ジョージ・R.R.マーティン『タフの方舟Ⅰ 禍つ星』(酒井昭伸・訳)

タフの方舟1 禍つ星 ハヤカワ文庫SF
しばらくのうちは「なんだかうるさいジャーゴンだらけで、人物造形もステロタイプなイマイチな話だなぁ」という印象。
ただ、表題作の中盤あたりから、これがひたすら実に魅力的な主人公タフことハヴィランド・タフィを描く、キャラクター小説なんだという認識で愉しめるようになった。
もちろん、誰もが一読してわかるように、毒のある社会批判という側面も強く持っている作品でもあるが、それが声高に語られず、慇懃無礼な(!)ユーモアをもって描かれることが(《愚かさ》は常にヒステリックな絶叫や不満の表明として提示される一方、タフは決して興奮も狼狽もしない------ただ、愛する猫の危難を除いては)、なんとも嬉しい。
いいなぁ、この作品。