以降、いろいろ(ごく控えめに言って)強引な仮定やその積み重ね、あやしげな推測の濃度が普段より更に色濃い話です……と一応、断った上で。
プリンセス・プリンシパルの中で女王というキャラクターについて、その今後についても過去(プリンセスとの関係)について、私、気になります!という話(憶測)を少し。
※なお、作品全体についての諸々はこちらのまとめもどうぞ。
『プリンセス・プリンシパル』感想等まとめ
https://togetter.com/li/1133020
最初に大まかな流れを書くと。
1:底層の対極としてのロイヤル
2:女王にとってのプリンセス→女王は入れ替わりを知ってはいないか。むしろ最大の共犯者では。
3:予想される女王の犠牲(惨死)
4:プリンセスにとっての女王という人物
5:女王の権力/ノルマンディー公との力関係
といった話となります。
1:底層の対極としてのロイヤル
まず、こちらの6話感想で非常に見事に書かれているように
プリンセス・プリンシパル:第6話『case18 Rouge Morgue』感想(イマワノキワ)
http://lastbreath.hatenablog.com/entry/2017/08/14/193810
6話(おそらく予告の文章からは7話も)作中の下層に生きる人々と社会からの扱われ方が描かれもしていた所。
今後、対極となる上層、王室や貴族達のそれも描かれるのでは……という予想があります。
その際、プリンセス(やかつてのプリンセスたるアンジェ)、ノルマンディー公(、貴族の娘であるベアトリス)に加え、頂点たる女王も重みをもって描かれるのかもしれない、作品全体にも(先程の感想における下層の話のように)大きく意味を持つものとなるのかも…と思えたりもするわけです。
それに、プリンセスが「女王になる」という目標(女王になり、そして自らとアンジェが隔てられず共にいたいと切望するように、人を隔てる「壁」(おそらく即物的なそれに限らない)を崩し望まず隔てられた人々も再び繋げたい)を掲げている所。
◯現女王はどういう人物なのか
◯現女王とプリンセスとの関係
◯王国における女王の権力/ノルマンディー公との力関係
といったあたりはごく自然に重要になるのではとも思えます。
もちろん、これまで描写がごく限られている女王について現時点で言える確たることはごく僅かだとは思えるのですが。
幾つか推測と言うか憶測はできるのかもしれません。
ここでひとつ、特に興味深いのはプリンセスとの関係です。
中でも。「女王は入れ替わりを知っているでは?むしろ最大の共犯者では」と憶測したくなる所があります。
2:女王にとってのプリンセス→女王は入れ替わりを知ってはいないか。むしろ最大の共犯者では。
アンジェとプリンセスの入れ替わりの経緯は今のところ、ごく僅かな回想や会話をもってしか描かれていません。
まず、二人がなんのために入れ替わっていたのか(現時点では)分かりません。
気まぐれだったのか、切実な欲求に押されてのことだったのか、幼心に抱いた強い目的があったのか、それらの複合なのか、等々。
また、シャーロット=かつてのアンジェの立場が「プリンセス」であることは確かな一方、入れ替わったアンジェという少女はどのような生まれと境遇の少女であったのかも大きな(そしてきっと重要な)謎です。
3話アバンでの
「言ったでしょう……あなたの力で私を女王にして欲しいの」
(回想カットを挟み)
「まさか……あの時の約束」
という「約束」も魅力的な謎としてあります。
それでも、3話時点の10年前、彼女たちが7歳ほどの時に入れ替わっている時に革命が起き、他の多くの人々と同じく二人が唐突に分かたれたのだろうとは概ね推測できます。
ここで、そのわずか7歳の少女たちが行った入れ替わりが、彼女たちも含め予想し得ない分断によって継続され、そのまま10年に渡って問題とされることなく無事に続いている……。
改めて考えてみるなら、たとえプリンセスが権力構造の中で「空気姫」だとしたところで残されたプリンセスがただ一人で成し遂げるのはあまりに難しかったのではなかったかと思えないでしょうか。
そこで個人的に「そこには強力な協力者、共犯者がいたりはしなかったのだろうか?」といった仮定を弄びたくなったりしてしまうわけです。
