梶尾真治『おもいでエマノン』

おもいでエマノン (徳間デュアル文庫)作者: 梶尾真治,鶴田謙二出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2000/09/01メディア: 文庫購入: 10人 クリック: 99回この商品を含むブログ (73件) を見る大傑作の表題作に尽きる。「さかしまエングラム」「ゆきずりアムネジ…

梶尾真治『美亜に贈る真珠』

美亜へ贈る真珠―梶尾真治短篇傑作選 ロマンチック篇 (ハヤカワ文庫JA)作者: 梶尾真治出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2003/07メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 16回この商品を含むブログ (57件) を見る(そちらもごく最近読んだSFの名作)ロバート・F…

森岡浩之『星界の紋章』『星界の戦旗』

とりあえず<星界>シリーズの既刊を読み通してみての印象は、「とてもカッチリとした構成で物語を編む人だなぁ」というもの。まず、このシリーズの魅力の核心は、アーヴという種族の創造と、その結晶であるラフィールというキャラクターにあることは誰の目…

遠藤徹『弁頭屋』〜あまり美味しそうじゃないなぁ。

弁頭屋作者: 遠藤徹出版社/メーカー: 角川書店発売日: 2005/10/26メディア: 単行本 クリック: 2回この商品を含むブログ (15件) を見る表題作にせよ、「赤ヒ月」にせよ、あまり《食欲》の面で美味しそうじゃないなぁ。 およそ傾向が違う作品ではあるけれど、…

A・ブラックウッド 他『怪奇小説傑作集1 英米篇Ⅰ』(平井呈一・訳/創元推理文庫/新版)〜平井訳の妙味

怪奇小説傑作集 1 英米編 1 [新版] (創元推理文庫)作者: アルジャーノン・ブラックウッド,ブルワー・リットン,ヘンリー・ジェイムズ,M・R・ジェイムズ,W・W・ジェイコブズ,アーサー・マッケン,E・F・ベンスン,W・F・ハーヴィー,J・S・レ・ファニュ,平井呈一…

ダン・シモンズ『エンディミオンの覚醒』〜各々の最大の見せ場が「書かれなかった」キャラクター達の魅力

エンディミオンの覚醒〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダンシモンズ,Dan Simmons,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2002/11/01メディア: 文庫 クリック: 12回この商品を含むブログ (74件) を見るエンディミオンの覚醒〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダ…

ダン・シモンズ『エンディミオン』上・下巻(酒井昭伸・訳)〜ここまでのシリーズ最高傑作。

エンディミオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダンシモンズ,Dan Simmons,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2002/02/01メディア: 文庫 クリック: 19回この商品を含むブログ (77件) を見るエンディミオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダンシモンズ,D…

ダン・シモンズ『ハイペリオンの没落』(酒井昭伸・訳)〜フィドマーン・カッサード大佐に栄光あれ。

ハイペリオンの没落〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダンシモンズ,Dan Simmons,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2001/03/01メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 30回この商品を含むブログ (96件) を見るハイペリオンの没落〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)作…

夏目房之介『手塚治虫の冒険―戦後マンガの神々』/伊藤剛『テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ』

手塚治虫の冒険―戦後マンガの神々 (小学館文庫)作者: 夏目房之介出版社/メーカー: 小学館発売日: 1998/06メディア: 文庫購入: 2人 クリック: 17回この商品を含むブログ (21件) を見るテヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ作者: 伊藤剛出版社/メー…

フレデリック・ブラウン『天使と宇宙船』(小西宏・訳)

天使と宇宙船 (創元SF文庫)作者: フレドリック・ブラウン,小西宏出版社/メーカー: 東京創元社発売日: 1965/03メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 38回この商品を含むブログ (36件) を見る最近読んだ『未来世界から来た男』も含めての二冊で、《昔に読んだ記…

