ダン・シモンズ『エンディミオンの覚醒』〜各々の最大の見せ場が「書かれなかった」キャラクター達の魅力

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)


…………。


読んでいるうちに、少しばかり、マイナス方向に言いたいことが出続けてきたシリーズ最終巻だったけど、そこらへんはあんまり率直に書いてしまわない方がいいかもしれない(書くほうも読むほうも、あまり面白く思えないことだろうから)。


ただ、シュライクの正体については、訳者による解説をみて、思わず膝を打ってしまった。そう、「それを抜きにしてこの物語は語れない!」
でも、そこに一言付け加えると、あえて、その解釈を強く裏づけ過ぎるようなことが「語られなかった」ことが、自分としてはむしろ嬉しい。
------だって、魅力的であり続けたキャラクターって、重要部分が「語られなかった」人物ばかりだから。
《決戦、大堕天使VS大天使軍団!》という最大の見せ場が読者の想像に任せられたデ・ソヤと愉快な仲間達。
同様に、火星での奮戦は結果のみが伝えられた、兵士の中の兵士。
そして------ジョン・キーツ!


逆に言えば、壮大な物語の幕を閉じるにあたり、多くのことが語られなければならなかったけれど、語りが詳細なものとなった部分は、正に丁度その分だけ、大きく大きくその妙味が損なわれてしまったと思う。
------しかし、それでも、このシリーズが他を引き離した圧倒的な魅力に溢れていることは疑いない事実。
なんだかんだ文句はいっても、まず何よりも、これほどの物語を読めたことを嬉しく思う。