アニメ『かげきしょうじょ!!』原作漫画との比較等を交えた感想メモ。

twitterで自分で書いたり、目についたりしたアニメ『かげきしょうじょ!!』の感想・関連情報等を随時まとめていっています。

togetter.com

 

『オッドタクシー』アニメ本編と漫画版、ノベライズ版、『セトウツミ』についてあれこれ。

『オッドタクシー』アニメ本編と漫画版、ノベライズ版、『セトウツミ』についてあれこれ。

togetter.com

twitterに投げた時点で割とRTされてくれていたけど、togetterにまとめてみたらなんか別の層?に知られたりもしたらしい。

どういう経路でやって来ているのだろう。

過去幾度もこういう感想togetter出してきたけど、これまでとおよそ感じが違うコメント欄になったりしている……

 

正直、余談として置いた諸々まで読んでくれるとは期待してないけど、うんざりするほど安易に時系列すら違えて「漫画版に比べればアニメの描写は劣化!」なんて見方を寄せられたりするのはちょっと(とはいえ各々好きにすればいいけど)、間違っても一緒にはされたくないなー、とは思えてしまう。

それと"原作に忠実(これ自体、よく言われるように、簡単な概念では全くないんだけど)なら良く、そうでなければダメ"といったよく聞く話も非常に気に喰わないので、余計なことかとは思うけど先回りしてあれこれ話を置いてみたというのもあったりする。

菊石まれほ『ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒』感想

 

 第27回電撃小説大賞、《大賞》受賞作。
この『ユア・フォルマ電索官エチカと機械仕掛けの相棒』に続きシリーズ第二作が先月刊行されたところだということで、 

 そちらもすぐ読もうと思うのだけれど、この第一巻を読んで非常に面白かったので勢いでとりあえず感想を書いてしまおうと思う。

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 ※公式サイトより

 

「きみはどうして、見れば分かるんだ?」
 エチカが問いかけると、彼は沈んだ眼差しをこちらに向けた。
「過去に、優秀な刑事から指導を受けました。それだけです」
 指導を受けただけでそこまでの観察眼が身につくのなら、世の中のアミクスは全員天才だ。トトキはハロルドを特別だと言っていた、恐らくそこに起因するのだろう。
「まるで現代のシャーロック・ホームズだね」
「『君は見ているが観察していない。その違いは明らかだ』」ハロルドはにこりともせずに引用し、ジープから体を離す。「ヒエダ電索官、読書がお好きですか?」
「最初、きみのことをR・ダニールだと思ったくらいには」
アシモフですね。私は彼のように、宇宙市から来たわけではありませんが」

 菊石 まれほ. ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫) (Kindle の位置No.939-947). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

 

まず人間とロボットの刑事コンビ、バディものとしては『鋼鉄都市』が連想される。
上記のように作中でR・ダニール(・オリヴォー)の名が出されてもいるし、執筆の際に特に意識もしたとのこと。

ただ愛妻家で子ども思いのイライジャ・ベイリに対してエチカは家族関係で大いにトラウマを抱え、ハロルドはR・ダニール・オリヴォーのように人の心に疎いどころかホームズばりの観察力を見せつけ、エチカ曰く女を掌で転がす"ような振る舞いを繰り返したりする。

そんな二人の駆け引きとやりとり、"こころ"の在り方描かれ方が面白い。

dengekionline.com


なお、そこについては個人的にモノの"こころ"やアナログハック的ななにかにおいて『BEATLESS』が好きな人にも、そこそこ相性が良い作品かなとも思う。

 


よく刈り込まれた文体も魅力。
当然に飾り立てようと思えば飾り立てる力が明らかにあるけど、あえてスリムに仕立てていて主人公、エチカの装いや雰囲気に通じるものもあり、作品によく似合う。

導入となる最初の一文もいい。

 

時々突風が吹き抜けるように、こんな大人にはなりたくなかった、と思うことがある。

 菊石 まれほ. ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫) (Kindle の位置No.26-27). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

 

この突風と序章のタイトルでもある「吹雪」、エチカの姉が降らせた雪、そして終章「雪融け」。イメージの提示が鮮やか。
そうなるだろうな、という期待に応え(?)「こんな大人になりたくなかった」の一節は後に反復されもする。


イメージの魅力を感じた場面としては他には例えば、当然に身体と一体化していた情報端末から切り離されての、サンクトペテルブルグの夜の場面。

 

 自動ドアをくぐり、外に出る。
 眠ったままの空から、雪が舞い降りてきていた。
 しずしずと降りしきるそれは、幻覚などではない。刺すような空気が染みて、体が勝手に震え出す。そういえばハロルドの家を出てからずっと、薄手のセーター一枚だ。二の腕をこすりながら、辺りを見回す。道路を挟んだ向かいに、閑散とした円形広場があった。エチカは吸い寄せられるようにして、歩き出す──あれほど騒々しかった町は今や静寂に包まれ、人影は疎らだ。監視ドローンの気配もない。警察のサイレンすら聞こえない。数時間前の賑わいが、まるで夢だったかのように。
 どうして。
 エチカは、ニトロケースを握り締める。
 このことにだけは、気付いて欲しくなかった。
 広場には、塔のようなモニュメントとともに、兵士らの銅像が佇んでいた。塔には、『1941』と『1945』の数字が掲げられている。ユア・フォルマが止まってしまった今、何の記念碑なのかは解析できず、誰も答えを教えてくれない。恐らく、戦争にまつわるものだろう。
 隠しておきたかった、と思った。
 ここにだけは、どうあっても、誰にも踏み込まれたくなかったのに。

 菊石 まれほ. ユア・フォルマ 電索官エチカと機械仕掛けの相棒 (電撃文庫) (Kindle の位置No.2835-2846). 株式会社KADOKAWA. Kindle 版.