ダン・シモンズ『ハイペリオン』下巻(酒井昭伸・訳)〜この豪華絢爛な闇鍋は、ともかく美味しい。

ハイペリオン〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダンシモンズ,Dan Simmons,酒井昭伸出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2000/11/01メディア: 文庫購入: 16人 クリック: 292回この商品を含むブログ (156件) を見るハイペリオン〈下〉 (ハヤカワ文庫SF)作者: ダンシ…

小松左京『ゴルディアスの結び目』〜なんだかなぁ。

ゴルディアスの結び目 (ハルキ文庫)作者: 小松左京出版社/メーカー: 角川春樹事務所発売日: 1998/04メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 31回この商品を含むブログ (21件) を見る感想------なんだかなぁ。 個人的には余り好きになれなかった短編集。 膨大な知…

ジョン・ファウルズ『コレクター』(小笠原豊樹・訳)

訳者解説とめいいっぱい重なる感想だが、作者自身が監禁者・被害者双方に分裂して描かれつつ、それぞれがある種の時代精神を反映、象徴しているようにみえるのが興味深い。 ただ、同じ作者の『魔術師』ほど面白くは無いと思う。というか、『魔術師』が凄すぎ…

ジョージ・R.R.マーティン『タフの方舟Ⅱ 天の果実』(酒井昭伸・訳)

ほぼ全面的に二分冊の全巻を上回る、皮肉なユーモアとますます慇懃無礼なタフの態度が印象的。ただ、<鋼鉄のウィドウ三部作>の最後を飾る「天の果実」の最後は、物語としてのカタルシスが高まれば高まるほど、背景にある《現実》の問題のうんざりする救い…

ジョージ・R.R.マーティン『タフの方舟Ⅰ 禍つ星』(酒井昭伸・訳)

しばらくのうちは「なんだかうるさいジャーゴンだらけで、人物造形もステロタイプなイマイチな話だなぁ」という印象。 ただ、表題作の中盤あたりから、これがひたすら実に魅力的な主人公タフことハヴィランド・タフィを描く、キャラクター小説なんだという認…

関容子『日本の鶯 堀口大學聞書き』〜もう一人の《私》がいる。

「最後に、セロリを女性に譬えた忘れ難い例を引かせていただきましょう。堀口大學の言葉です。関容子さんの絶妙の筆によって再現されています。ある方について、関さんが、どんな女性だったかを問いました。詩人はこう答えました。 《------中の芯コばかりに…

山田風太郎『八犬伝』〜否定》を《否定》し、自らは何ものにも《殉ずる》ことが出来ない人間でありながら、ひたすらに《殉ずる》ことの《美》を描き出す。

風太郎自身の姿はまず、南北の中にこそ宿っている。 この作品は、山田風太郎が自身の姿を二人の作家に、かなりストレートに仮託して描きぬいた傑作だと思えます。 更に言葉を重ねれば、《否定》を《否定》し、自らは何ものにも《殉ずる》ことが出来ない人間…

小川一水小論(?)〜主に『復活の地』などを想定しながら。

以下、Mixiに載せた『復活の地(3)』レビューの転載。 そういう事情で、語尾がですます調に……。まあ、いいか。 以下は、『復活の地』という一つの作品について、というより、小川一水という作家についての感想のようなものです。 まず、大前提として、この人…

小松左京『果てしなき流れの果てに』〜偉大なる元祖、ということだろうか。

小松左京『果てしなき流れの果てに』読了。自分にとって、非常に馴染みのある種類の思想・哲学が語られる作品。ただ、《馴染みがある》というのは、むしろ、こうした作品が1965年という時点で書かれたことを一つの源流として、その流れを継ぐような作品が生…

山本弘『幸せをつかみたい! サーラの冒険⑤』

数日前、十年振りに続編が出ていたことを知った、かつて随分とのめりこんだTRPGとその周辺のファンタジー小説の分野で特に好きだったシリーズの最新刊。 冒頭からしばらくは、TRPG絡みの小説特有の欠点------やたらとキャラクター名や道具名が不自然に連…

