岡嶋二人『クラインの壺』〜そうであるべき結末あるいは結末の不在

クラインの壺 (講談社文庫)

クラインの壺 (講談社文庫)

技術としての実現性云々は問題ではなく(これは『99%の誘拐』も同様)、描かれたイメージこそが重要。
何より、読んでいて素直にエンターテイメントとして引き込まれるのがスゴイ。読むほうもあまり理屈をこねずに楽しみたくなる、疾走する感覚。
結末について、(以下、ネタバレのため白文字記述)言うまでもないことだけど、読者が「結局、彼がいる《現実》はどれだろう」ということをはっきりさせることは出来ない。《出来ない》状態を描くことこそが、『クラインの壷』というこの作品の眼目であるわけだから。