ジョン・ファウルズ『コレクター』(小笠原豊樹・訳)


訳者解説とめいいっぱい重なる感想だが、作者自身が監禁者・被害者双方に分裂して描かれつつ、それぞれがある種の時代精神を反映、象徴しているようにみえるのが興味深い。
ただ、同じ作者の『魔術師』ほど面白くは無いと思う。というか、『魔術師』が凄すぎる。

ところで。

ずっとあとになって、ある日そのレコードを聴いていたとき、彼女は泣いていた。少なくとも目がうるんでいた。モーツァルトはそれを書いたとき死期が迫っていて、死期が迫っていることを自分でも知っていたのだ、と彼女は説明してくれた

というくだりが上巻70ページにあるのだが、今日、コンサートで聴いたのが丁度、ミシェル・コルボ指揮による、モーツァルト「レクイエム」だった。
少しばかり嬉しい偶然。