この本を買ったのは、「小川一水の『老ヴォールの惑星』を差し置いて、ＳＦ大賞をとったのは一体どんな作品だってんだ？おい」というあまり穏やかでない興味からだったが……収録作品のトップバッター、「デュオ」を読んだ時点でもう、すぐに土下座でもなんでもして謝りたくなった。それをも越えるような出来の表題作を読み終えた時点では、もう、何と言ったらいいのか……。
それにしても、小川一水って人は、なんて不運なんだろう。『第六大陸』の時には『マルドゥック・スクランブル』に阻まれて、今度はより直球そのもの、かつ、おそらくジャンルにこだわらない一作品としてもより優れた作品で勝負したら（これだったら、冲方丁のどんな傑作にも、少なくともＳＦという土俵では負けなどしなかっただろうに）、こんなとんでもないシロモノにぶち当たってしまうなんて……。
ＳＦについては他のジャンル以上にド素人の度合いが強く、他にどんな優れた作品が存在するのかろくに知らないのだけれど、よっぽど化け物じみた作品がない限り、これは国内ＳＦのオールタイムベストの上位に入る作品だろうと確信する。神林長平の『戦闘妖精・雪風』や『プリズム』、山田正紀『神狩り』、光瀬龍『百億の昼と千億の夜』、萩尾望都『銀の三角』といった作品とも十分張り合えてしまえそうだ。
詳しい感想は（この作品を前にして何か書けることがあるかどうかは分からないが）、出来るものなら、後日まとめてみたい。
ただ、とりあえず『グラン・ヴァカンス』はすぐにamazonで注文した。当たり前だ。こんなの読んで、他の作品にも手を出さずにいられるわけがない。凄えや！！
