遠藤徹『弁頭屋』〜あまり美味しそうじゃないなぁ。

弁頭屋

弁頭屋

表題作にせよ、「赤ヒ月」にせよ、あまり《食欲》の面で美味しそうじゃないなぁ。
およそ傾向が違う作品ではあるけれど、阿刀田高「わたし食べる人」(『冷蔵庫より愛をこめて』収録。これと『ナポレオン狂』の両短編集の充実ぶりは、ほとんど奇跡的ですらある)での《食事》は、それはもう、実に旨そうに思わされた。
まぁ、そちらは《そう思わせること》を最大の作品の《味》としていたわけだから、そこで較べるのは厳しい。でも、その点でもっと描写が充実していれば、作品全体のイメージがより鮮烈になったのでは。

冷蔵庫より愛をこめて (講談社文庫 あ 4-1)

冷蔵庫より愛をこめて (講談社文庫 あ 4-1)

それと、はっきりいえば、よく出来た作品集だと思うけれど、全く好きにはなれない。
例えば「カデンツァ」よりもねぇ、坂田靖子「Let's炊飯ジャー」(『月と博士』収録)がいいと思うんですよ。はい。

月と博士 (白泉社文庫)

月と博士 (白泉社文庫)