アニメ『86 エイティシックス』7話&22話の花火描写について

f:id:skipturnreset:20220330185307j:plain

『86』7話より。

f:id:skipturnreset:20220330193215j:plain

『86』22話より。

 

 

アニメにおいて、花火は非常にしばしば象徴的な形で用いられる。

f:id:skipturnreset:20220330200619j:plain

ごく最近でも例えば『その着せ替え人形は恋をする』12話では、実写はめ込みと見まごうばかりの華麗さで咲き誇る(花火のコスプレだ)、これまで想像もできなかった楽しい瞬間の、でも来年もまた二人で迎えるであろう幸せの象徴として。

f:id:skipturnreset:20220330200851j:plain

小林さんちのメイドラゴンS』12話、無限とも思える時間を生きるドラゴンと儚い人間が共にすごす、掛け替えのないこの今の日々の輝きとして。


ただ、その中でも、『86 エイティシックス』7話「忘れないでいてくれますか?」&22話「シン」の一組の挿話ほど花火を多義的なイメージの象徴として描いている例はなかなかにないかとも思う(まず、22話で爆散したモルフォの色鮮やかな火花は7話での革命祭の花火のリフレインだ)。

22話は7話の画、場面、台詞、仕草等をしばしば反復しつつ(後述するようにここぞというところで数回、7話のカットが引用されもする)、シンとレーナ、二人の主人公のキャラクターと足跡の核心を見事に描き出している。そのイメージの鍵に花火がある。

 

作中において花火は時に、
悲惨な境遇の中でのささやかな楽しみで。
残酷な格差の明暗を照らし出すもので。
悲しむことさえなおざりに抱え込んだ心を溶かすもので。
間近に滅びを待つ虚栄の市の光で。
人類が得た生存の僅かな猶予で。
叶うことなどありえないささやかな夢想で。
決して手放しはしない誇りの輝きで。
儚く散り行く命で。
手を伸ばし掴むべき理想として現れているように見える。

 

 

 

 

なお、7話絵コンテ&演出は伊藤智彦さん。22話絵コンテ&演出は石井俊匡監督。最終話の23話絵コンテは伊藤智彦さんと石井俊匡監督の連名(演出は河原龍太さんと石井俊匡監督)とクレジットされている。