 

そこはかつてスターリングラードという名だった都市の「勝利広場」、

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wikipedia「勝利広場 (サンクトペテルブルク)」より

レニングラードの英雄的な防衛に尽くした人たちに捧げる記念碑」。

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「2013年「ロシアに行ってきました」その1」より

まず、サンクトペテルブルグで1941、1945年と示されてさえ「おそらく、戦争にまつわるものだろう」程度にしかわからない、それくらい何も分からなくなってしまった閉塞感や心細さがあるだろう。


そして「ここにだけは、どうあっても、誰にも踏み込まれたくなかった」というエチカの譲れない思いに(当人はそうとわからずとも)通じるものがあったり、それを守るために払ってきた大きな犠牲にもイメージは繋がり得るのかもしれない。


雪、吹雪がもたらす冬の惨禍、一方でそれらの先に苦しみの果ての勝利が続いている。そんな予兆でもあるのかも。

 

豊かにイメージを広げる、非常に優れた舞台選びだと思う。

 

この作品は既にコミカライズも連載が始まり(ヤングエース 2021年7月号より連載開始。作画=如月芳規)きっと映像化もされるだろうところ、その際にはどんな画で描かれるのか気になる場面でもある。

 

 

p159の挿絵は「え?作中のそれ、QRコードなの???」とすこし驚かされるところだけど、そこで何ごとかを試してみるとなるほど、強引にでも仕掛けをねじ込みたかったところなんだなということが分かる。面白い趣向。

 

ミステリとしては犯人、主人公に関わるある人物の正体、犯行の方法等々、割と早い段階に予想がつきやすいかと思えるところも目立つけれども、手がかりの置き方示し方はフェアで好印象、提示された作品世界の設計・世界観との繋げ方もなめらかで美しい。

 

キャラクターの魅力、作中世界の設計・提示、謎の提示と解決及びそれらと提示されたSF的な設定やそれも踏まえた社会との連動、読者を引きつける画・イメージの提示、それらを綴る文体。いずれも優れた佳作だと思う。

 

※7/6追記

2巻読みました。

メインとなる謎とその正体の設定がSF的(?)にもそのロジック的にも面白く、ミステリとして仕込みや意図や行動の交錯の描き方が1巻より巧みになっていると思える。

とても好印象。

みやびあきの『珈琲をしづかに』4巻までの感想※完全に既読者向けの内容のため、ネタバレ注意となります。

※ 完全に既読者向けの内容として4巻最後までの展開に大きく触れる話が続くため、ネタバレ注意となります。

 

みやびあきの『珈琲をしづかに』4巻。
静かに人の気持ちが縁が積み重なりブレンドされていき、居場所がつくられ確認され、「新しい一歩を 一緒に踏み出せる」予感に繋がっていく流れが、繊細で丁寧で美味しい味わいと思う。
それは例えば23話で「波多野コーヒー」を美味しいと、「クリームがほろ苦くて」そして「カフェオレほど…甘くなくて…」と感じたという、そのカフェオレは11話の最後で……という話なのだけれども。


説明を試みるとだいぶ込み入った、そしてだいぶ長い話になってしまうのだけれども。
ともあれ、やっていってみようかと思う。

 

 

まず、4巻で最初に収録されている19話から見ていくと。
19話では両親との過去から壊れること、失うことを恐れる(4話「何かが壊れてしまう瞬間を見るのが苦手で…」)しづかさんが再び喪失を突きつけられそうになり、でもいったんは大丈夫だと安心しつつ。

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4話

でも、子どもだったその時でなく「もう十分大人になった」今は「今まで積み上げてきたものを支えに自分の力で歩く」よう、優しくため息をついて案じられつつ送り出される(ここは例えば8話での「急いで大人になる必要は ないと思いますよ」「子供のうちしか 子供であることを楽しめませんから」とも響き合う)。

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19話

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8話



自分に積み上げてこれたものがあっただろうか?と不安に思いながら店に着くと、前マスターが「人と縁をつなぐことができる大事な場所」だから「縁(ユカリ)」と名付けた(3話)店の扉に置手紙と折紙で、積み上げた縁が、そして縁同士が折り重なるように互いに繋がりもしたそれが「おかえりなさい」「お帰りなさい」と迎え、「ただいま」と返すことになる。

それはしづかさんが積み上げてきた、「ただいま」と言える大事な居場所。

 

21話ではその大事な居場所である店の、その中でもまた更にしづかさんの領域であるカウンターに貴樹が(14話で珈琲占いを教わって以来二度目として)招かれる。
一度目に掛けられた「今だけですよ」は、そうではなくなって。

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14話

また、しづかさんの側では「カウンター越しにしか 人と会話ができないだけなんですけど」(3話)を重ねて自ら踏み越えたということでもあるのかもしれないと思う。

 

続く22話では、しづかさんがそんな大事な居場所である店を「お店の時間をずらしてまで」文化祭の喫茶店に来てくれる約束をしてくれる。

 