以下、もう少し詳しく書きます。
革命、そして壁はこれまで繰り返し描写されてきたように唐突に人々を壁のそれぞれの向こう側、The Other Side of the Wallに分断してしまったものです。
2話でプリンセス(に化けたアンジェ)が語ってみせたように、突然幼なじみで長年連れ添って来た妻と離れ離れとされ会えず、致死の病を抱え再会を望んでいたモーガン委員。
6話ドロシーが語った、家出をした時に唐突に革命に遭い、そのまま父と分かたれた過去。
そして1話。
(なお、キャプチャ部分のアンジェの心情も勿論、「薬で黙らせて、エリックだけ運び出す」とアンジェが語った時のプリンセスの表情の変化、そしてその語られざる内面(現時点では特に6話アンジェと二人きりの時に話すプリンセスの夢・切望・野望・目標が参照先になるだろう)はとてもとても興味深いところです)。
更に、3話アバン冒頭(文字通り最初の台詞)。
「驚いたわ。あなたがスパイなんて」
「他に壁を越える方法がなかった」
他の人々と同じく二人の少女もまた、あまりにも突然にこうして厳しく分かたれるなどと、想像も想定もしていなかった筈です。
それから10年以上に渡り互いに分かたれた中で入れ替わりを続ける覚悟も、そのための準備も(とりわけ7歳の少女たちに)出来得なかったのではと思えます。
かつてのシャーロット、アンジェはただひたすらかつてのアンジェ、プリンセスとの再会を願った。
ただただひたすらに一途に、そのためにスパイとなった。
きっとOPで落下するプリンセスに向かって一閃、その思いをそのままに示すかのごとく激しくまっしぐらに飛翔していく姿のように。
そこにはきっと、とても魅力的な心の動きと物語が(仮に詳しく描かれることがなくても)あったのでしょう。
そして、一方のプリンセス。彼女の方はなぜ、そもそも<プリンセスであり続ける>ことを選んだのか。
これも実は同じくらいに、あるいはそれ以上に魅力的な謎であり物語かと思えます。
叶えたい目標(「あの時の約束」)があったからか。入れ替わりが露見した時の、本物のプリンセスたるアンジェの身を案じたからか。
いずれにせよ、急転する事態にただ流されるだけではこうはなっていないでしょうし、なりえない状況だったかと個人的には強く思えます。
そして、きっとそうした時、ただ流されるだけのキャラクターではない、まさに正反対のキャラクターなのだろうとも。
例えば4話、あの勁烈な意志に満ち満ちた欄干の場面を(できれば前後の連投も)。
例えば5話、独りで乗り込んでくるや否や瞬く間に堀河公の護衛を撫で切りにした100人斬りの怪物が、ちせと激しく切り合う脇をあえて敢然と駆け抜けた姿を。「これよりずっと細くて脆い橋の上に私は立っているんです」のプリンセスの足だけを映すシーンで足は苦しく震え続けているのだけど、前後も含めその声はまったく揺るがず、表情もその前には平然と微笑み、その後は厳しく見据えるという人物描写。#pripri
— 相楽 (@sagara1) 2017年7月30日
自分の安全を最優先しても十分妥当なところ、列車を止めるため百人斬りが自分を狙い振り下ろしすんでの所で防がれた刃の脇を軽やかに身を翻し迷いなく走り抜ける……自らの身の危険にはそう対するプリンセスが他者の犠牲を物語る血痕には立ち竦む……優れたキャラクター描写なんだよな。#pripri pic.twitter.com/VlP2BEZjay
— 相楽 (@sagara1) 2017年8月6日
これまでのごく限られた描写を思い起こすだけでも、そう想像せずにはいられないところです。
そして更に。
一方のアンジェが絶対に諦められるわけもなく一刻も早く叶えたい切望……プリンセスとの再会と二人で共に暮す未来のため、単に一人の少女ではどうにもならないからスパイとなりCボールを得たように(おまけに再会の時にはCボールなんて超貴重な秘密兵器まで与えている組織を欺き切れると判断した仕込みも、逃走ルートも、落ち延び先の家まで用意していたように)。そこまで方向性も成果もなにやらぶっ飛んだことをやってのけてきたように。
もう一方のプリンセスもそれに匹敵するあるいは(いつもプリンセスがアンジェに対して……とりわけ二人だけで接する時は優位であるように)なお上回ることを選び、成し遂げてきてたのではないかな、と。
