話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選

話数単位で選ぶ、2014年TVアニメ10選


「新米小僧の見習日記」
というサイトさんで取りまとめられている以下の基準、

・2014年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
・1作品につき上限1話。
・順位は付けない。

に従い、最も印象深かったアニメを10話選びました(敬称略、順不同)。



『ピンポン THE ANIMATION』8話「ヒーロー見参」
『四月は君の嘘』第10話「君といた景色」
『グラスリップ』第12話「花火(再び)」
『スペース☆ダンディ』第24話「次元の違う話じゃんよ」
『蟲師 続章』第2話「囀る貝」
『ウィッチクラフトワークス』第3話「多華宮君とクロノワールの罠」
『キャプテン・アース』第23話「真夏の夜の夢」
『アルドノア・ゼロ』第3話「戦場の少年たち-The Children's Echelon-」
『ノーゲーム・ノーライフ』第9話「解離法(スカイ・ウォーク)」
『Selector infected WIXOSS』第8話「あの契は虚事」



『ピンポン THE ANIMATION』8話「ヒーロー見参」

監督/湯浅政明
脚本/湯浅政明 絵コンテ/湯浅政明 演出/許平康
作画監督/石丸賢一、戸田さやか、浅野直之


チャイナこと孔文革がとにかくもう、好きで好きで、たまりません
中でももう何度繰り返し見たかわからないのが、次のペコのセリフを聴いての彼の反応。

「謝謝だぜ孔さん。 あんたのおかげで、オイラ一つ強くなることができたよ。あんたはオイラに、飛び方を教えてくれた」



あの、驚き、呆然……とても単純には書き表しようがない複雑な感情が混じった表情からの、下を向いての(更に複雑で、言いようもなく魅力的な)あの笑い。
ホント、たまりません。

関連(tweet連投)
作品全般
https://twitter.com/sagara1/status/487791722395488258
『ピンポン COMPLETE BOX』付属「湯浅政明の創作ノート」「アニメーションメイキングブック」を読んでみて。
https://twitter.com/sagara1/status/504506606332026880


『四月は君の嘘』第10話「君といた景色」

監督/イシグロキョウヘイ
脚本/吉岡たかを 絵コンテ/中村章子 演出/原田孝宏
作画監督/高野綾 演奏作画監督/浅賀和行
総作画監督/愛敬由紀子 ※ほぼ一人原画:西井涼輔


過去全話を通じて、まるで原作を譜面として、それにとても忠実であろうとする演奏、名演であるかのようにも思える作品。
ただ、勿論、漫画とアニメは表現として大きく異なるわけで。
アニメならではの要素……例えば演奏シーンの音楽、その他劇伴全般、色彩表現、キャラクターの声、 原作と違う区切りの中での各話のアバン〜締めまでの流れの演出に凝りに凝り、工夫なく引き写す(なんてそもそもできませんがある種の喩えとして)のでなく、原作の印象をなぞりつつ、更に昇華させてきている作品とも思えます。


そして、この作品は主題として音楽を扱い、音楽の表現に最も力を注いでいると思えるもので。
中でもこの10話の演奏シーンは圧巻でした。
聴こえるだろう音を本物の若手天才ピアニストにただ演奏させるのではなく。
公生がかをりをひたすらイメージし、その思いに客席が呑み込まれていく表現として、ピアノの独奏なのにバイオリンの音色もはっきり強烈に乗せてきた。
極めて冒険的ですが、この冒険は大成功かと思います。
9話アバンの監督いわく【音楽のモノローグ】、ピアノの独奏に、かつて揺り動かされ、今は「響け響け響け」と打ち鳴らす井川絵見の鼓動と思いがドラムの音として乗るというのも凄まじかったですけれど、あるいはその布石もあって。
この10話演奏シーンは1クール目における最大最高の見せ場となっていたと思えます。

関連(togetter)
四月は君の嘘』感想まとめ
http://togetter.com/li/733123


『グラスリップ』第12話「花火(再び)」

監督/西村純二
脚本/西村純二 絵コンテ/西村純二 演出/安斎剛文
作画監督/竹下美紀、深川可純、朱絃沰、川面恒介、大東百合恵、秋山有希


最重要人物である沖倉駆というキャラクターの在り方は、作中の深水透子と同じく視聴者にとっても、この12話で初めて腑に落ちるものとして現れ得ます。
大胆で挑戦的な構成の要石となっている、強烈に鮮やかな挿話。