そして、23話。
茶店で出されたのは「こいつがメニュー班でいろいろ提案して採用されたやつで クラス内ではこっそりそう呼んでいる」という「波多野コーヒー」。
ブレンドはお店の顔ですし」(6話)というところまでは勿論たどりつけていない、ダルゴナコーヒーだけれど、貴樹くんのせいいっぱいの一杯。

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6話

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23話



それを「美味しい」と、さらに「クリームがほろ苦くて」そして「カフェオレほど…甘くなくて…」と感じたというのがここも積み重ねの上でのものになっていて。

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23話

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23話



ここでカフェオレが引き合いに出されるのは11話の最後、「あの頃…意地を張って飲まなかったカフェオレ…」と呟きつつ飲んだ味は「ちょっと 甘すぎたかも」を受けてのもの。

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11話

11話で亡き夫との思い出を大事にし続けつつ「好きだという気持ちを持てていた時間は 幸せだったと思うの」と語っていったお客さんについて貴樹に「「新しい一歩を 一緒に踏み出せるかたと出会えたそうですよ」と話した後に……「好きだという気持ち」が分からなかった/分からない、持つことができなかった/できない、持つことを恐れもした/恐れるしづかさんが「新しい一歩を」誰とも踏み出せないと思っている中、まだ子供だったあの頃の気持ちを思い出すように、あの頃飲まなかったカフェオレを飲んでみる。

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8話

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8話


でも、それから8年が経った今のしづかさんには「ちょっと、甘すぎたかも」。

それはおそらく8話で語った「私もそういう時期がありました」「苦い珈琲を美味しいと思っていないのにブラックで飲んで」「これを飲めるから大丈夫 私は大人で 子供じゃないって」との言葉の通り、今はもう、子供じゃないということ。

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8話


もう子供ではない、でも大人になりきれてもいない、そんな今のしづかさんに23話で「波多野コーヒー」は美味しいと感じられたんだ、という。

更にその上で、文化祭の喫茶店で飾られた珈琲の画と題名がなぜか「どうしてか心に引っかかる感じ」がして辿っていくと、しづかさんが出会い、ずっと守ってきているあの日のブレンドのイメージに行き着くことに。

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23話

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23話

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23話

その「泣きたい気持ちと 綺麗な光」は17話で描かれていたもの。
親を亡くし夜明け前に街をさまよい歩く中、前マスターに初めて会い、そのブレンド珈琲を初めて飲んで、いつの間にか飲み干していて。
朝焼けを見て「綺麗…」と思う。
そうしながら「一人になりたくない… 一人は嫌 誰か… 誰かを好きになれる人になりたい ただその相手が」と感じていた。

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17話


これに続く言葉が17話では健吾の「僕じゃなかっただけなんだと思う」で、それが、ようやく、やっと23話では「今は違うブレンドも淹れてみたい そんなふうに思う日がくるなんて…」で、そしてそう独白しつつ6話での貴樹の言葉と表情を思い出しつつ、今の彼をみやってのこの表情であるわけで。

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23話

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6話

読んでいる方としてはもうこれは、しづかさんが「新しい一歩を 一緒に踏み出せるかたと出会えた」というのを心の深いところでは、せめてその予兆くらいは感じ取ったのかと思えてくるのだけど……。
24話に入って、そこでこれほどにもまた積み重ねてきた縁に重ねて背中を押されないと意識的にはそこに思い至らないんだな、というのが本当にもう、実にもどかしくも、尊い話だと思う。
そのゆっくりゆっくりと時間と手間をかけての歩みがしづかさんにも、8歳離れたしづかさんと貴樹にも必要なのだろうなと思わされる。

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3話

 

なお、こうして繊細に丁寧に「かわりゆく」人の心を、人と人との関係を描く魅力は前作『なでしこドレミソラ』にも溢れていたもので。

twitter.com


『珈琲をしづかに』でもまた新たにその味わいに出会え、とても嬉しく思う。

武田綾乃『飛び立つ君の背を見上げる』感想

武田綾乃『飛び立つ君の背を見上げる』感想。

 

プロローグ、エピローグの間で

第一話「傘木希美はツキがない。」
第二話「鎧塚みぞれは視野が狭い。」
第三話「吉川優子は天邪鬼。」

と同学年3人に向き合い、評し、自分の裡を覗く語り手の中川夏紀を描く。


まず各話の最後にその話、関係を強烈に一言でまとめて爆弾を落としていく構成(傑作『その日、朱音は空を飛んだ』を思わせもする)が素晴らしい。

複雑な人物造形とその心情を描きつつ、端的にまとめて提示もできるキレの良さが目を惹く。


描かれる四人とも、また回想で僅かに夏紀と語るほかは殆ど直接姿を現さないのに強烈な存在感と影響力を見せつける田中あすかも魅力的な中で、やはり個人的には傘木希美の姿が一際印象に残る。
傘木希美は夏紀同様に慢性的なくらいに自己嫌悪を抱えながら、(例外的に黄前久美子に露悪的に覗かせたことはあっても)他人にも、そして誰より自分自身に自分を嫌う自分であることを許さない、そうである自分であろうと努めに努め続けるキャラクターなのかと思う(※1)

 


以下、各話について。

 

