2008年に読んだ本(漫画以外)ベスト10+α

漫画版だけやってみるのもなんですので、

※2008年に読んだ漫画ベスト10+α
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20081230

こちらもざっとまとめてみました。
同じく、一〜七月までのもの中心。
あまり新刊は読まないため、刊行時期にこだわらず、あくまで≪今年読んだ本≫になります。


漫画の方は≪その面白さをどれだけ伝えたいか≫のベストでしたが、こちらは、≪自分にとってどれだけ気になったか≫のランキングです。
何故そうなるかというと、特に最上位二つ、正直言ってどんな作品であるのか、未だにあまりよく分かっていなかったりするからです……。


あと、北村薫作品は別格扱いとして含めていません。



■2008年ベスト10
[1]トール・ノーレットランダーシュ『ユーザーイリュージョン―意識という幻想』(柴田裕之・訳)
[2]円城塔Self-Reference ENGINE』&『Boy's Surface
[3]飛浩隆「はるかな響き Ein leiser Tone」
[4]ジョージ・R・R・マーティン氷と炎の歌』シリーズ
※第一部〜第三部:岡部宏之・訳
 第四部:酒井昭伸・訳
[5]冲方丁スプライトシュピーゲルIV テンペスト』& 『オイレンシュピーゲルWag The Dog』
[6]ポール・オースター『空腹の技法』(柴田元幸/畔柳和代・訳)
[7]梨木香歩の作品群(『西の魔女が死んだ』『春になったら莓を摘みに』『りかさん』 『からくりからかさ』『裏庭』ほか)
[8]フィリップ・ブルマン『ライラの冒険』(大久保寛・訳)&ミルトン『失楽園』(平井正穂・訳)
[9]マーチン・ファン クレフェルト『補給戦―何が勝敗を決定するのか』(佐藤佐三郎 ・訳)
[10]眉村卓『司政官 全短篇』
[番外]【アニメ】『電脳コイル


[1]トール・ノーレットランダーシュ『ユーザーイリュージョン―意識という幻想』(柴田裕之・訳)
[2]円城塔Self-Reference ENGINE』&『Boy's Surface

ユーザーイリュージョン―意識という幻想

ユーザーイリュージョン―意識という幻想

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

Self‐Reference ENGINE (ハヤカワSFシリーズ・Jコレクション)

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

Boy’s Surface (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)

どちらもそれぞれ、あまりに読み慣れていない分野の本で、消化不良もいいところ。
それこそamazonの紹介文以上の感想が書ける気がまるでしないのですが、それにも関らず、面白さという点ではベスト1,2です。
『ユーザーイリュージョン―意識という幻想』で書かれているように意識が幻想なんだとしたら、≪小説なんてどう書けばいいんだろうなー≫という話に対して、≪こう書くんでないの?≫というのが『Self-Reference ENGINE』『Boy's Surface』であったりするようなしないような。



[3]飛浩隆「はるかな響き Ein leiser Tone」

SFとして、「清新であること、残酷であること、美しくあること」を心がけるという作者の、いつもながら、その通りに残酷で美しい話。
「はるかな響き Ein leiser Tone」 は49ページ程の短い話です。
こちら↓で読めます。
http://www.dot-anime.com/tb/a_songs/


それにしても-----。
2006年春に『象られた力』、『グラン・ヴァカンス』を読んで以来、感想をずっと書きたい書きたいと思っていて。
で、何割かはそれが理由でSF関連の本を読む機会が飛躍的に増えた結果、今年などはこのベスト10の[3]は勿論、[1]、[2]、[4]、[8]、[10]とその流れで入って来てたりするんですが、肝心の感想はおよそまとまる気がしません。なんだかなぁ。


[4]ジョージ・R・R・マーティン氷と炎の歌

七月末に新刊が出て。八月の間二十日間くらい、延々このシリーズばっかり読んでいました。
デナーリスを除いて、どんな主要キャラクターがいつどこで突然の最期を迎えてもおかしくないという、物騒極まる小説。
≪その人物がその人物であるがゆえの欠点とその報い≫というのを描くのが異様に巧い。


ただ、破滅していく人物たちとデナーリスが対照的に描かれる傾向はあって、割を喰わされる立場になった人たちの描写は少々むご過ぎるきらいも(例えば、ドラゴンの、そして人民の≪母≫となっていくであろうデナーリスとの対比もあって、数人の≪母≫たちの判断ミス、暴走描写がそれぞれもー、エグ過ぎるくらいにエグい)。


最新巻ではなんといってもティリオン不在が残念。
今後が一番気になる、もっといえば出来る限り幸せになって欲しいのがティリオン。
何を考えて動いてるのか是非知りたいのがヴェリース(ヴァリス)。
退場が残念だったのがドーンのあの人と、ラニスターなあの人。


そして、色んな意味で活躍が期待できるし楽しみなのがリトルフィンガー。
「キャットだけを」はこれまでのところ、作中No.1の名台詞だったなぁ。
およそろくな死に方しそうにないところも含めて、いろいろホント、楽しみです。


[5]冲方丁スプライトシュピーゲルIV テンペスト』& 『オイレンシュピーゲルWag The Dog』

なんか読んだ後にグダグダ書いていたみたいなんですが……。
本当に単なるメモ集で、今読み返すとまとまりがなくて何言いたいのか自分でもよくわかりません。。。

冲方丁スプライトシュピーゲルIV テンペスト』についてのメモ。
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20080604

[6]ポール・オースター『空腹の技法』(柴田元幸/畔柳和代・訳)

空腹の技法 (新潮文庫)

空腹の技法 (新潮文庫)

うーん、この人の作品って、小説よりもエッセイや批評の方がずっと好きなんですよね。
そういえば、村上春樹でも断然好きなのは、『若い読者のための短編小説案内』だったりします。


