『オール讀物』7月号北村薫先生による推協賞選評とと米澤穂信「茄子のような」を読む。


オール讀物』7月号での日本推理作家協会賞選評。
北村薫先生による上田早夕里『華竜の宮』の激賞が凄いよ。
あと米澤穂信書き下ろし「茄子のよう」は傑作だよ。

オール讀物 2011年 07月号 [雑誌]

オール讀物 2011年 07月号 [雑誌]


今日付けでのtwitter連投http://twilog.org/sagara1/date-110623/asc の転載です。
勢いで「茄子のような」の感想を米澤センセにリプライでいれて、返信貰ったりもしていたり。
小説新潮』での山本周五郎賞選評での『折れた竜骨』関連は、本日帰宅後に読む予定。それ関連で諸々追記するかも。

⇒追記しました(6/22 21時前)。
「『小説新潮』7月号北村薫先生その他による米澤穂信『折れた竜骨』関連の山本周五郎賞選評を読む。」
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20110623/p2

⇒更に追記しました。
本格ミステリ作品が「(本格)ミステリ以外の評価軸を以て作品が論じられる場」において「思想がない」「娯楽の枠を抜けだして欲しい」等と評されることのやるせなさについて」
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20110711/p1

昼に『オール讀物』7月号を買って来たんです。米澤穂信『折れた竜骨』が長編賞を受賞、上田早夕里『華竜の宮』が同賞の候補ともなっていた日本推理作家協会賞の選評&米澤穂信の描き下ろし短篇「茄子のよう」が目当て。……で、選評読んで……おおおおおおおおおおおおおおお!!北村薫先生!!
posted at 13:57:33
北村薫先生、「『華竜の宮』と『折れた竜骨』を推した」という冒頭に続き。まずSF読者ではない自分は「その枠の中での評価はできない」と断った上で。上田早夕里先生の『華竜の宮』に触れ、最高級の激賞をされている!!これは凄い!!(続く)
posted at 13:57:58
「五作を並べた時、小説としての魅力は『華竜------』が飛び抜けていた」と始め、青澄とチェンの姿勢を「《汚れた街を行く探偵》という、ハードボイルドの典型でもある。また『鷲は舞い降りた』などの主人公にも通じるものを感じた」とハードボイルドの文脈に引きこんだ視点から賞賛する(続く)
posted at 13:59:02
そして「海上民と魚舟の繋がりなど、描かれる世界に小説の喜びを感じつつページをめくった。一方、陸地が水没を迎える物語を《今、読む》ということに、特別な思いもあった」「どうしても《この一作をとり、他のミステリ四作からもうひとつを選ぶ》という形の選考にならざるを得なかった(続く)
posted at 13:59:16
『華竜------』と他の作では、比べようがなかったのだ」とまで!!……これ、他ならぬ北村薫先生の評ですよ。あの最高の小説読みで。そして「本格ミステリ原理主義者」の北村先生がそう褒めた!……例えば、正に同じ推協賞長編賞の。2010年度の選評を参照してみると面白いわけですよ。
posted at 14:00:02
「一般の読者に、どちらを面白いと言って渡すかといえば、普通は『身の上話』」と断った上で。「『乱反射』に与えないようなら、推理作家協会賞の存在意義はない」「なぜなら『乱反射』は「小説という衣の下に、本格の鎧を隠した作品」」と圧巻の論で場を圧して受賞を決めさせたのが、北村薫先生です。
posted at 14:01:01
うああああああああああああああああ!嬉しいなぁ。嬉しいなぁ。自分が好きで好きでたまらない人がやはり自分の大好きな作品を、実にその人らしく激賞するのを読むことが出来るのは、たまらなく嬉しいなぁ。
posted at 14:01:18
なお『折れた竜骨』については「舞台をパラレルワールドのヨーロッパに持って行き、破綻を見せなかった構成力、筆の運びにうなった。米澤さんの才気が物語と見事に結び付いた。これまでの代表作だと思う」とこれも高い評価。
posted at 14:01:39
やはり大好きな作家・作品である米澤穂信『折れた竜骨』については自分のamazonでのレビューhttp://t.co/MiyAMKf とも通じるといえば通じる(?)とも思える読みで、そこも嬉しい。
posted at 14:04:34
ただ、やはり北村先生が論評の中で「評価のベクトルが違うため、他の作に厳しかったかもしれないが」とおっしゃっている通りで。とりわけ諸々の要素から米澤穂信作品を読むときは「そりゃあ大いに愛しつつも厳しい視線は向けていらっしゃるのだろうなぁ」と思えてしまう。それも大変に興味深いところ。
posted at 14:05:01
まさに眼福。いやぁ、嬉しかった。小説って。そしてその優れた読みと賞賛って。なんとまぁ、素晴らしいものなんだろう。
