神林長平『鏡像の敵』〜初期作品の掘り起こしの事情はわからないでもないけれど……。

初期の傑作集ということで、1987〜1989年頃発表の作品を集めた短篇集。
……って、あれ?神林長平は1979年デビューなんだけど、この時期でも「神林長平初期傑作集」(裏表紙より)って言っていいのか??


で、内容に関しては……なんだかどれもこれも、これまでに刊行された神林作品で読んだことがあるような話(というか、調べてみると、本当に幾つかは同じハヤカワ文庫で読んだことがあったのか……)。
更にいえば、たとえそれを考慮しなかったとしたところで、あまり良い作品といえるものがない。
桜坂洋という人の解説も、正直いってかなり引く。


自分にとって神林長平という作家は、『プリズム』は国内SFのオールタイムベスト1位、『戦闘妖精・雪風』も3位か4位(昨日読んだ飛浩隆『象られた力』が間に入って一つランクが落ちた)というくらい好きな作家だが、ここ数年に文庫で出された作品は、『親切がいっぱい』『天国にそっくりな星』『麦撃機の飛ぶ空』『永久帰還装置』『蒼いくちづけ』『宇宙探査機 迷惑一番』など、どれもこれも-----他の作家が出すならともかく------神林作品としては随分魅力に欠けるものが続いてしまっている。
そういった中で今頃になって初期作品がまとめて本にされたわけというのは、なんとなく分からないでもないが、随分寂しいことだと思う。


……『敵は海賊』シリーズの続篇、早く出してくれないかなぁ。