ダン・シモンズ『エンディミオン』上・下巻(酒井昭伸・訳)〜ここまでのシリーズ最高傑作。

エンディミオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

エンディミオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)

各巻500ページを超える、相変わらずの分厚さ。
そのくせ、読み終えても様々な謎の核心は一向に見えてこない。次の『エンディミオンの覚醒』(こちらも上下巻で、しかも、今度は各600ページ以上って一体なんなんだ。まあ、これだけ面白ければ全く文句なし、むしろ大変嬉しいけど)でそこらへん、全部謎解きがされるんだろうか。

しかし。そんなことはまぁ、どうでもいい。
重要なのは、ぼやくヒーロー、主人公ロール・エンディミオン君の魅力なわけで。そして、幼いヒロイン、アイネイアーに向けられるその視線。彼女自身のキャラクターというよりも、彼女を思うエンディミオンの心情を技巧の限りを尽くして共有させられることが、たまらなく楽しい。
勿論、解説にあるように、ある意味主人公たち以上にいわゆるヒーローらしい人物である、デ・ソヤ神父大佐と愉快な仲間達の素晴らしさも特筆モノ。
そして、個人的にはなにより、宇宙船&その分身のコムログ君のファンになってしまった。


……ただ、面白さのピークは、マーレ・インフィニトゥス(無限の海)のあたりにあって、終盤は妙に低調だったと思うのは個人的な趣味の問題だろうか。


それと、

「それはさておき」ぼくはいった。「あの詩に対する一般的な反応は------というのは、婆さまに聞いたことなんだが------あの感傷的なくだりが、せっかくの詩をだいなしにしてる、というものだったそうだ」

という一節(p337)には笑った。
うん、正直言えば、そう思って当然かと。ただ、あまりに《なんだかなぁ》な話だったので、「きっと今後どんでん返しがあるだろう」と考え、ゴチャゴチャ言わずに先を急ぐことにした来ていたのだけれど。
……ひょっとしてこの話、掛け値なしに《言ってることそのまま》ということだったりするのか。もしそうであるのなら、その面でもある意味凄い。好きだなぁ、そういうの。