第一話「傘木希美はツキがない。」ではみぞれ贔屓の優子に対して希美の側に心が寄る夏紀が、希美がそうあろうとする姿を尊重してあえて踏み込み過ぎずに接し、語っていく傘木希美の人物像に改めて惹かれる。
一年の時の出来事から夏紀がずっと希美に対して抱いている罪悪感を、でも決して誰に対しても、特に希美には明かさない。

それを罪であるなどと希美は認めない。

第三話でも改めて書かれる通り

「希美は夏紀に自分の荷物を預けたりはしないのだ」

(p220)

 みぞれに対して退部の際に誘わなかったことも、幾度他人に問われても決して悪いことだとは認めず、やはり誰より自分自身に対してそう振る舞おうとする。

傘木希美にとってそこは、自分に対しても他人に対しても"そうなのだ"というより"そうあるべきなのだ"という話なのだろう。

荷物を預け合う優子・夏紀のコンビとは好対照だなとも思う。

 


第二話「鎧塚みぞれは視野が狭い。」では希美が久美子に対してだから普段決してみせないように努めに努めている自己嫌悪を露悪的にであるのせよ語れたように(※1)、鎧塚みぞれは希美本人は勿論、自分贔屓の吉川優子にも語れない自分の自分自身への思い、そして傘木希美に抱く思いを遊園地の観覧車の中で夏紀に語る。語ることができる。その核心ともいえる、

「それって、恋とは何が違うん?」
(中略)
「そうだったらよかったのに」
(p184)

のやりとりからは改めて『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章 後編』で新山聡美から贈られた言葉、

「運命の相手が恋愛感情を向ける相手とは限らないでしょう? 人生において特別な存在って、きっと一種類に絞らなくていいと思うの。家族でも、友達でも、もちろん恋人でも構わない。大切だって思う人に固執してしまうのは、きっと当たり前のことよ」
「……当たり前」
「そう。だから鎧塚さんがリズに対して抱いた感想は、全然変じゃないの(後略)」
(p231)

はみぞれの芯を打ったのだなと思わされる。

 

そして観覧車でのやりとりの最後にかつての「大好きのハグ」に続く、夏紀が教える「四人は友達」のポーズ。

第三話でそのポーズが再演される一幕が鎧塚みぞれの視野が少しずつだけどでも確かに広がっていることを示していく。

希美だけが動かせたみぞれの世界を広げる役割は『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章 後編』や『響け! ユーフォニアム北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』「十三 飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)」で幾度も描かれたように、主にみぞれ贔屓の吉川優子が(黄前久美子や、吹奏楽部のみぞれを慕う後輩たちも関わりつつ)担う描写が多かったのだけれど。

みぞれにとって殊更に大事な「友達」の枠を四人に広げる背中を大きく押したのは、みぞれに苦手意識を持っていた中川夏紀だったという関係性の描き方と積み上げ方が見事で、作者の強みが遺憾なく発揮されているところだなと思う。

 

第三話「吉川優子は天邪鬼。」。なかよし川は続くよ、これからも。
なぜ、吉川優子が部長なら副部長は中川夏紀でなければいけなかったか、という話を突き詰め広げて解説してくれている一篇。

『響け! ユーフォニアム北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』「十三 飛び立つ君の背を見上げる(D.C.)」ではまだ二人について語り足りなかったので改めて……という風情。優子視点の(D.C.)でもでてきた、卒業に際して優子から夏紀へ送った手紙がこちらでもまた出てきたりもする。

 

最後にエピローグ。

締めくくりに、中川夏紀に彼女自身に対してこの言葉を言わせたかったんだな、と。

なんとも美しい幕引きだと思う。

 

 

※1

傘木希美は他者に向かって自己嫌悪を覗かせてしまうことを、それよりも更に自分自身に"自己嫌悪する自分であること"を許さずにあろうと痛々しいくらいに努めているけれど。

自ら語らない分、『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章』で情景描写に託して希美の自己嫌悪が随所に幾度もえげつなく描かれていたのが凄まじいと思う。

「冷えた視線を向ける自分自身に、希美はニッと笑いかける。口端が引っ張られ、磨いたばかりの白い歯がのぞく。楽しそうな顔だと思った。爽やかな朝だった」

(『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編』p9)

「平静を装う声が、ところどころかすれている。眉尻を垂らし、希美は白い歯を見せて口を開いた。それが他者の目には笑顔に見えると、そう彼女は思い込んでいるのだ」

(『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章 後編』p246)

そしてやや長すぎるので全引用はしないけれど『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章 後編』p85-89の希美とみぞれの雑巾でのガラス窓掃除の一連の場面。ガラス、背伸びと示した上での、雑巾の黒い汚れの示し方。締めの一段落が特にきつい。

 そっかー、と希美が明るく相槌を打つ。耳の前に流れるひと房の黒髪、そこからのぞく希美の頬が不自然に引きつったのが見えた。明るい笑顔を維持したまま、希美が片手に雑巾を握り締める。綺麗に折り畳まれていたはずの雑巾がぐちゃりと乱れ、内側に隠していたはずの汚れをあらわにしていた。

’(『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章 後編』p89)

そしてそういった諸々を経た後の傘木希美が『響け! ユーフォニアム北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話』「十 真昼のイルミネーション」に至って、

「希美は、自分のなかにある醜い部分から目を逸らさない人でありたい」

(p136)

 と思えているのは尊くも嬉しい一節だと思う。

 