いってしまえばこの作品は三組六人のカップルが互いにすれ違い、相手のことも自分のことも本当には知らなかったことを知り、各組が二人の"時間と場所"を持つ/持って行くことで距離を近づけていく……ただそれだけの物語で。
それに普通、こういう場合は三組がそれぞれ相手を入れ替えるとか、相互に強く影響し合うという展開になるものだけど、『グラスリップ』では割合それぞれ独自に関係の変化が進行していく。その意味では、あえていえば構造として単純ですらあります。
でも、難解な作品であるという評判はとにかく根強いし、そうであることは否定出来ません。
視聴者が『グラスリップ』の解釈に戸惑わされる大きな原因はこの沖倉駆というキャラクターの厄介さにあるかと思えますが、だからこそ、彼の在り方について見当がつくと、他の諸々についても見晴らしが良くなり、二周目以降に特にたまらなく面白くなる傑作と思えます。


沖倉駆について。
実は"やっと探し求めていた相手に出会えた"ということで透子に対する、透子が絡む彼の態度は彼にとっても普通ではない異例のものだとか。
実は律儀なヤツなのだとか(例えば2話麒麟館で幸、8話日乃出浜でやなぎが一方的にした約束(透子を助ける/ちゃんと説明する)をよく覚えていて幸には10話、やなぎには13話で応答する)。
透子とのすれ違いや透子・雪哉に苛立つとても人間らしい心の動きなどなど……。
ホント観ていくと大変に面白いので、ぜひ投げ出さず、二周目以降で追っていってみて欲しいと思えます。
いや、一番好きなキャラクターは断然、永宮幸で。次点が井美雪哉なんですけどね。

関連(togetter)
グラスリップ』全13話の簡易解説
http://togetter.com/li/724041


『スペース☆ダンディ』第24話「次元の違う話じゃんよ」

監督/渡辺信一郎
脚本/円城塔 絵コンテ/高山文彦 演出/嵯峨敏
作画監督/川元利浩、斎藤恒徳


「このSFな発想、実は結構きちんと検討しつつ(勿論大いにケレン味も利かせて)映像化かー。すごいな」という意味では、この24話及び同じく円城脚本の11話「お前をネバー思い出せないじゃんよ」って、『インターステラー』みたいなものなんでは……とも。

関連(?)
○個人的インターステラー特集(に結果的になってる)
http://twilog.org/sagara1/date-141125


『蟲師 続章』第2話「囀る貝」

監督/長浜博史
脚本/長浜博史 絵コンテ/そ〜とめこういちろう 演出/そーとめこういちろう
作画監督/ 安彦英二、馬越嘉彦


傑作回ばかりで、どれを選んでいいか大変迷いますし。
どうにか選んだとして、これだけ凄まじい完成度を誇る作品について自分がなにほどのことを言えるだろう?と思ってしまうので、コメントは以下の一言に留めます。


全編に渡る見事過ぎる悲哀・諦観の描写、そして何よりあの飛翔の場面はあまりにも鮮烈極まるものでした。



『ウィッチクラフトワークス』第3話「多華宮君とクロノワールの罠」

監督/水島努
脚本/水島努 絵コンテ/鈴木洋平 演出/桜美かつし
作画監督/小渕陽介、藤沢望


出会ってすぐ挨拶代わりに主人公の腹を短剣でぶすっと刺し、にこやかに会話を愉しんだ後、口移しで飴を飲み込ませようとする釘宮ボイスの大変魅力的なロリババア、クロノワールシュヴァルツ・シックス (黒黒黒6)。
彼女が初めて本格的に物語舞台に上がってくる、異界と化したバス車内の場面の映像美、色彩美がちょっと洒落になっていませんでした。



全話通じて台詞、映像の切り替えが速く巧いテンポの良さ、崩れない安定した作画、無数の小ネタを散りばめた情報量、曲・映像(や進行に従っての変化などなど)が大きな評判にもなったEDなど良さに溢れた作品だったわけですが。
中でも色遣い(色彩設計:石田美由紀さん。過去の担当作品をみると画面の美しさが目立った作品がズラリと並んでいる)の素晴らしさは際立っていたと思えます。
その凄みにはっきりと気付かされ、瞠目させられたのは、この三話でした。




『キャプテン・アース』第23話「真夏の夜の夢」

監督/五十嵐卓哉
脚本/榎戸洋司 絵コンテ/五十嵐卓哉 演出/吉田徹
作画監督/日下部智津子 メカ作画監督/吉田徹


演劇的で、寓意と暗喩に満ち満ちた作品の、その結晶のような傑作回。


よくまとまった感想としては、ぽんずさんの下記ブログ記事があり。

キャプテン・アース 23話 「真夏の夜の夢」 感想(うつけ者アイムソーリー)」
http://waitingfrofresong.blog.fc2.com/blog-entry-483.html

