『魔法少女おりこ☆マギカ』二巻ネタバレ感想

○ムラ黒江『魔法少女おりこ☆マギカ』全二巻を「漫画の形をとった激しくも鋭い『魔法少女まどか☆マギカ』批評」として読む。


twitterで呟こうと思ったのだけど「さすがに発売日の昼にネタバレ全開はまずいだろ」と言う事で、日記に。

魔法少女おりこ☆マギカ (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

魔法少女おりこ☆マギカ (2) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)

以下、数十行空けて本文。
題名にあるとおりネタバレ上等です。


なお、関連して『魔法少女まどか☆マギカ』及び『魔法少女おりこ☆マギカ』1巻感想等はこちら。

魔法少女まどか☆マギカ』放送終了後からの感想まとめ。
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20110522

あと、『まどか☆マギカ』関連は主にtwitterで呟いていることが多いので、もし関心を持って頂けたなら、twitterアカウントhttp://twitter.com/sagara1をフォローでもして頂けると幸いです。はい。

Twitter上では例えばこんな感じで、皆で「ああでもないこうでもない」とやっています。
○「おりマギとまどマギについてみんなで丸2日考えてみた」
http://togetter.com/li/149680


































ムラ黒江による『魔法少女まどか☆マギカ』のスピンオフ漫画、『魔法少女おりこ☆マギカ(2/完結)』は良かった!


明確かつ分かりやすい否定の否定。「菊池寛かお前は」と。

千歳ゆま「いつかはいまじゃないよ」


何よりまず、これが最高に良かった!
これは『魔法少女おりこ☆マギカ』内よりも、むしろ『魔法少女まどか☆マギカ』本編での

QB「やがて魔女になる君達は魔法少女と呼ぶべきだよね」

にこそ抗する言葉と思えます。


暁美ほむらが巡るいずれの時間軸でも「未来を受け入れれず絶望」し互いに孤立していた魔法少女たち。
彼女たちが今(!)の「私の世界」(これも出自の関連で「公」と「私」が混じっていて厄介だけど)を守るべく起った固い絆で結ばれた魔法少女ペアを前にして、初めて連携する皮肉。
ただし、それは「団結」ではないように思えます。ただ後回しにしてその場の緊急事態に対処しているに過ぎませんから。


正直"電波さん"とだけみえていた呉キリカは"絶望に堕ちてもなお留め得る思いはないのか"というこれも強烈な否定の否定が託されていたのがいい。

美国織莉子が虚淵世界の規則≒QBの論理では既に単なる死体でしか無い呉キリカを見捨て得なかったのもこれと深く関連する筈。
否定の否定こそ彼女たちの流儀



一方で暁美ほむら鹿目まどかは……。
「まどか様になってないまどか」にとっては誠に以て酷い話。
でも、織莉子視点からは、他の多数のその時間軸での犠牲者以上に重み付けする意義は見出しがたい。彼女が父から受け継いだ、政治家的な「公」の視点からは。
でも、彼女も結局最後の最後に「私」を選んだり支えられたりしているのですけどね。


また、ほむらの扱いは「暁美ほむらという個人が「最後にのこった道しるべ」だけを頼みに延々と無数の世界を破滅させながら渡り歩いて良いのか?」という疑問もしくは批判の表れと思えます。


なお、ラスト付近では"起きてしまったことは仕方ないよね。もうどうしようもないことに後から騒ぎ立てるなんてわけがわからないよ"といわんばかりのQBの"感情の無さ"演出も巧み。


ともあれ。
魔法少女おりこ☆マギカ』は単体作品として見ればはいろいろ拙いところ、急ぎ過ぎなところなどは見られるけれども。
魔法少女まどか☆マギカ』という作品の設定や登場人物たちのそれとの向き合い方についての良き批評精神に満ちた、素晴らしいスピンオフ作品だったと思えます。


より踏み込んで言うならば。
ムラ黒江は「単体作品としての完成度を相当犠牲にしてでも、漫画の形をとった批評を二巻でやり切っている」と思える。
好きだな、そういう割り切り方。


また、Amazonの『魔法少女おりこ☆マギカ』カスタマーレビューには、内容的にはほぼ同じですが、少しばかりノリの違った文章を投稿したりもしています。
出来ればそちらもよろしく……。


○追記
なお、余談として「(魔法少女化してない)呉キリカと美樹さやか、画だけでは区別がつきづらいよ!」問題というのが特にラスト付近であるのですが、詳しくはこちら↓

●さやかちゃんとキリカちゃんが似てる件について。
http://d.hatena.ne.jp/Six315/20110613


○更に追記(6/14)。 こ れ は ひ ど い 。

●第1回さや☆キリ検定
http://d.hatena.ne.jp/Six315/20110614/1308031408

○更に追記
作品を極端に「解釈」寄りで捉えたこの日記に対して、出来るだけ主観や解釈を排そうと努めながら『魔法少女おりこ☆マギカ』の流れを追ったSix315さんの分析もまた大変興味深いところです。
関心がある人は是非ご参照下さい。

○そろそろ『魔法少女おりこ☆マギカ』を読み返してみよう【1話】
http://d.hatena.ne.jp/Six315/20110615/1308126922