天冥の標VIII ジャイアント・アークPART1 (ハヤカワ文庫JA)
- 作者: 小川一水,富安健一郎
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/05/23
- メディア: 文庫
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「すべての因果がめぐる第8巻」。
帯の文句に偽り無し。
『天冥の標VIII ジャイアント・アークPART1』はここまで巻を追ってきて抱いた高い高い期待の、更に上を行く面白さ。
冒頭「断章八九」からシリーズ過去最高に魅力的だったし、第一部の部の題名見た時点で「うおお……!」という感じだったし、本当に帯の売り文句通りの展開だったしで……なんだかもう、たいへんだ。
「時間的にも空間的にもテーマ的にも壮大で魅惑的な技術も乱舞する物語と、家族の物語とを密接に組み合わせる」
以上はたとえばリチャード・パワーズあたりが得意とする手法だけど(いろいろ落ちるかとも思うけど、チャールズ・ストロス『アッチェレランド』なども)。『天冥の標』は、その極北をいっていることもその魅力の大きな一部分なのだろうと思わされる。
その家族の一つ、セアキの系譜においても一際魅力的なあの「奥様」、アイネイアの祖母エレオノーラにはぜひ、再登場を願いたいと思わずにはいられない。
ここで、あまりにも錯綜した因縁・因果が縒り合わされていく巻の中で、『Ⅱ救世群』から続く医師団(リエゾンドクター)の系譜を示す「カドム」の名前の由来(児玉)が、その母と共に時の彼方に失われた……というエピソードも印象深かった。超克されるべき恩讐が示される一方、誇るべき伝承もまた喪われる。
そして、この一巻において「医師団」「宇宙軍」「恋人」「亡霊」「石工」「議会」「救世群」全ての系譜や(それにまつわる家族、一統、一団(「恋人たち」)などの)因縁・因果が見事にまとまって示された一方で。
それら全体を覆う真に最も重要な二大勢力の対立の構図も明確に示されて。
その上で二大勢力が元々自由意思も高い知能も持ち合わせなかった単なるAIとロボットであった、フェオドールとカヨとに象徴・代表され、最高の場面で最高の振る舞いをみせる……というのも素晴らしい上にも素晴らしかった。
なお、なにやらダダーのノルルスカインがイサリの問いに答えて、眉村卓『司政官たち』シリーズやその影響を濃厚に受けての作者の過去作『導きの星』を思わせるような殊勝さを覗かせていたかのような描写もあったけれど。
あれはどこらへんまで額面通りに受け取ってよいものなんだろう。
難しい。
- 作者: 眉村卓
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- 発売日: 2008/01
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導きの星〈1〉目覚めの大地 (ハルキ文庫―ヌーヴェルSFシリーズ)
- 作者: 小川一水,村田蓮爾,反田誠二
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※5/30追記
「天冥の標VIII ジャイアント・アークPART1 by 小川一水」(基本読書)
http://d.hatena.ne.jp/huyukiitoichi/20140524/1400979419という評での「途絶えるもの」を経ての「常識の崩壊」での言及がいろいろ面白くて。
先掲のように「超克されるべき恩讐が示される一方、誇るべき伝承もまた喪われる」なんて偉そうに書くならば。
当然に触れるべきことが適切に書かれていると思います。orz