※2

なぜ希美が久美子に話せたのかについて、久美子はその主観視点の地の文で

「あーあ、久美子ちゃんにやったら、こんなに本音でしゃべれるのになぁ」

 それはきっと、希美が久美子のことを脅威と見做していないからだ

(『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部波乱の第二楽章 後編』p251)

 と見ているのだけど、どちらかというとこの推測は希美よりも黄前久美子というキャラクターの心の在り方を描いているようにも思う。

 

話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選

 

今年から「aninado」さんで集計されることになった企画、「話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選」への参加記事です。
この企画には「新米小僧の見習日記」というサイトさんが取りまとめられていた間に過去、2014年2017年と二回参加させて頂いています。

 

「話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選」ルール

・2020年1月1日~12月31日までに放送されたTVアニメ(再放送を除く)から選定。

・1作品につき上限1話。

・順位は付けない。

 

  1. ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第11話「みんなの夢、私の夢」
  2. かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』第9話「そして石上優は目を閉じた2)/かぐや様は触りたい/かぐや様は断らない」
  3. 『映像研には手を出すな!』第12話「芝浜UFO大戦!」
  4. 『呪術廻戦』第13話「また明日」
  5. Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』Episode 18「原初の星、見上げる空」
  6. 『体操ザムライ』第11話「体操ザムライ」
  7. 『アサルトリリィ BOUQUET』第5話「ヒスイカズラ
  8. ドロヘドロ』第7話「オールスター☆夢の球宴
  9. 『ID : INVADED』FILE:10「INSIDE-OUTED II」
  10. 『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』第二話「防御特化とお友達。」

 

1:『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』第11話「みんなの夢、私の夢」

監督:河村智之

アニメーション制作:サンライズ

脚本: 平林佐和子

絵コンテ:伊礼えり

演出:伊礼えり

作画監督:市原圭子、伊礼えり、尾尻進矢、北島勇樹、木村文香、鐘文山、舘崎大、冨吉幸希、山内尚樹

総作画監督:横田拓己、冨岡寛、渡邊敬介

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劇的な話の展開と共に、終始大胆な構図やカメラワークが同じくらい、放送直後から話題になっていた11話。
まず上原歩夢さんが主役の回であり、終盤の高咲侑さんの部屋での諸々、例えばこの一幕は、

 

振り向きと画面の揺れと表情と叫ぶ声は激情を、揺れずまっすぐ受け止めるカメラワークと表情と落ち着いた確かな声が受け止めの見事さを描き出す。

画と動きの力がそのままキャラクターと心理と関係の描写の鮮烈さに繋がっている、まさしくドラマチックな映像でした。

 ここの(ピアノでなくキーボードですが)の顔を隠す手の場面も、各所で絶賛されていた一カット。全編に散りばめられた背景や小物(交通標識等)を駆使しての暗喩の数々なども細かく見ていくと面白いところ。

 

そして、初見から好きでたまらなかったのが、かすみんBOX登場から、それが変貌してしまった姿で持ち去られるまでの一連の場面。中でもここです。

 

(バトルや)ダンス、ライブ描写等でなく日常の会話場面でこうも気持ちよく立体的な空間の中で構図が繋がっていく様は珍しく、とても嬉しいもので。

そして「満を持して空回り」からの激しい落ち込み(やいら立ち)、抗議や甘え、気を取り直しての復活といったリアクションや周囲との掛け合いこそは「かわいい」の化身たる中須かすみのかわいさを最大限に引き出すものであり(そうなんです)、特に添付動画最後の侑さんの体の上で姿勢を直す場面の表情、支える手の動き、服の皺や姿勢が訴える確かな質感が素晴らしい。

ただ巧い映像というだけでなく、キャラクター描写としてもハマった名場面と思えます。

 

なお、余談ですが中須かすみさん、誰かに頭をなでられている姿が世界一似合う存在ではないかと。

 

ここで、絵コンテ・演出の伊礼えりさんはアニメ@wikiさんの情報を参照させて頂くと、おそらくTVアニメで初絵コンテ初演出、鮮烈なデビューであるとのこと。

もちろん、これまでも優れたアニメーターとして注目もされているようで例えばtwitterでも「Key Animation: Eri Irei」と検索するといろいろと良いものが見つかったりも。

原画の一人としてクレジットされている虹ヶ咲OPでも(少なくとも)璃奈さん、彼方さんのこのカットを担当されているとのこと(ご本人twitter発言より)。

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今後のますますの活躍に注目せずにはいられない方だと思います。

 

 

2:『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』第9話「そして石上優は目を閉じた2)/かぐや様は触りたい/かぐや様は断らない」
監督:畠山守
アニメーション制作:A-1 Pictures
脚本:中西やすひろ
絵コンテ:畠山守
演出:愛敬亮太
作画監督:川﨑玲奈、山崎浩
総作画監督:山口仁七、矢向宏志
ミコ妄想パート作画:中山直哉

 

俗にいう「原作に忠実」とは、(もし仮にそんなことが出来得るとして)「できるだけ何も変えずにそのまま媒体を移す」ことでなく、実は「印象を再現する」ことではないかといわれることがあります。
かぐや様~全編、中でも例えば2期9話を観るならば、その模範……というにはだいぶイレギュラーですが、ある意味で百点満点以上の解答の一つを目にすることが出来るのでは、と。

