『秘密の花園』唐十郎原作・三田佳子主演/Theatre1010〜すいません、最初から最後まで、さっぱりわけがわかりませんでした……。


------これ、一体、どういう劇だったんだろう。


どんな舞台であれ、観劇中、あるいは観終わった後には、「この劇全体は、また、特に印象深かったあの場面、あの演出はどういう意図があり、意味があったのだろう」と自分なりの仮説を立ててみることにしている(勿論、同じようなことをする人は少なくないと思う)。


それが、この舞台では、はじめから終わりまで、理解もしくは誤解の足掛かりすらろくに見つけられなかった。ここまでほぼ徹頭徹尾、《劇に置いていかれてしまう》経験というのは近頃余り無い。正直にいって、ただ呆然としている間に幕が閉じてしまった。


しかし、これが《出来の悪い舞台》だったのかというと、そうもいえない。
その正体が何であるのかはさっぱり、一向に、全くもってわからないものの、ともかく異様な熱気だけは強烈に伝わってきたし、終演後は(千秋楽ということもあり)8割くらいの入りの観客席からは熱狂的な拍手が絶えず、ステージに上がった演出の三枝健起、原作の唐十郎も含め、キャストの皆さんは揃って充実感に満ちてみえた。
また、「こういう意図だったのだろうけど、およそうまくいっているようには見えない」というマイナス方向の仮説もその糸口さえ掴めなったので、自分としてはまともな批判をする術もない。


どうやら、《今の自分にはおよそ理解が及ばない座標において、大変密度の高い何ものかが形作られていた》と考えるのが妥当なようだ。
どこかで、私にも少しはわかるような形で、この劇の面白さを解説してくれている文章などないものだろうか。ちょっと探してみようかと思う。


……あと、どうでもいいことだけれど、疑問が一つ。
周りの様子(一階席中ほど右ブロック周辺)にたまに眼をやると、極少数とはいえない数の観客が(特に第一幕は)、たびたび夢の世界への小旅行を繰り返しているように見えた。しかし、そうした方々も幕が下りた後には実に盛大な拍手の嵐に加わっていたのが驚きだ。


特に左隣にいた、寝るたびに盛大に鼾をかくので、何度かつっついて起こした人。そんな方も、耳が痛くなるくらいに激しく拍手の輪に加わっていったのはどういうことなんだろう。眠りの世界で深く舞台を楽しんだりでもしたのだろうか。
随分と便利そうな特殊技能なので、思わず教えを乞いたくなってしまった。世の中には、色々な人がいる。