野尻抱介『太陽の簒奪者』〜これぞハードSF。その侠(おとこ)っぷりに惚れた。


太陽の簒奪者 (ハヤカワJA)

「ブンガクな文章? 糞食らえだ。俺が書きたいのはそんなもんじゃねぇ!!俺のSF魂を見せてやる!!」と言わんばかりの男気溢れる態度が実に爽快な作品だ。ここまで割り切った姿勢は------断じて皮肉ではなく------清々しい潔さに満ちていて、はっきりいってハードSFは全般的に苦手で肌に合わない私でさえ、好感を持たずにはいられなかった。だからこれはもう、「SFが三度の飯より好きだ!」という人にとっては、猛烈な愛情を表明せずにはいられない一冊だろう。
明治学院大学社会部助教授だという(その人のホームページを見たところ、今はめでたく教授に出世されたようだ)稲葉振一郎の解説があまりにも見事で、それを読んだ上で私が更に書けることなどろくに思いつかない。なので、素直に諦めることにしようと思う。
ちなみに、『エイリアン』『ミクロの決死圏』などの映画系小ネタも愉しく、かつ、何となく嬉しいものではあった。