 

原作に無いTVドラマやらミュージックビデオやらTVゲームやらなにやらのオマージュを多分に含んだ映像演出を大胆かつ大量に注ぎ込み、台詞にもアドリブも含めた追加を織り交ぜていく。
しかし、原作の大筋に沿いつつ繰り出される独自のものとなって離れていくのでなく、キャラクターの心理や関係性、掛け合いの愉しさといった原作の魅力、その印象が再現されているのが感じられるかと。

魅力的過ぎる仕事を続けざまに繰り出している中山直哉さん作画のミコ妄想パート『スクールウォーズ』のパロディ、異様にぬるぬる動くマドンナ「VOGUE」パロディ映像、突然始まる格闘ゲーム……これだけ盛大にぶちこんで、立ち上がってくるのが「原作の印象をちゃんと再現した」愉しさであるのが不思議なところ。
また、各話(この2期9話も)の各部分の担当スタッフやその美点・特徴、起用の意図、推したい見所等々を菊池雄一郎プロデューサーがまとめ、公開してくれているのもありがたいところです。
※そのまとめでも触れられている通り、かぐや様2期は11話が明らかに非常に力の入った回であるわけですが、それでも個人的に9話が一推しです。

 

なお、一応念のため書いておくと「原作の印象の再現」が、もっといえば「原作に忠実」であることが原作ものの「(唯一の)正解」などであるわけがなく。


例えば『宝石の国』はあえて原作と異なる魅力を追究。繊細な原作絵を革新的なCGに、多くを語らず秘して読み手に察することを求める原作と激しく華やかな動きで雄弁に語っていくアニメ版、ストーリーもアニメ版はフォスフォフィライトがシンシャ、アンタークチサイトと接して成長、変貌していく様に明確にフォーカスしていくことで抜きんでた傑作となっていたわけで。

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多様で豊かな面白さを、そしてそれぞれの作品ごとにその作品ならではの良さを楽しんでいくことって当たり前だけど大事ですね、と強く思えます。

 


3:『映像研には手を出すな!』第12話「芝浜UFO大戦!」
監督:湯浅政明
アニメーション制作:サイエンスSARU
脚本:木戸雄一郎
絵コンテ:伊東伸高
演出:井上圭介
作画監督小林直樹
総作画監督浅野直之

 

新作アニメ「芝浜UFO大戦」の発表を前に土壇場で迫られる、結末を含めた作品の大きな転換、変更。
そこでどういうところを変えたいと思い、変えようとしたかまでは説明を入れた上で、「どう変えたか」の核心は制作された作中アニメで描き、それを観た作中の視聴者たちの反応もやはり説明でなく画で示す。

 

全てを映像で語るこういった見せ方は普通、クールでカッコいい代わりに、少なからぬ受け手に「いや、これどういうことかわからないよ」という反応もさせてしまうもの。
しかし、この作品に限っては、この最終話までの間に作品を通じて視聴者に対し、作品の設定は映像へどう反映されるか。作り手の個人的な観察や経験、こだわりはどう映像の中の動きに活かされるか。劇伴や効果音はどのような意図でどのような効果が発揮され、用いられるか……そういった実践を伴う説明を積み重ねられ、それが読み解きとまでは言わないまでも受け止め方をレッスンしてくれている形になっていて。

 

たまらなくカッコいい上で、(やや語弊があるけど)独善的ではないというか、尖っているけど親切ですらあって間口を広く誘い込んだ上で自然にけっこう遠いところまで連れていってくれる。
そこに、この作品ならではの輝かしい美点(の一つ)があると思えます。

 


4:『呪術廻戦』第13話「また明日」
監督:朴性厚
アニメーション制作:MAPPA
脚本:瀬古浩司
絵コンテ:田中宏紀
演出:田中宏紀
作画監督田中宏紀、伊藤進也、北村晋哉
総作画監督西位輝実

 

画が、それはもう、すごいです。

この話数が配信されるとすぐ、アニメのすごい人(この10選で次に紹介する回の絵コンテ・演出の人)が「作品全体を牽引出来る程の作画の力」「今回の田中さんの仕事は絵の力で作品に1つの解を与えてる」云々と絶賛のtweetを出されていて。
きっと、まったくもっておっしゃる通りなのだろうなあ、と。

ちなみに13話が来るまではずっとこの10選には、同作品の1話をほぼ確定で入れるつもりだったのですが、


これはもう仕方ないですね。

 


5:『Fate/Grand Order -絶対魔獣戦線バビロニア-』Episode 18「原初の星、見上げる空」
監督:赤井俊文
アニメーション制作:CloverWorks
脚本:桜井光
絵コンテ:温泉中也
演出:温泉中也
作画監督:Moaang、川上大志、温泉中也
アクション作画監督:温泉中也
総作画監督高瀬智章

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18話Bパートのこのカットの前後あたりから、キャラクターの目の力から顔つき、その輪郭からポーズから動きからなにからに生気がみなぎり。
殺意に満ちた奇襲は牛若丸という英雄・英霊の一側面を動きと行動で語り、藤丸立香は突然、迅速で優れた観察と判断に基づいて果敢に指示、決断、命令する見事な指揮官となって躍動、そうかと思えば牛若丸の散り際の静かな哀感も華麗で……この話数は他と"違う"というのがこれくらいわかりやすいのも、大いに愉しいかと思います。