それにしても、収録されているどのエッセイ・批評であるにせよ。
ホント、どうやればこんな風に書けるんでしょうね……。



[7]梨木香歩の作品群(『西の魔女が死んだ』『春になったら莓を摘みに』『りかさん』 『からくりからくさ』『裏庭』ほか)

からくりからくさ (新潮文庫)

からくりからくさ (新潮文庫)

個々の作品がどうこうというより、作品群から立ち上がってくる考え方に向き合いたくなる作家さん。


ここで、作品の基本姿勢が≪解答≫でないのは勿論、≪主張≫よりもとにもかくにも≪問い掛け≫なので、一般論としての感想はとても書きにくくて。
おまけに、≪人との関わり合いつつ生きる中で、何を求めて何を期待し何を引き受けるか、そして何を求めず何を期待せず何を拒むか≫という話を、八重九重に、といった具合に囲い込むように問いかけてくるシロモノなので、理屈で逃げたり予防線を張るのが予め難しくされていて。
それでも何か書くとすると、かなり剥き出しに私的なものにせざるを得ない。正直言って、個人的にものすごく厄介です。
逆にいえば、そこにこそ惹かれもするわけですが……。


[8]フィリップ・ブルマン『ライラの冒険』(大久保寛・訳)&ミルトン『失楽園』(平井正穂・訳)

黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険

黄金の羅針盤〈上〉 ライラの冒険

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

失楽園 上 (岩波文庫 赤 206-2)

「想像力」に対する扱いが面白い物語。
ミルトン『失楽園』を多分に下敷きにし、過度の《想像力》を被造物の奢りとして戒めるその観方を踏まえつつ、乗り越えていくところに最大の面白さがあると思えます。


そこらへんについて、少しだけ、グダグダと。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=827289620&owner_id=211281


[9]マーチン・ファン クレフェルト『補給戦―何が勝敗を決定するのか』(佐藤佐三郎 ・訳)

補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)

補給戦―何が勝敗を決定するのか (中公文庫BIBLIO)

中高生のころは、ひたすら歴史とか政治絡みの話ばかり追い掛けていて。
時折、そちら方面の話題が懐かしくなります。


[10]眉村卓『司政官 全短篇』

司政官 全短編 (創元SF文庫)

司政官 全短編 (創元SF文庫)

小中学生の頃、アシモフが大好きで。
数年前、小川一水作品読んで、久しぶりにその頃の面白さが思い出されて。
そんな感じなので、この作品はそりゃあもう、好きですね。


[番外]【アニメ】『電脳コイル

電脳コイル 第1巻 限定版 [DVD]

電脳コイル 第1巻 限定版 [DVD]

SF系の話題が妙に多くなったので、本ではありませんが、番外として(今年のSF大賞受賞作でもありますし)。
ホント、いい作品ですね、これ。

電脳コイル』(DVD全九巻/26話)/雑感(1)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=873965674&owner_id=211281
電脳コイル』(雑感2。ネタバレ分高め。未見の方非推奨)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=874179110&owner_id=211281
電脳コイル』(雑感3……といいますか雑感2の一応の補足。ネタバレ分高め。)
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=880434747&owner_id=211281


■おすすめ


[1]イアン・マキューアン『贖罪』(小山太一・訳)上・下
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=797134848&owner_id=211281


内面に渦を巻いてエゲつないくらい降りていきつつ、自己憐憫や自己劇化に浸りきろうとする傾向が見られたら、とことん嗤い潰して突き放す。
深刻になることに溺れずに、しかし、韜晦して社会から離れ引きこもることも拒む。
斜めに構えつつ、視線が向かう方向は≪前≫。


イギリスの凄く良い小説はそういうところがたまらなく良いと思えます。
……ただ、読んでいて、ものすごーーーーく疲れますけどね。。。



[2]井上ひさし『自家製 文章読本』『人間合格』


『人間合格』はまず、劇で観て、戯曲の本も買いました。
怨念や政治ネタが前面に出すぎなければ、もうとにかく文句なく凄い人。
むしろ、結構そこらへんが出てきちゃっても、それでも超一流。
出てきたら出てきた分だけ嫌ですけれど。


[3]広瀬和生『この落語家を聴け! いま、観ておきたい噺家51人』


マイミクシィのkazさんの本です。
http://mixi.jp/show_friend.pl?id=614334
≪今の落語を聴く≫という視点を徹底した、落語を楽しく観るための間口が広いガイドです。
実際に≪今≫落語を聴きに行く人にとって、最適のガイドブックになると思います。


自分の感覚と合うところは、その感覚を更に深く追っていくための素晴らしい案内になりますし、感覚と合わないところについては、納得のいく筋が通った別視点として、とてもとても参考になります。
今も日々更新されているMixiの落語日記はまさにこの本の延長のようなもので、それも含めると、随時≪今≫最新の情報にアップデートされる、更に便利なガイドブックになってくれます。


[4]田中ロミオ人類は衰退しました』[1][2][3]


カート・ヴォネガットな感じの世紀末だけど、滅亡じゃなくて衰退。明らかな作者のこだわり。
確信犯で激甘砂糖過剰だけれど、意外なほどきっちりSF。
特に、二巻後半の「助手さん」の話は断トツでSFとしても面白いんじゃないかなぁ、と。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=774596277&owner_id=211281
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=788364833&owner_id=211281



[5]佐藤多佳子しゃべれどもしゃべれども


読みやすく、気持ちの良い小説を書く人です。
とりあえず、本になっている作品は文庫、単行本問わずまとめ読みしました。


[6]ジェイムズ・グレイディ『狂犬は眠らない』(三川基好・訳)
エスピオナージの傑作。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=746668387&owner_id=211281