う。そこらへんで《納得》させてくれなくてもいいし、それだけやっても《納得》させられなければ勿論、うまくいった場合でも、《異世界》の鮮やかさを削ぐ結果になり、トータルで大きなマイナスになるやり口だと思える。


なお、映像面では、二つの最重要とも思える場面------タンスの裏から別世界へ迷い込むところと、冬の世界の変貌が進行していく描写------のインパクトが薄い。ありていに言えば、演出が下手。『もののけ姫』のシシ神の歩みと共に植物が芽吹き、そして枯れてゆくという場面の描き方の巧さが改めて思い起こされる。
また、その迫力で画面を圧するべきアスランに、余りにも貫禄が欠けている。どうみても、本当にただの喋るライオンにしか見えないのはひどい。


ただ、末娘のルーシーを演じた子役の演技はとてもいい。最初は「どことなく、十年以上昔に飼っていたパグ犬(♂)に顔が似てるなぁ」などとひどいことを思っていたけれど、観ているうちに段々好きになった。
また、ビーバー夫婦が登場する場面に限定していえば、細やかな演出がうまく働いていると思う。ディズニーらしさがいい意味で出たキャラクター。
エドマンド役も------しつこい脚本はともかくとして------役者としては個人的に結構好きだ。
そして、戦車に乗って迫り来る"白い魔女"の姿とその二刀流の殺陣も、なかなか愉しく観ることができた(ただ、あれだけ暴れまわった後で、最後は余りにもあっさりやられてしまうのはどうかと思う)。また、全体的にコスチュームも見栄えが良く、特に四人の子供の現実世界、ナルニア到着、戦場、戴冠式と、状況に応じての衣装の変化はそれぞれの俳優にも、場面の要請にも良く合っていたと思う。

まとめるならば、個々の要素にはいい部分も無数にあったのに、映像として肝心なところがイマイチで、要素を繋ぐ脚本の出来が悪いために、総合的にみて駄作といわざるを得ない作品になっていると思う。