日日日『ちーちゃんは悠久の向こう』〜直球で瑞々しい《反世界》もの。


ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

各種ライトノベル系の新人賞を幾つも受賞し、大きな注目を集める現役高校生作家のデビュー作。
瑞々しい直球の《反世界》もの。ただ、このジャンルの作品は瑞々しいというのは、大概浅さに直結せざるを得ないものでもあり、この作品も例外ではないと思う。


そして、これは極めて《素直》な作品でもある。乙一の『夏と花火と私の死体』と必然的に比べられることが多いと思うが、少なくともデビュー作の時点では、描く世界のかたち、その描き方のユニークさともに遠く及ばないと思う。ただ、それは乙一のアレが凄すぎるというということで、無論この作品も作者の年齢を考えると凄いシロモノだとしかいいようがない。


ところで、いわゆる早熟型の人には、いろいろなバリエーションがあるが、なんとなくこの人、栗本薫中島梓あたりに似たタイプになるのではと思う。

何か強烈きわまる《負》の感情に引き返せないくらい蝕まれていて、それからもがき逃げ回るように多くのジャンルに進出し、それぞれの分野でいずれも強烈に攻撃的な作品を生み出す類の作家(栗本薫中島梓は十数年前あたりを境に、それまではどうにかこうにか押さえ込んでいた《負》の情念が、個々の作品というよりもはや作家そのものを呑み込んで壊したい放題に壊してしまったようだけれど)。
このタイプは、「根底にある、ほぼ無条件の被害者意識を、どれだけそのまま噴出させてしまわずに昇華させるか」が勝負のように思えるが、この人の将来はどんなものになっていくのだろうか。そういう意味で、あの作者の後書きはなかなか興味深いと思う。