※まったく隠す気もないのでいい加減丸わかりかもしれませんが、自分はあからさまにプリンセス贔屓ですので、そこは割り引いて読んでもらえるといいかもしれません。
例えば、アンジェが持つ貴重で強力なCボール(4話で描かれたように世界の動向すら左右する力の象徴でもある)に匹敵する切り札も持っていたりしないのかな、と。
例えば、国の(あとで触れるように権力構造的にはやや怪しいのですが少なくともある程度の力を伴った権威、象徴としては)頂点である、女王との共犯関係ですとか。
あるいは、こういっても良くて。
それほどまでにして自らの元に再び現れたアンジェの懇願を拒んででも、プリンセスがどうしても成し遂げたい目標。
単に一人の少女では勿論、力のない「空気姫」ではどうにもならないことに対して、(約束されていたわけでもない)10年もの年月を経たアンジェとの再会(しかも彼女がスパイになるだのCボールを携えているだのなんてことは想像もしていなかった)の前まではたしてプリンセスは何をしてきていたのかな、と。「親、兄弟、恋人、友人、壁によって離ればなれになったひとたちは大勢いる。いつか彼らの声が揃う時が来るわ、大きく、波のように」一話、二話の「彼ら」に向けたプリンセスの思い……ということで、例えばこのようにしてその内面、在り方が提示されていくキャラクターなんだろうな。#pripri
— 相楽 (@sagara1) 2017年8月13日
ここで、5話であのノルマンディー公が「東洋の島国に興味はない」のにわざわざあれだけ仕込み仕掛けさせる、それだけ警戒させるに値する何かをやらかすなり積み上げるなりしてきているんだろうなと思えるわけです。
逆に言うと、アンジェが現れるまで無策だったとはむしろ思い難いな、と。
4話で本は単に本ではなかったように。6話で積まれた本と山ほど差し込まれた栞が示唆するものは、
単に知識の研鑽や思考に留まるものではないのでは、と。ただ「待つ」のでも十年1人で無為に「待って」来たわけでもなく、アンジェが凄腕のスパイになったようにこちらも……と示唆する積まれた本と無数の栞。#pripri
— 相楽 (@sagara1) 2017年8月13日
冒頭書いたように(結構無茶な)仮定に仮定を重ねた話では勿論あるのですが、例えばそうだったら面白いな、嬉しいなと思えるわけですね。
そこを十分十二分に面白くし得る何か、極めて困難だっただろう7歳の少女たちの入れ替わりからの「プリンセス」であることの継続を成し遂げ得た理由、その二つの解になり得るものとして「女王との共犯関係」は面白かったりしないかな、とも。
ちなみにプリンセスというキャラクターについて「女王になるなんて目標を掲げているのに、なぜベアトリス以外と親しくしない(人脈を築き力を蓄えようとしない)のかな?」といった疑問を見かけたことがありますし、それ自体は割とまっとうな問い掛けとも思えるわけですが。
それについても「女王との共犯関係」という極めて強力(かつ、反面として下手に協力者を広げるとリスクが高くなってしまう)な切り札を最初から持ちそれに沿って諸々仕込みを進めていたから、という話だったりすると楽しいかなと。
そんなことを考えるなり妄想なりしつつ、ドロシー曰く「女王のお気に入り」だと語られるプリンセスと女王の描かれざるこれまでの在り方や、4話でノルマンディー公が脇に控えての……控えていつつ、強烈な押出しをみせ口出ししつつのやりとりを振り返ってみたりすると、いろいろと捗る……もとい面白いところがあったりなかったりするかもしれません。
そして、女王の今後(とプリンセス)については現時点でだいぶ物騒な話を予想することも一応、可能であったりはします。
3:予想される女王の犠牲(惨死)
4:プリンセスにとっての女王という人物
二つの項目を挙げましたが、ここではひとまとめとして扱います。
そしていきなりですが、話の前提と(してしまうものと)して。
5話の列車の顛末はこの作品全体の過去と未来とを暗示してはいないか、という話があります。
詳しくは先掲まとめの5話関連、
https://togetter.com/li/1133020?page=7