 


6:『体操ザムライ』第11話「体操ザムライ」
監督:清水久敏
アニメーション制作:MAPPA
脚本:村越繁
絵コンテ:宇田鋼之介
演出:清水久敏、宇田鋼之介、大槻一恵、久保田雄大下司泰弘、吉村愛
作画監督吉田正幸、浅尾宏成、本多みゆき、藤田亜耶乃、斎藤美香、濱田悠示、青木里枝、戸沢東、柴田志朗、松岡秀明、山門郁夫、桑原幹根、村長由紀、崔ふみひで、岡崎洋美、本田敬一、冨永拓生、野崎真一、大津直、Studio BUS
総作画監督:本田敬一、崔ふみひで、佐々木貴宏

 

最終話、これまでの集大成としてサムライの超かっこいい体操、レオの美しいバレエの跳躍、そして自らの道を見出し歩み始めた小さな女優の凛々しさに溢れた名演が繰り出される。


丁寧で堅実な積み重ねの美しさを誇る、素敵な作品の素敵な最終回でした。

 


7:『アサルトリリィ BOUQUET』第5話「ヒスイカズラ
監督:佐伯昭志
アニメーション制作:シャフト
脚本:佐伯昭志
絵コンテ:長原圭太
演出:長原圭太
作画監督:高野晃久、佐藤隼也、秋葉徹
総作画監督:崎本さゆり、常盤健太郎

問題発生→葛藤→助言→決断→実行→助力→解消(→新たな展開)の各段階のステップが毎度ちゃんと踏まれつつ、各過程が異様に速やかに進む、だいぶ異形とは思えつつも爽快な愉しさに満ちた作品。
そんな中で5話は割と例外的にゆったりと、不器用で心を開いて人に接するのが苦手な少女が散々に悩み迷走を重ねつつ、大事な妹分に誕生日プレゼントを渡す様子を描く微笑ましい話数……であったものが、最後に一転して全てが不穏なものに転じる。
一粒で二度美味しい、そんな愉快な5話が好きです。

あとこの作品は毎回毎回、アバンの掴みの良さ(とEDへの入りの情感)が出色であり続けていて、観始めるのも観終えるのも毎週楽しみでたまりませんでした。

 


8:『ドロヘドロ』第7話「オールスター☆夢の球宴
監督:林祐一郎
アニメーション制作:MAPPA
脚本:瀬古浩司
絵コンテ:林祐一郎
演出:小松寛子
作画監督:小松寛子、吉田駒未、山崎杏理

無惨と爽快が同居するドロヘドロらしい、愉しく危険な野球回。
仮にも人を助ける医療者の団体同士(ホール中央病院VS魔法被害者病棟)の試合が、球場には火あぶりにされた魔法使いの死体が並び、塁間には底なし沼が口を覗かせ、魔法使いの死体を接ぎ合わせた動く死体が使役され、試合中に毒が盛られ、殺意を込めたビーンボールが唸りを上げる。
見所満載の回でした。

※上記tweet、話数間違ってしまってますが……

 

ふと気になって今回、各作品の制作会社も付記しているのですが、特に意識せず選んだ上でMAPPAが3作品、他は全てバラけるという結果に。
それに、もしあと一話選ぶならば、前半中盤の格闘アクションと軽快な展開が鮮やかだった『THE GOD OF HIGH SCHOOLゴッド・オブ・ハイスクール』より#08「close/friend」を入れて

 MAPPAだけで4作品になっていたところでした。

 

チェンソーマン』アニメ化にあたっての原作者コメント

ドロヘドロと呪術廻戦のパクりみたいなチェンソーマンをドロヘドロと呪術廻戦のアニメ制作会社がやってくれるんですか!? そりゃもう何も言う事ないじゃないですか どうかよろしくお願いします!!」

からも制作会社としての勢いが感じられ(?)、なんともすごいですね。

 


9:『ID : INVADED』FILE:10「INSIDE-OUTED II」
監督:あおきえい
アニメーション制作:NAZ
脚本:舞城王太郎
絵コンテ:あおきえい
演出:久保田雄大
作画監督:碇谷敦、浅利歩惟、豆塚あす香
総作画監督:碇谷敦

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「椋…今そこで君らと一緒にいられなくて本当に悔しいよ」

 

「俺が……どこかに行くのか?
 …………違うだろ……君らがどこかに行ってしまったんだ」

津田健次郎さん演じる鳴瓢秋人。2020年最高の泣きの演技だったかと思います。

 

10:『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』第二話「防御特化とお友達。」
監督:大沼心、湊未來
アニメーション制作:SILVER LINK.
脚本:志茂文彦
絵コンテ:細田直人
演出:丸山由太
作画監督:古谷梨絵、船越麻友美、寿夢龍
総作画監督:平田和也、山吉一幸

 

2020年。
1月からは『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』。
4月からは『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』。
7月からは『魔王学院の不適合者 ~史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う~』。
3クールに渡り(9月からの『キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦』も、ではあるんですが)、軽快で派手に天然に蹂躙する、ノンストレスな展開と華やかなアクション(乙女ゲーム~はちょっと外れますが……)が魅力のエンターテイメントを毎週提供し続けてくれた、SILVER LINK.制作アニメの先陣を切ったこの作品。
そこで最初に大きな好印象を抱かされたのが、防振り第2話でした。

