『それでも町は廻っている』13巻、紺双葉と彼女のカンパネルラ

石黒正数それでも町は廻っている』13巻収録104話「暗黒卓球少女」。
71話「歩く鳥」、38話「俺たちは機械じゃねえ」に連なる、新たな紺先輩こと、紺双葉の名エピソードが登場して来てくれたことを強く喜びたいと思えます。


まず、最後に名前が示される「座成(=ざなり≒ザネリ)」がまさしく"暗黒卓球少女"だ、という話ではあります。


p172-173の彼女の言動(近寄り難い紺に、あえて明るく近づこうとする針原さんを牽制、「お前紺の係だろ」「紺ってお前としかろくに喋んないじゃん」と言われ、「えへへへ」と喜ぶ)、それを受けてのp174、1コマ目の針原さんの表情が彼女がどんな「友だち」なのか示してもいますし。
9巻収録の"それ町版『銀河鉄道の夜』"。
作品屈指の名エピソード71話「歩く鳥」冒頭が13巻p174、

「紺先輩が3年生になるとそれまで仲良かった先輩が卒業しちゃったせいか ますますピリピリして話しかけにくい雰囲気の人になっちゃったけど…」

と針原さんが述懐した時期、本当は何があったのか教えてくれます。

※座成≒ザネリについて↓
それでも町は廻っている』9巻/第71話「歩く鳥」の魅力
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20110901

13巻p175最初の二コマの針原さんはp172-173との対比でもあります。
それぞれキャプチャ画像を示してもいいのですが。
13巻p172-173、9巻p124-125を丸々見せるのも気が引けますし、引用するなら少なくともその部分は全部見せたいところで。
それに、ぜひ話全体を振り返って欲しいところでもあり、それは控えておこうと思います。


針原春江は座成と違って紺先輩の良き友人……あるいは良き後輩になれたけど、紺双葉のカンパネルラにはなれなくて。
それでも、羨みはしつつ、紺先輩のために嵐山歩鳥が現れてくれたことを喜んでいます。
彼女の溢れる善性を示していますね。


そして何より。
冒頭の繰り返しになりますが、改めて。
71話「歩く鳥」、38話「俺たちは機械じゃねえ」に連なる、新たな紺双葉(と彼女のカンパネルラ、嵐山歩鳥)の名エピソードが登場して来てくれたことを強く喜びたいと思えます。




なお、蛇足というかこちらも繰り返しになるのですが。
先ほど(2014/10/1、10時過ぎ)twitterで「座成」で検索してみて、あの描写をどうも「良い友人」と受け取る感想が目立つのですが、個人的には疑問に思えます。
仮に過去話(71話「歩く鳥」)を踏まえずこの話単体で見ても、彼女がどういう類の「友人」なのかはしっかり描いてあるかと思えますから。


見栄えが良く、自分にだけなつく奇妙なペットであるかのような。
自分の所有物であるかのように他人が近づこうとすれば牽制し、一方的に保護、もっといえば愛玩すべき対象であるかのように殻に閉じこもるのを良しとする。
あれはそういう扱いかと思います。それって、どんな類の「友人」だと思いますか?
71話冒頭は、そんな一方的に保護し愛玩する対象だと思っていた相手に自分のポジションを奪われたとき、座成にすれば「当然」の反応をした……ということかと。
座成は別に人が変わったのではなく、彼女はもともと紺双葉に対してそういう「友人」だったという話かと思います。


それと、その検索で作者さんのコメントも見つけたので、引用しておきます。↓



※10/3追記
……と、以上のように考えていたんですが。
改めて他の人と意見を交換してみると、それもまた、一面的な狭い捉え方だったかと思わされました。
詳しくはこちら↓