posted at 14:10:32
そういえば、北村薫先生にはとある機会(『北村薫の創作表現講座 あなたを読む、わたしを書く』に参加させて頂いた時)に半ば無理矢理、円城塔『Boy's Surface』(の表題作)を勧めさせて頂いたりもしたんですよね(続く)
posted at 14:19:49
「北村作品でしばしば中心的に描かれる「地団太を踏みたいような思い」をとんでもなく変形させたものとしても読めるのではないか」とかなんとか言いつつ。でも、一読してピンと来て頂ける出会いではなかったようで。「そりゃそうだよなあ」とは思いつつも、とても残念ではあったりもしました。はい。
posted at 14:20:10
@honobu_yonezawa 「茄子のよう」拝読させて頂きました。何より一つの小説として美しく、惹きこまれずにはいられません。また、無能感と全能感……そして「何者かになりたい」という人間全般、とりわけ若者に顕著な思いに向けられた一つの視線としても大変興味深いものと読めました。
posted at 14:54:27
@honobu_yonezawa あと、これは黙してただ思うべきことで殊更口の端に上らせるべき読みではないのかとも思いつつ。大震災を期に「小説に何が出来るか」と分り易すぎる社会効用にばかり目を向けるような論調への、静かながらも極めて確かな反論とも捉え得ると感じさせられました。
posted at 14:54:57
@honobu_yonezawa また、遅まきながら『折れた竜骨』での推理作家協会賞長編部門受賞、おめでとうございます。心から好きと言える小説ですので、一ファンとして嬉しくてなりません。
posted at 14:55:10
@honobu_yonezawa 「論理の鮮烈さよりもむしろ論理を扱う理性、その意志を称える力強さによってより魅力的になっている」との個人的感想から、幾人かの選評が消去法の論理の難にばかり眼を向けた事には疑問も覚えつつ、それらを押し切っての受賞というのも又、喜ばしいと思えます。
posted at 14:56:53
@honobu_yonezawa あと22日のtwitterでの一連の「茄子のよう」の紹介がまったく「嘘をついてはいない」というのは正しくミステリ的な遊び心とも見え、「そんなに真面目に感心されても困る」と言われてしまいそうとは思いつつも一言感想を送らせて頂ければと思えました。
posted at 15:04:00
RT @honobu_yonezawa: 現在発売中の「オール讀物」7月号に日本推理作家協会賞の選評が、「小説新潮」7月号に山本周五郎賞の選評が載っています。読み比べると面白いです。
posted at 15:05:45
RT @yui_hanpen: 上田早夕里「華竜の宮」と米澤穂信「折れた竜骨」をポチッた。後輩にすすめられカートにいれたまま忘れていたのを、相楽さん@sagara1 のツイートみて思わず購入。シミュレーションでエラーでて作業とまっていたのでストレス発散かねているのは秘密。
posted at 15:06:54
@yui_hanpen ええ、どちらの作家も大好きなのですが、『華竜の宮』『折れた竜骨』双方についていずれも代表作であり、以前からのファンの方にもそれが初上田作品・初米澤作品の人にも共に勧められるという、なんとも便利かつ素晴らしい作品です。
posted at 15:09:44
RT @honobu_yonezawa: ありがとうございます。こういう小説も好きだという思いを果たせた上、お楽しみ頂けたのはとても嬉しいです。 RT @sagara1: 「茄子のよう」拝読させて頂きました。何より一つの小説として美しく、惹きこまれずにはいられません。/
posted at 15:10:03
@honobu_yonezawa 確かに「社会効用がなければ駄目だ!」との論は願い下げですが多くの人の励ましや力になる作品の大きな意義もまた、当然ですね。例えば冲方丁さんなどは大変積極的にその意義に取り組まれる作家さんなのかな、と思ったりもします。>こういう小説も好きだという思い
posted at 15:15:33
RT @honobu_yonezawa: へへっ。(得意げに鼻の下をこすりながら) RT @sagara1: あと22日のtwitterでの一連の「茄子のよう」の紹介がまったく「嘘をついてはいない」というのは正しくミステリ的な遊び心とも見え、/
posted at 15:16:09
RT @S_Nakatsu: @sagara1 オール読物7月号、どっかに埋れているようで発見できず〜。『華竜の宮』そんなに激賞だったんですかー。
posted at 20:13:44
@S_Nakatsu 「SF読者ではない」ということで読みに限界があることをまず提示した上での話ですが(そして『華竜の宮』はまずなにより優れたSFであることを思えばそれは極めて深刻な問題なのですが)、手放しの激賞でした。
posted at 20:15:00