放送当時の絶賛の数々やその他諸々の感想については下記togetterまとめでも参照してください、ということで。

関連(togetter)
キャプテン・アース』に関するtweetあれこれ(3)※リンク先(以降)が丁度23話感想まとめ。
http://togetter.com/li/689647?page=8

ここで多くは語りません。


『アルドノア・ゼロ』第3話「戦場の少年たち-The Children's Echelon-」

監督/あおきえい
脚本/虚淵玄 絵コンテ/あおきえい、笹嶋啓一(清書) 演出/加藤誠
作画監督/猪股雅美、小林真平、油井徹太郎、奈須一裕、垣野内成美


なんといっても、一連の戦闘シーンです。
D

ユキが撃ち上げた信号弾が示す、強烈な「反撃」への意志。
そして、挿入歌「BRE@TH//LESS」が流れる中での一連の流れが素晴らしい。
特に歌が「Right now」と叫ぶ三箇所。


一回目は伊奈帆の「作戦開始」宣言の直後。

平穏な生活を望み埋もれていた少年が、今ここで引き返せない一歩を踏み出し、覚醒する/してしまう。


二回目はセラム(アセイラム姫)の煙幕弾発射と重ねられています。

和平の使者として理想と決意をもって地球に降りてきた火星の姫は今ここで「避難民たちを逃す囮になる」という伊奈帆たちの決起に「この窮地、この試練私には引き受ける務めがあると感じます」として加わり、慣れない手つきでスモークランチャーを撃ち放つ。


三回目はカーム機の射撃を受けての、スレインの駆るスカイキャリアの反転の場面。

今は亡き(と彼は思っている)アセイラム姫だけをただただ一心に思うスレインはおそらくトリルランが嘲った同胞意識というものより更に強く、姫が掲げた理想を損ないたくないという思いから地球人と戦いたくはない。
しかし、今ここでは向かってくる相手を沈黙させざるを得ません。
※なお、スレインは相手を殺さないように慎重に努めてもいます。
→(リンク先連投参照)https://twitter.com/sagara1/status/513920732930113536


この『アルドノア・ゼロ』という、いっそ異様なまでに繰り返される対照・対称、反復に満ち満ちたアニメ(下記togetterまとめ等参照)が作品として本領を発揮していくのはむしろこれ以降の挿話かとも思いつつ。
掴みとして強烈で、かつ、一つの話数として非常に整った美しさ、魅力を持っているのはこの三話かとは思います。

関連
共に姫を第一に思い続けていたスレインとクルーテオは、なぜすれ違い続けてしまったのか?
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20140830/
ライエ・アリアーシュ特集
http://d.hatena.ne.jp/skipturnreset/20140828/
アルドノア・ゼロ感想まとめ
http://togetter.com/li/701654


『ノーゲーム・ノーライフ』第9話「解離法(スカイ・ウォーク)」

監督/いしづかあつこ
脚本/花田十輝 絵コンテ/浅香守生 演出/青木弘安
作画監督/日向正樹

白が目を覚ますと空は消えていた。まるで最初から存在していなかったかのように、白のスマホの連絡先からも、ステフやジブリールの記憶からも消え去ってしまった空。

確かに空は存在したはずなのに、状況の全てがそれを否定していた。取り乱す白を見て、ジブリールは白が勝負に負け、偽の記憶を植え付けられてしまったのではないかと疑う。
(公式サイト9話ストーリー紹介より)

小説作者が挿絵も手がけている原作の派手で特徴的な色遣いをできるだけ活かしつつ、アニメ向けに引っ張ってきたのかと思える色彩設計
それはこの回において、もっとも素晴らしく活きてきていたのだな、と。


空と白、二人の絆。
二人がゲームに賭けるもの、その才能と覚悟、脆さ弱さ。
求められる「勝利」、その条件とは何か……などなど。
物語としてもぐぐっと魅力的な要素が詰まりに詰まった挿話でもありました。


『Selector infected WIXOSS』第8話「あの契は虚事」

監督/佐藤卓哉
脚本/岡田麿里 絵コンテ/佐山聖子 演出/桜美かつし、吉田りさこ
作画監督/木本茂樹、村上雄、佐野はるか、岡郁美、熊谷勝弘、斎藤美香 総作画監督/吉田優子


Selector1期の中において画も演出も、際立って良かった回かと思えます。
特にアバン後半、るう子の視界を手でふさぐ遊月〜OP開始。遊月の決意と強がった明るさ。
その願いがこの回のうちにどのような形で「叶えられる」ことになったか。