寺山修司『誰か故郷を想はざる』〜《時代》が抱える病と《個人》について

これも例の3/18にあった北村薫の講演絡みで読んでみた本で、「九条今日子の回想録の前に、まずは本人のものを」ということ。 何よりもまず、一冊の本の中に溢れるように詰まった《自分の歴史を作り直す》屈折した情熱の強さに圧倒された。 巻頭を飾る「汽笛…

アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ』(中田耕治・訳)〜凄いなぁ、ひたすら凄いなぁ。

アルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ』(中田耕治・訳)、冲方丁『マルドゥック・スクランブル"-200"』(SFマガジン2004年2月号。飛浩隆「ラギッド・ガール」も掲載されていたもの)読了。 『虎よ、虎よ』かぁ……。 最近、飛浩隆、小川一水絡みで続けて読んでい…

グレッグ・イーガン『順列都市』(山岸真・訳)

白旗揚げて、一言、「凄い」。 とても手に負えないので、感想は以上。

南條竹則・編訳『イギリス恐怖小説傑作選』〜見事な訳、見事な作品選択。

なぜ「北村薫関連作品」のカテゴリになるかは、2006/3/19の「ミステリ読むこと書くこと〜講師:北村薫×杉江松恋」講演の記録を参照。 そして、この本に収録された作品は以下の通り。 ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ「林檎の谷」 H・R・ウェイクフィール…

『ファンタジーの宝石箱 第一集 人魚の鱗』

2006/3/19の日記で触れた、池袋コミュニティ・カレッジ講座「ミステリ読むこと書くこと〜講師:北村薫×杉江松恋」で話題になった本の一つ。 収録された作品のうち、印象に残った幾つかの作品について軽く感想を。 川上弘美「ミナミさん」 この人の小説につい…

飛浩隆「デュオ」「象られた力」〜初出の形と『象られた力』収録版の比較(とりあえず、今後まとめる予定の概略を)

飛浩隆「デュオ」「象られた力」の文庫収録版と初出の形の比較なんかも、早くまとめあげたいのだけれど……。 この機会に、簡単に大筋だけ書いておいてしまうか。 「象られた力」は最初、テーマの背景が《ミーム》をメインにしつつ、レトロウィルス-------とい…

TRPG関連よもやま話と、今更になってようやく知った事実〜『サーラの冒険』、2005年7月に新刊が出てただって!?

……ところで、これはめいいっぱい北村薫とは縁遠い話だが、『紙魚家崩壊』収録の「サイコロ、コロコロ」で出てきた、「赤い十面のサイコロ」という言葉を見て、反射的にTRPGが思い浮かんでしまう人って、今、どれくらいいるんだろうか。いや、今も昔も、常に…

野阿梓『兇天使』〜なんだかえらく馴染みのある考え方だ……。

ところでやっぱり野阿梓氏の最高傑作は『兇天使』ですよねえ。飛の日本SFオールタイムベストワンはやっぱこれかな、今回のSFマガジンでは投票を棄権しましたけど。 野阿氏の文章力は飛の4億倍くらいある上に、『兇天使』はテーマ、アイディア、キャラク…

飛浩隆『グラン・ヴァカンス』読了〜「飛浩隆読み込み強化月間」開始。

……これの感想をゴチャゴチャと-----例えば、他の作家と絡めて考えるなら、「SFのセンス・オブ・ワンダーと、山田風太郎の忍法帖ものの凄惨な鮮やかさのアマルガムのような異常な作品だ」とか、奈須きのこ『空の境界』や、TYPE-MOON『月姫』『Fate/stay night…

神林長平『鏡像の敵』〜初期作品の掘り起こしの事情はわからないでもないけれど……。

初期の傑作集ということで、1987〜1989年頃発表の作品を集めた短篇集。 ……って、あれ?神林長平は1979年デビューなんだけど、この時期でも「神林長平初期傑作集」(裏表紙より)って言っていいのか?? で、内容に関しては……なんだかどれもこれも、これまで…