『THE FUTURE IS JAPANESE』 (ハヤカワ「Jコレクション」)

THE FUTURE IS JAPANESE (Jコレクション)

THE FUTURE IS JAPANESE (Jコレクション)

フィリップ・K・ディック賞特別賞を受賞した伊藤計劃『ハーモニー』ほか、
日本の翻訳出版を精力的に進めるHaikasoru。
同レーベルから刊行された、
日本がテーマのアンソロジーをJコレクションにて凱旋出版!


日本作家は、円城塔小川一水菊地秀行の書き下ろしに、
飛浩隆星雲賞受賞短篇「自生の夢」再録、
伊藤計劃の傑作「The Indifference Engine」英語版をそのまま収録。



いっぽう海外作家は、ネビュラ賞受賞のケン・リュウ
ローカス賞3部門同時受賞のキャサリン・M・ヴァレンテという本邦初訳の新鋭から、
大御所ブルース・スターリングまで、書き下ろし8篇を訳載する。
(amazon掲載「内容紹介」より全文引用)


以下、感想です。


海外作家ではケン・リュウもののあはれ」が「ああ、オリエンタリズムですね」というステロタイプなのだけれど、でも、割と好き。
他の国外のみなさんの収録作は、読んでみて、申し訳ないのだけどあまり強く関心を惹かれるところがなかった。


円城塔「内在天文学」。
「空の光は全て星の光であって」(p80)という一節が《原文は「天の光はすべて星」と書いて英訳の時にそれを汲まないで訳され、再度日本語に戻してこうなりました》という頼まれもしない架空の手続きを経た仕込みというか、楽しい悪戯という感が。
全体の感想としては「いつもの手法を、かなり意図的にラファティっぽく書いてみました」という印象。


そして、問題作(?)小川一水「ゴールデンブレッド」。
うん。外国の読者も作家も山崎「ゴールドソフト」知らないと思う。わかってやっているギャグであり、ある種の皮肉でもあると思えたのだけど、考えすぎなのだろうか。
ともあれ、作品全体が安易なオリエンタリズムと「分割して統治せよ」という世界各地で英米が仕込んだやり口に対する返し技になっていて、実はとても底意地が悪い一篇だと思った。


ほかの収録作では菊地秀行「山海民」は単体ではそれなりに好きなのだけど、でも、たとえば上田早夕里「リリエンタールの末裔」あたりとどうしても比べてしまうので……。
なお、飛浩隆『自生の夢』は何度読もうが、いつでも圧倒的に輝いてる。