2017-08-10 19:48:58からのインクエッジさんの連投と関連する自分のtweetを参照してもらえればと。
えーと……といいますか、この項の結論まで概ねそこに書いてあったりしますね。
一部抜き出してまとめると。
プリンセスとアンジェが並走し衝突を回避させ停止させる列車をそれぞれ王国と共和国とに見立てた場合。
その制御部分である機関室についても後者は「コントロール」、前者は王室と重ね得るだろう、と。
ならばそこにあったプリンセスを立ちすくませた血痕はその場でのそれそのものという以上に何の暗喩と見て取り得るか……いう話です。
また、5話との絡みでいえば、ちせにとって実の親である十兵衛との対決が描かれていた一方、回想もなく画面にはその姿も声もちせと過ごした日々も直接描かれはせずとも、ちせを愛し育てそしてその実父に殺された義理の親が決して小さくない存在として在ったところ。
もしも仮に7歳の入れ替わりの時からプリンセスと女王に(周囲の認識より遥かに)密接な関係があったとすると、また入れ替わりも承知の上であったとするとそれは情愛の通い合った(実の家族に匹敵あるいは越える)義理の家族と見て取れるかもしれません。
1話の時点で入れ替わりの示唆として出されていた(主にアンジェについての演出だと)と自分も思っていた
ところで1話冒頭の王室の写真の見せ方とか、Aパート最後、プリンセスとベアトリス、「アンジェさんってどこまで本当かよくわかんないです」(中略)プリンセスの顔をした少女と母の写真を映しながら「でも、言っているうちに本当になる嘘もあるわ」って、どうなんだろな。
— 相楽 (@sagara1) 2017年7月9日
ここも、プリンセスと女王の関係においても味わい深いものとして見えてくる……ととても面白いです(妄想力を高め、高まるままに身を任せるのです……)。
※なお、1話放送すぐの投稿ということもありアレなところもあって、4話で女王が「孫娘に犠牲になれと」と語ったように「少女と祖母」ですね)。
5:女王の権力/ノルマンディー公との力関係
最後に作中の王国における女王の権力について。
プリンセスはまず女王となることを目指すわけですが、女王が作中の王国の権力構造においてどの程度実質的な力を持ちえているのかは……今のところは正直、詳しくは分かりません。
「空気姫」などとも言われつつも、一族で継承順位4位であるプリンセスでも様々な場で丁寧で特権的な扱いを受けてはいますが、そこらへん、権威と権力の区別が難しくもあったり。
先程も触れた4話において脇に控える(にしては態度も大きい)ノルマンディー公と女王との関係も(少なくとも表面的には)ノルマンディー公優勢、単に助言ではなく、概ねその意向が強く(また国益にも沿うものとして妥当性も持つものであるならば)出されれば女王は逆らい難いといった描写にも見えます。
ベアトリスも、女王の覚え目出たいプリンセスであっても、それでは後ろ盾として危うすぎると有力貴族たちの名前を挙げ心を痛め決意を固めていたりもしました。
権威としてかなり威光は強く「君臨」している一方、統治においてはおよそ絶対的とは程遠い、といったところでしょうか。
6話の二人の会話でアンジェが懸念した通り、仮に女王となれたとしてもプリンセスの夢への道はきっと、あまりにも険しいのでしょう。
しかし、でも、、だからこそ女王の側からも「孫娘」と密かな共犯関係を持つ動機や意味が有り得るのかもしれませんね(かなーーーり我田引水っぽい話ですが)。
以上、だらだらと長くなりましたが、(特に内面に関わる)描写が少なく謎が多くそこが大きな魅力であるプリンセスと、それ以上に描写が少ない女王は実はこの作品の発端である10年前から密接に関わっているかもしれず。女王というキャラクターもまたプリンセス同様に面白く、そしてそこを掘り下げていくと外見も言動も抱える秘密も野望も欲も……存在全てが最高の上にも最高なプリンセスというキャラクターについて魅力的に妄想していくことができてちょっと面白いですよ……という話でした。
本編6話放送時点でのだいぶ無茶な与太話として、ご笑覧頂ければ幸いです。やってることが完全に暇人のそれ pic.twitter.com/D60TCV27mz
— 熊沢 (@1xw32) 2017年8月16日