最大の見せ場は終盤の水中バトルでそれも大変良かったのですが、それ以上に惹かれたのは日常描写、特にサリー/白峯理沙さん関連。

 

 上に例示したような高い頻度で挟まれる細かな仕草の数々。のっぺりと棒立ちにはしない人物のポーズと構図、どの場面でも丁寧に書き込み続ける服の皺、そういった地味で小さな工夫の積み重ねでどれだけキャラクターの魅力を描けるかという縛りプレイのようだな、と。
振り返れば、ここで抱いた好感と信頼が、その後の防振りの話数は勿論、はめふら、魔王学院~と積極的に楽しみ続けていく上でずっと大いに効いてくれていたようにも思えます。


この第二話の絵コンテ:細田直人さんは今年には『禍つヴァールハイト 』監督・シリーズ構成もされていて。
そちらも二人の主人公が状況に呑まれ転がされ、そしてなんとか立ち上がり歩みだしていく様から目を離せず、最初から最後まで楽しんだ作品でした。

 

 

2020TVアニメOP/ED10選

※楽曲だけでなく映像込みで。

1:「廻廻奇譚」/『呪術廻戦』OP
2:「NEO SKY, NEO MAP!」/『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』ED
3:「虹色Passions!」/『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』OP
4:「Edel Lilie」/『アサルトリリィ BOUQUET』ED
5:「DADDY! DADDY! DO! feat. 鈴木愛理」/『かぐや様は告らせたい?~天才たちの恋愛頭脳戦~』OP
6:「私たちのSTARTRAIL」『ラピスリライツ(Lapis Re:LiGHTs)』OP
7:「Lost Princess」/『プリンセスコネクトRe;Dive』OP
8:「快眠!安眠!スヤリスト生活」/『魔王城でおやすみ』OP
9:「LOST IN PARADISE feat. AKLO」/『呪術廻戦』ED
10:「Contradiction feat. Tyler Carter」/『THE GOD OF HIGH SCHOOL ゴッド・オブ・ハイスクール』OP

 

雑感

 

2020年、アニメを観る上で一番の変化は視聴環境でした。

2019年の12月頃からOculus Goを使い始め、5月頃からはアニメはほぼ全てTV視聴から配信(それぞれ専用アプリが使えるAmazon Prime Video及びdアニメストアfor Prime Video、NetflixYoutubeに加え、ブラウザ(firefox)閲覧でAbemaTV等)をヘッドセット(10月からはOculus Quest2)で観るように変わりました。

あまりの快適さに慣れきってしまい、もうそれ以前には戻れそうにありません。

まず没入感がおよそ異なり、単純に愉しい。寝転びながら視聴できて、とても楽。

それによって、受ける印象や観方も大きく変わったと思えます。

 

 

 

 

ヘッドセットでの視聴に移行した結果、画や動きにも、そしてそれ以上に声の演技や劇伴の誘導する情緒に浸り、流される傾向が強まったように思います。

そして、それが概ねとても気持ちいい。

 

以前に比べアニメを観て、あの場面の演出がどうだとか、過去話のあの場面と繋がって云々とかそういったグダグダした話

togetter.com

を考える頻度も程度も激減した観もあるのですが、そこら辺もやりたければ改めてTVなりPCなりで観れば良いのであって、この愉しさには到底代え難いなと思えます。

ヘッドセット視聴、お勧めです。

 

 

2020年はこの10選で挙げた以外にも面白いアニメが多くありました。

幾つか挙げるなら、

 

宮本侑芽さんの声を得て異様な実在感?を押し出してくる野中晴さんの声をもっとずっと聴き続けていたかった『イエスタデイをうたって』。

・圧巻の構成の良さを見せてくれた『ガンダムビルドダイバーズRe:RISE』。

 ・魅力的な色彩を湛えた画面とキャルさんの魅力が目を惹いた『プリンセスコネクトRe;Dive』。

・華やかな1話の後は、なんというか、ああ、かわいくて和めるトンチキ作品かな……とのんびり眺めていたら、8話を境に「あれ?これ、実はけっこう筋立てもキャラクターも見せ方も、かなりしっかりした作品では……?」と印象が様変わりし驚きだった『ラピスリライツ(Lapis Re:LiGHTs)』。

 ・一人称視点で延々美少女との甘すぎる生活を見せ続けられる話をヘッドセットで視聴するのは危険だ、特に全話が美麗で雄弁な一人原画(谷拓也さん)で綴られる3rdシーズンは恐ろしいと教えてくれた『One Room』。

・どの話数でもきれいな画面、7話8話、そして11話とトンチキでコミカルさに大きく振った話数の愉しさが目を惹いた『魔女の旅々』。

 

 他にも『魔王学院の不適合者』『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』『波よ聞いてくれ』『安達としまむら』『恋する小惑星』『いわかける!』『NOBLESSE -ノブレス-』、極めて魅力的な幕開けだった『デカダンス』1話、等々、振り返ればそれぞれ、ああ、面白かったなーと。

来年も多くの素晴らしい作品との出会いを期待したいと思います。

 

 

最後にひとつ。

ああ、中須かすみはなんてかわいいんだろう。

※これ↑スクスタでは初期からつけてる髪飾りの設定回収ともなっている演出だったとのことで、すごくいいですね。

 

かすみんの「かわいい」がこの世界を救うことを願って。

よいお年を。