『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』〜品良く明るいユーモア。そして、声優陣の人選が偉いッ!!


とにもかくにも、グルミットがいいなぁ。
誰もが挙げる場面だと思うけど、やっぱり自分で育てた巨大瓜を撫でる表情、そして、それを囮につかうことを決心するところがたまらなくいい。それに次ぐものとしては、Dog Fight(!)は全て名場面だけど、やっぱりコイン切れ⇒再投入の一連の動きがクレイアニメ史上に残る名場面かと。
喋らないグルミットの、口以上にモノを言う眼や表情や全身のジェスチャーと、その絶妙の間が実にイギリス的な匠の技(映画化したのはハリウッドのドリームワークスだけど)。いいよなぁ、コレ。


勿論、ホラー映画関連を中心にした小ネタも楽しめるけれど、どれも《分からなくても楽しめる》ように明るく配置されているのがいい。
ザ・フライキング・コング、サンダー・バード、ゴースト・バスターズといった辺りはそのまんま。怪物の恐怖を盛り上げるオルガン伴奏、その正体を探る問答の度に稲光、といったお馴染みの手法へのツッコミ……数え上げていけばキリがないんだろうけれど、それはあくまでそれぞれ調味料の一つ。
「これが分からなければ、作品が楽しめたとはいえないぜ!!」という核心的なものはあえて置かれていないことが、品の良い余裕と洒落っ気を作品に与えていると思う。


そして、声優陣の充実振りが凄い。
悪役はレイフ・ファインズ!(そういえば、某世界的超々人気映画シリーズの悪の親玉役にもなってたなぁ、この人。個人的にはこの人の弟の方が好きな役者だけど)
ヒロインはヘレナ・ボナム・カーター!!!(『鳩の翼』!『眺めのいい部屋』!!そして何より、トレヴァー・ナンの傑作映画『十二夜』のオリヴィア!!!最高ッ!!現役の映画女優で一番好き)
素晴らしい。実に素晴らしい。本当に素晴らしい。キャスティング担当、偉いッ!!


なお、映画館で観るにせよ、DVDで楽しむにせよ、いずれにしてもスタッフロールは最後まで観てみよう。
映画に関するとある規制の生んだ名物文句も《そのままの形で》パロディ表現になっているので(だからこそ、あそこだけ日本語字幕がちゃんと出る)。


ちなみにこの作品、アカデミー賞選考で「『ハウルの動く城』を破った作品」としても有名だが、そりゃあ、そうだろう。
ハウルの動く城』、序盤のハウルに手を引かれて空を歩くシーンのセンス・オブ・ワンダーは圧倒的だったけれど、後はシナリオの意味不明の迷走ぶりが邪魔で、素直に楽しめる作品になっていなかった。子供にとっても大人にとっても、『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』に軍配が上がるのは当然だと思える。


ただ、日本のアニメーションといえば、宮崎駿だけじゃない。大友克洋押井守------といった人たちのことはさておき(だって、この人たちの最近の映画、『スプリガン』『MEMORIES』『メトロポリス』『スチームボーイ』、『人狼』『アヴァロン』『イノセンス』と作品としては駄作しかないし(ただし、『イノセンス』の「択捉祭り」(とでも呼べばいいのかな?)のシーンだけは強烈な例外)……『立喰師列伝』はどうかしらないけど)、『ガラクタ通りのステイン』『ポピー・ザ・ぱフォーマー』の増田龍治が映画を作れば、『ウォレスとグルミット』にも対抗できる!!-------きっと。多分。

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「ステイン」なら第09話「毛糸」や第14話(スペシャル版)「ハーモニカ」(というか、「ステイン」ならどれをとっても素晴らしいので「どれでもいい」ともいえそう)。
「ポピー」なら第14話「グレート・マジック」や第20話「催眠術」、もう少し挙げるなら、第04話「ナイフ投げ」、第21話「怪力芸」、第37話「独り」。
それらはもう、ちょっと異常なくらいの傑作だと思う。