そして、5話と以下のように対比をなす、「遊月」と香月のやりとりの場面。
単に台詞の対応というのでなく、かつての5話の遊月と、8話の「遊月(花代)」の画、仕草、声(というかCV入れ替わってるわけですが)も含めた対比が素晴らしかったと思えます。

5話の該当部分の会話。


昼に一代が自分のルリグである緑子に「いい天気」といって見上げ、東京に越してきてからこんなに空が青いことにきづいていなかったと語った空。
緑子が「降り始めたね・・・・・・」といってから伝えられなかった思いを呟きながら消えていった空。
今はざあざあと雨が降りしきる中、その場面は始まって。


遊月「花代さんが・・・・・・怖くなった。今まで・・・信じてたのに」
花代「捨ててもいいんだよ」「いいんだ、遊月・・・…私を捨てて」
遊月「黙ってて!」


(ノックの音)
香月「遊月?どうしたの?」
遊月「あ…いや、なんでも…」
香月「花代さんとケンカしてた・・・?」


香月「・・・…最近の遊月、何か変だ」
遊月「え・・・」
香月「前は・・・何でも話してくれたのに」
遊月「(小声で)何でもなんて違う……」
香月「いって欲しいよ、頼って欲しいよ、前みたいに」遊月「本当に言いたいことはいえなかった」
香月「僕たち、ずっと一緒だったろ?」遊月「今、言ってしまえば・・・」


香月「遊月・・・?」遊月「何でも・・・うん、ホント、なんでもない!」
香月「やっぱり・・・僕にはいえないんだね・・・」遊月「え・・・」
香月「僕さ・・・ちゃんと姉離れする」

8話の該当部分の会話


遊月「違うのかも」
香月「・・・っ、双子だろ?」
遊月「全然違うところ・・・半分こして、生まれてきたのかも」
遊月「・・・・・・こうしてやっとひとつ」
香月「なんか・・・変だ」遊月「何が?」香月「遊月も・・・・・・みんなも」
遊月「みんなと、何かあったの?」
香月(沈黙)
遊月「なんでも、話して欲しい」
遊月「わたしは、香月の味方だから」
遊月「永遠に・・・・・・香月の」

■関連(togetter)
Selector二期まとめ
http://togetter.com/li/727242
selector infected WIXOSS』5話放映終了後のTL
http://togetter.com/li/662763

余談

※12/20追記。
記事公開の後で気が付いたのですが。
2014年1月1日〜12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。
それって、プリティーリズム・レインボーライブの40話以降も対象になりますね……。
http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/prettyrhythm2013/episodes/episodes01/index.html
50話「煌めきはあなたのそばに」も、49話「命燃え尽きるまで…」も。
48話「私らしく、人間らしく」も、43話「天使の決意」も入るなあ、と。


ただ、10選公開してしまった後なので入れ替えは控えたいなというのと。
「で、このうちからどれ選ぶの?」というの悩まし過ぎるというのもあって選考は変えませんが、なんか、ホント、すみませんという感じです。


余談ですが、候補として考えつつ、悩んだ末に10選から外すことになったのは例えば以下の作品です。


神撃のバハムート GENESIS』2or1話。
ソウルイーターノット!』10話。
ノブナガ・ザ・フール』14話。
ハナヤマタ』2or12話。



また、2014年のTVアニメはこちら

Category:2014年のテレビアニメ
http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:2014%E5%B9%B4%E3%81%AE%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1

を参考に、特に好きだったものを順に並べてみるだけでも。

ピンポン THE ANIMATION
四月は君の嘘
グラスリップ
スペース☆ダンディ
蟲師 続章
ウィッチクラフトワークス
キャプテン・アース
アルドノア・ゼロ
月刊少女野崎くん
Selector infected WIXOSS
Selector spread WIXOSS
ガンダム Gのレコンギスタ
プリパラ
神撃のバハムート GENESIS
ソウルイーターノット!
SHIROBAKO
ラブライブ!
ノーゲーム・ノーライフ
ハナヤマタ
棺姫のチャイカ
未確認で進行形
ガンダムビルドファイターズトライ
ばらかもん

これだけズラりと並ぶことになる、好きな作品てんこ盛りのラインナップでした。
毎週の放送を楽しみつつ、twitter、togetterなどを通じて多くの人の意見を目にしたり、感想を交換して大いに楽しませて頂きました。
来年もまた、多くの素晴らしい作品が放映されることを期待して待っています。