ダン・シモンズ『ハイペリオンの没落』(酒井昭伸・訳)〜フィドマーン・カッサード大佐に栄光あれ。

ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

ハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

台詞の9割が禅の公案調というAIの一派閥のボスとか、キリスト教の三位一体の概念の超展開だとか、読んでいて苦笑したくなるようなSF的なB級要素を「これでもか!」と詰め込んだ作品の総体は、極上の超A級エンターテイメント。
《「よくぞ、いい大人になってまで、SFを読み続けてきましたね」というSFファンへのプレゼント」》(今、出先で書いていて、本を家に置いてきたため引用が不正確。後で修正)という、下巻巻末の大森望の解説が大変わかりやすい。
「アニメファンにとっての『新世紀エヴァンゲリオン』みたいなもの」という喩えも面白い。


そして、何よりももう、フィドマーン・カッサード大佐に栄光あれ。
大会戦激燃え。そこまでは数々のバトル描写の限りを尽くされておきながら、その最高の戦闘場面だけは《あえて描かれない》という技法も◎。