初版発行が2008年5月1日揃いの三冊。
石黒正数『ネムルバカ』。
駒崎サブゼロ『駒崎サブゼロ短編集 世縒りゆび』。
アサミ・マート『木造迷宮』。
三者三様の「クリエイターになりたい!」モノ……とまとめちゃっていいのかな?
とりあえず、石黒正数『ネムルバカ』と駒崎サブゼロ『駒崎サブゼロ短編集 世縒りゆび』から、二ページずつキャプチャーしてみました。
- 作者: 石黒正数
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2008/03/19
- メディア: コミック
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……まぁ、つまり、こういう話です。
で。
ここでは、両者の趣向の違いが面白いと思うんです。
石黒正数作品の方には、語られるテーマの掘り下げにも、それを語る設定にも、新味は全くありません。
語りつくされた典型的なモラトリアムですし、それを《音楽の道で喰うことを目指す女子学生を中心に、大学生たちの生態を通して描く》というのはいっそ清々しいまでに陳腐です。
しかし、キャラと語り口の魅力は素晴らしくて。
つまるところ、多分、それこそはこの漫画家の魅力なのであって。
それを愉しめば良い一冊だと思います。
といいますか。
個人的には《たとえパチもんであれ、紺先輩が出ていればもう、それでいいや》と思えたりするわけです。はい。
こと石黒作品において、紺先輩絶対主義を標榜しております。はい。
駒崎サブゼロさんの方は、モラトリアムとそこからの脱却を、「錬金術」に仮託して描いているところが趣向です。
そして、「錬金術」を持ち出すと必ずといっていいほどセットで出したくなる、《パラケルスス、賢者の石、ホムンクルス》の三点セットや、その周辺の薀蓄を爽快なくらい見事に排除しているところは、実はスゴイところだと思います。
《出来る限りフツーには描きたくない》という努力が、全面に渡って感じられる作品です。
それとモチロン、帯に物騒な推薦の言葉------「村田蓮璽氏絶賛 圧倒的な画力。紡ぎだされる重厚な世界。諦観のなかにある小さな希望」-------が載ることになった、およそ初単行本とは思えない画力が魅力です(つーか、スゲーよ、これ……)。
ただ、こちらはキャラが観念やテーマの道具であり過ぎて。
ぶっちゃけた話、個々のキャラクターの魅力は(あくまで相対的にいって)そんなにありません。
最後に、アサミ・マートさん。
えーと……ここまで欲望に忠実かつストレートに一作品を仕上げられるのは、皮肉でもなんでもなく、素晴らしいことですよね、と。
「ダメダメな俺のところにかわいい家政婦さんが来たら!もしも!来たら!俺、幸せ!!!!」
という欲望一直線で本一冊書いちゃう勢いに感嘆させられます。
いわば、「ここぞ!」という場面での藤川球児(阪神タイガース)のピッチング……みたいな?(ああ、またいつのも如くいい加減なこと書いてる……)。
直球、直球、直球、直球……(以下略)。
相手がわかってようが自分もわかってようが、ともかく直球。
他二人がグダグダ難しく悩んでいるところを、ド直球で一点突破というかなんというか。
この勢いで、是非、森薫・和風バージョンでも目指して頂ければと思います。
あそこまで突き抜けるには、道は遠い感じではありますけれども。。。
最後に、個人的にモラトリアムのイタさについて少し------は自重しておきます。
別にここで殊更に描かなくとも、普段から実践し続けているわけですし。
ただ、別口で仕事がある分、随分と卑怯でズルいモラトリアム遊びなわけですが……まぁ、それも含めてどうでもいいことですね。はい。